第15話 人生という道に迷子
「生首も血の匂いもない?」
ベルンダがくんくんと嗅ぐ。
嫌味か。仕留め損なったよ!
遠回しに刺すベルンダと合流した。
人質の怪我は修道院で治療をする。
シスター達には頭があがらない話だ。
「修道院から騎士館に連絡を走らせてくれたって。騎士達が検分にくるかもしれない」
俺は騎士に状況説明する必要がある。
だがベルンダまで残ることは無いな。
「ベルンダ、先に帰って休んでろ。想像より早くことが済んだから、寝て体力を回復してろよな。今晩は終わりのようだ」
「トラビスが心配。魔人を取り逃した」
「騎士様がいるさ。それより俺が1番頼れるお前を消耗したくない。備えて、回復しててくれよ。女神様は都合の良いときだけ現れるだろ?毎日たっぷり寝ているから美人なんだ」
俺はウインクのサービスを飛ばす。
「ぐはぁッ!」
……ベルンダてノリが良いよな。
こういう友人は大切にすべき。
「でも今晩はトラビスの宿に泊まる。心配なのはほんと。あの魔人を見たトラビスを消しにくる可能性がある。私がいれば魔人から確実にトラビスを守れる」
「ありがたい。美女に見守られるなんて俺はなんて良い男なんだろう」
ちなみに俺は自警団の独身寮──妻子持ちでないなら自警団員に部屋を提供してもらえるのだ。宿代の為に自警団に入る者はいるし、俺はその口。無料だ──ベルンダを呼ぶわけにはいかにので安宿をとった。
◆
「2日連続の昼夜連続労働は辛いが」
魔人の尻尾を見た翌晩も捜索することになった。
夜警隊の見廻りを拒否する人間も、増えたしな。
魔人の噂が本物だったとわかってから、市民の協力が極端に下がっている。まあよくあること。他人の為に渋々ボランティアしているだけだ、そんなので死にたくはない。
「眠かったら宿で寝てろ。勇者で大変だろ、ベルンダは。夜まで働いてると倒れるぞ」
「貴方を放っておけるわけないでしょ」
ベルンダが小さく欠伸する。
人間は夜の生き物じゃない。
魔人も昼間に現れればよいのに。
「魔人と言えど脳味噌が足りていない獣だ。昨日失敗したから、今日は隠れよう、しばらくは静かにしよう、なんて殊勝な心掛けの魔人は少ない」
「トラビスは今晩も犠牲者が出ると予想をしているわけだね。今まで狡猾だった魔人とは違う印象になるけど?」
「魔人と直接会った印象だ。頭の良い指令型じゃない、精々兵隊型、その他多勢の数合わせと同じだ。器用なことができる魔人じゃない。激情家、刹那主義、目が合えば気まぐれに人間を殺す邪悪で典型的な魔人。だからこそ奇妙だ」
何故、今日まで潜伏できた?
偶然であったならば、よし。
魔人化で荒れた王都の間隙を狙われた。
それだけであれば時間が解決するだろ。
「地味な聞き込みといこう。夜の住人には夜の住人だ。魔人のまま逃げ出した間抜けだから、目撃情報は簡単に集まる。昼夜問わず近辺を騎士が閉鎖していて身動きはできん。潜伏場所を特定して、包囲を絞る」
「……地味……」
「そういうもの」
「もう少し手がかりは?」
「……魔人が現れた時間だが、酒を飲んで娼館に行くという典型から外れてる。あぁ、つまり、市場の店が閉まる時間と会わないんだ」
「働いてないんじゃない?」
「その割に身なりは良かった。追い剥ぎしたにしても、高級な人間には高級な護衛と、高級な情報網が付いてる。自警団に確認したが、主に襲われているのはやはり少女だけだ。魔人は紳士だったろ?」
「……貴族、とか」
「それはわからないが、貴族が魔人になったと仮定すると、昼間の潜伏先が謎になる。地下バーに現れた男の魔人、普通は余所者はまず断られる。悪い子供を安全な場所に溜める場所だからな。誘拐されたり、変なのが混じると困るからだ」
「でもあの男はあっさり通されていた」
「住人なんだ。平民区の。ただし貴族並みの資産がある。貧乏人の労働者しない区画の住人だ。金持ちてのはどのくらいいると思う?」
「……わからないわ」
「俺も。だから探しに行こうか」
ピジョン&イージー以外にも地下バーは存在する。魔人が派手に逃走したから目撃情報も多い。頭が足ていない魔人だ。痛い目に遭っていないなら何度も間違える、かもしれない。ミスをしてくれれば御の字。
理想は、狩りを邪魔した俺を狙うこと。それもベルンダがいる状況で襲ってくれれば、俺はベルンダを支援しつつ、彼女が魔人を確実に殺してくれる。
人類に害をなす魔人は殺すべきだ。
「トラビスだ!」
不審者の目撃情報を徘徊者から吐かせたあと、地下バーの1つであるセントドラマニンに寄ったときだ。セントドラマニンから知り合いが出てきた。
パメラ・ピュリファイアだ。




