星空の町―3―
すいません、とても遅くなりました。
一応新キャラ登場です。
深夜。
星空の町に入る人影が一つ。
彼の手にある銃が月光で鈍い光を放っていた。
「僕が助ける……」
彼は強い意志を込め、銃の引き金に指をかける。
「シフト」
引き金を引く。
すると前面に魔法陣が展開された。
「このまま前方に3キロ……」
探知系の魔術で目標を見つける。
「っ……」
人影は目標に向かって走り出す。
強く銃を握りしめ、例の『殺人犯』に向かって。
※※※
優樹とアリアはホテルの一室に戻っていた。
部屋に備え付けてあるパソコンを起動させる。
殺人犯との一戦の後、相手の所持していた西洋剣が気になったためだ。
騎士団のエンブレムが付いていた、ということは騎士団の剣で間違いないということ。
騎士団は国家直属の自警団で、基本的には『戦闘に特化した警察』と同義。
そんな組織の剣を、何故殺人犯は所持し、使っていたのか。
ネットで調べるとすぐに答えは出た。
「なるほどね」
「これって……」
やっぱり、というアリア。
それもそのはず。
騎士団を調べるとすぐに先刻の殺人犯の顔が出てきたのだ。
『リアルド・サード』、騎士団長。
「どこかで見たことあると思ったら……」
「騎士団の1人が殺人犯だってのか?」
「……」
結果だけ見ると、騎士団を束ねる彼が殺人犯ということになる。
「何で自警団の長が人殺しなんか……」
お前らは助ける側だろうが、と優樹は続ける。
「なんか怪しい……」
「まぁな。さっきの戦闘で分かったけど、人の意識みたいなのが感じられなかったし」
「何か裏があるかもしれない」
裏。
漠然として分からないけど、単なる騎士団長による殺人事件としては考えにくい。
「優樹」
不意にアリアは呟く。
「私達が止めよう」と。
「いいのか?目立つとルートに見つかるかもしれない」
「構わないし、関係ないよ」
すっぱりと言い放つアリア。
「優樹こそいいの?」
「何を今更」
「ありがとう、1人じゃどうしようもなさそうだったから」
アリアは直ぐに探知を開始する。
発動した探知魔術は、残留魔力と逃げた方向から現在地を割り出すものだ。
円が部屋の壁に映し出され、線と点で模様が描かれていく。
「さっきの戦闘場所から西に2キロあたり」
アリアは20秒程で相手を補足する。
「了解。さっさと終わらせて飯でも食べようぜ」
「うん」
優樹とアリアは再び暗闇の街の中へと飛び出した。
※※※
「団長」
街の裏通りに潜んでいた殺人鬼の目の前に青年が現れる。
右手には銃。
先刻、街に侵入した青年である。
地毛と思われる金色の髪が夜の闇の中でもはっきりと見える。
「シフト」
青年は銃を構える。
一方、殺人鬼は体を青年に向けるだけで、言葉には少しも反応しない。
そのかわり剣に手をかけ戦闘態勢に入った。
「止めさせてもらいます。これ以上、こんな辛そうな団長なんて見てられません」
青年は銃口を地面に向け引き金を引いた。
陣が展開される。
召喚魔術。
地面に描かれた魔法陣から西洋剣が現れる。
騎士団専用の西洋剣だ。
「本気でいきます」
銃と剣を構えた青年は殺人鬼へ向かって駆け出した。