言の葉の魔術師
あれっすね。
魔術です。
やっぱり厨二です。
男はやっぱりかっこいい物が好きなのです。
というわけでよろしくお願いします。
全ての名称には力がある―
アリアに会った時、そう聞かされた。
『言の葉のアリア』。
彼女が使える魔術は、一般の人が使える魔術の量と効果を遥かに凌ぎ、数は700を超える。
事は1週間程前に遡る――
旅をしていた見上優樹は、とある町で偶然にも彼女と出会った。
高位魔術師であるアリアに出会えたとなって、無謀にも模擬戦を挑んでしまった。
本当に無茶なことをしてしまったと後悔している彼がいる。
でも、その時は勝てると思っていたのだ。
だって……見た目が同い年くらいの女の子だったんだから。
※※※
「なぁ」
「なぁに、負け犬優樹」
「……」
ちくしょー。
まさか自分より小さい女の子(一応同じ年)に負け犬呼ばわりされるなんて……
「この『付き人』っていつまで続ければいいんだ?」
「私が飽きるまで」
優樹は、ただの奴隷じゃないか……と思いつつも重たい足を進め続ける。
前を歩くアリアは、小さいというか小柄な体格をしていた。
そんな彼女を見ていると、負けたのがとても不思議に感じてしまう。
それ以上に、今は『普通の女の子』にしか見えないのだ。
「まぁ、俺は特に目的地はないからいんだけどさ……」
「そう、ありがとう。やっぱり1人は心細いのよね」
アリアは素直に感謝の言葉を伝えてくる。
笑顔を見せる彼女は、本当に心の底から感謝しているのだろう。
「でも女じゃなくてよかったのか?男の俺じゃあ何かと不安だろう?」
「んー?もしかして私を襲う気なのかしら?」
アリアは不敵な笑みを浮かべながら顔を近づけてくる。
一瞬、身を引きそうになった優樹だが、変なプライドがそのままの体勢を維持させた。
「いやいや、女の方が宿に泊まる時とか変な気を遣わなくてすむだろう?」
「優樹、さっきから何言ってるの?」
「え?」
「男とか女とか関係ないよ。優樹が強いから選んだだけ」
アリアはそれだけ言うとまた足を動かし始めた。
「俺、負けたんだけど」
「でも、本気出してなかったでしょ?それに私なんか魔術以外の能力は一般人以下なんだから」
「……」
戦闘中にすぐ気付いたけど、アリアは魔術以外普通の女の子だった。
戦闘のセンスもあるわけではなく、ただ魔術を相手にぶつけるだけ。
一応魔術で身体能力を上げることはできる様だが……
「よく、1人で旅してきたよな」
「うん。やっぱり寂しかったよ」
そっち?
危険性の方を心配したんだけど。
「優樹、下がって」
アリアの声が急に緊張した声に変わる。
「!?」
アリアが淡い桃色の円を前方に発生させ、向かってきた白色の槍を受け止めた。
「槍!?」
槍の向かってきた先を見ると、白いスーツの男が立っていた。