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星空の町―2―

肩に重みを感じて目を覚ます。

壁に寄りかかって寝たせいか少し背中が痛い。


「朝か……」


立ち上がろうとしたところでやっと気付く。

なぜ自分の体に毛布がかけてあるのか、と。

そしてこの肩の重み。

恐る恐る左肩の方に目を向けると、無防備に寝息をかいたアリアがいた。


「!?」


仲良く毛布も一緒だ。


「おい!!」


「……ん?」


眼が虚ろに開きかけたアリアはこちらを見て一言。


「おひゃよーゆーき」


「っ……」


優樹は、にへらーと笑うアリアに少し照れる。

というかよだれ……。

コホン、と照れ隠しの咳払いをしてから、


「……何で俺の隣で寝てる?」


「寂しかったから」


「……」


寂しいのは誰にも寝てもらえないベッドの方ではないだろうか。


「今何時だ?」


「んー……、ぐぅ……」


寝起きのアリアは役に立たなそうだ。

ベッド下に転がり落ちていた置き時計を見ると、午前7時を回ったところだった。


「まぁ妥当な時間か」


頭を掻きながら洗面台に向かう。

俺達は外出の準備を整え(アリアを完全に起こすためにかかった所要時間は47分)、町の図書館に向かった。


※※※



「何か見つかったか?」


「んー、微妙」


俺とアリアは半日以上図書館に閉じ篭っている。

只今の時刻は午後7時半過ぎ。

片っ端から魔術関連の本を持ってきて、アリアがそれを読む。ただそれだけの作業を延々と続けていた。

アリアは、本全部に目を通すわけではなく目次を最初に見ていたので調べたいものは決まっていたようだ。


「何か探し物だったのか?」


「うん、まぁそんなところかな。新しく魔術を作ろうかと思って」


「……やっぱりすごいなお前」


「そうかな?やることは簡単だよ」


生活レベルは一般人以下だが。


「んーーーーーー!調べ物してると時間が立つのを忘れちゃうねー」


アリアは手を上げて伸びをしながら窓の方を見る。

外を見ると日はすっかり沈んでおり、建物の明かりが見えるだけになっていた。


「今日はそろそろ帰るか。腹も減ったし」


「そうだね。一応何冊か借りて帰ろうかな」


アリアはぱたぱたと少し駆け足気味になりながら受付に本を持っていく。

受付で本の貸出手続きが終わった後、エントランスにある自販機でジュースを買って図書館を後にした。


※※※


「やっぱり星がきれい」


「ああ、この町は星空あってこそだしな」


2人で星空を見ながら帰路についていた。

アリアは、まるで今日の疲労がないかのように少し弾み気味に歩く。

それほど綺麗な星空。

でも。

それでも違和感は拭えない。


「やっぱり人が少ない、っていうか見当たらないね」


辺りを見渡してみても建物の明かりが見えるだけで人影は全くと言っていいほど見当たらない。


「例の殺人事件の影響だろうな」


街がここまでの状態になったってことは、かなりの頻度で殺人事件が起きるんだろう。

ビルの壁にも張り紙が張ってあり、「夜間は外出しないようにしましょう」と書いてある。


「ここまで問題が発展してるのに何も対策してないのか?」


「警察の人が見回りはしてるみたいだけど明らかに対策不足だよね。武装した十数人で見回りか、騎士団を派遣するくらいは必要でしょ」


「だよな」


いくらなんでも無防備過ぎる。

相手はもう何人も殺している殺戮者だ。普通なら強攻策で捕獲する段階のはず。


「何かおかしいんだよなー」


「?」


アリアは首を傾げてこちらを覗くように見る。


「いや、何でもない」


「変な優樹。あたしたちも遅くなっちゃったから事件に巻き込まれる前に帰ろ」


「ああ」


そうだな、と頷いた瞬間だった。


突き刺さるような殺気が背中に襲い掛かる。


「!?」


振り向くと同時に刃物が喉元に迫っていた。


「優樹!?」


刃物と刃物がぶつかり合う金属音が街路に響く。

間一髪、優樹は自分の刀で相手の刃物を受けていた。


「っ、まさか……」


優樹は相手を強く睨み付ける。


「お前が殺人事件の犯人か?」


「……」


相手は優樹の問いに答えない。

見た目も大きい黒い布を頭から被っており、性別すら判断できなかった。

ただ、その手に握られている西洋剣と殺気で敵意があることだけはわかる。


「だんまりか……」


「……」


後方ではアリアも魔術を発動し戦闘態勢に入る。


「ついでだ。この町の事件ってやつを解決してやる」


優樹は一度距離を取り直し、再び相手に向かって飛び込む。

右斜め上から振り下ろされる優樹の渾身の一撃に対し相手は受け止める動作だけを見せた。


「っ!」


殺人鬼は優樹の刀を受け止めた瞬間に陣を形成する。


「魔術師!?」


陣の位置は相手の頭上。

大きさは1メートル弱。


「っ!」


小さく舌打ちをする。

相手を魔術師ではないと思い込んで無策で突っ込んだ自分のミス。

この魔術の発動タイミングが掴めていない今、術式破壊をするため更に前へ踏み込むのは高いリスクが伴ってしまう。


「零―」


防御のために『白の十字架』を展開しようとした時だった。


「優樹、下がって!!」


アリアの声が聞こえて瞬時に後ろへ跳び退く。


「―ラースの矢」


「!」


アリアの手から激しい雷炎の矢が放たれ、爆発音とともに粉塵と熱風が辺りに広がった。

ミサイル。爆弾。そんな爆発物を射出するような魔術ではなく、爆発そのものを目標へ飛ばすような魔術。

まさに対軍系魔術とも言える代物だ。

相手の体が残っているか心配になるほどの一撃だったが、前を見ると粉塵の中心に動く人影が見える。


「あれをくらって生きてるのかよ……」


少し呆れてた感じで優樹は呟く。


「同系の魔術で相殺されたみたいだね。でも、威力はこっちの方が上だったみたい」


煙がはれた場所に立っていた殺人鬼は黒い布をほとんど焼き尽くされ、完全に姿が見える状態になっていた。


「おいおい……。何で……」


殺人鬼を見て驚愕する。

詳しく言うと腰に提げてある剣の鞘の方。

その鞘に装飾してあった模様だ。


「騎士団のエンブレム……」


アリアはそう呟いた。


「自警団がなんで……。っ!?待て!!」


殺人鬼は踵を返すように瞬時に街路へ後退していく。


「優樹!」


アリアに呼び止められ殺人鬼を追う足を止める。


「っ!?」


「周りに人が集まり始めた。こっちも引こう」


「っと……、そうだな」


辺りを見渡すと、遠くに少なからず人影が見えていた。


「ちょっと威力強すぎたかな?」


「ちょっとじゃない……」


アリアと優樹はそのまま帰路についた。


「騎士団、か。どうも怪しくなってきたな……」


戦闘描写難しい……


まぁそれは置いときまして、次回に新キャラ出そうと思います。


よろしくお願いします。

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