第48話 END OF WAR
「・・・・・みんな・・・?」
木野白は朦朧とする意識の中、みんなの姿を見た。味方、敵、そしてクラスメイト。その姿を見つつ、何かがおかしいと気付く。なんというか都合がよすぎるというか、なんというか。
「・・・・・・」
「なんだい?それ。そんな張りぼてを用意して何になるの?」
天使アルミトルスは本当に不思議そうに木野白に聞いた。しかし木野白はなんのことを聞かれているのかが分からない。張りぼて?何が?
アルミトルスが話していたのは木野白ではない、ということに気付いたのはそれから数秒後。後ろの茂みから人が出てきたときである。
「バレるのはやいなぁ・・・」
「君は死霊使い・・・ネクロマンサーのトーテム・・・か」
「よく分かったね・・・僕がいること」
というか僕のことも、とトーテムは笑う。
「なんだか騒がしいと思ったら・・・天使がいるんだもん」
手を出さないわけにはいかないよ、とまた笑う。
トーテムが出したのは実は生き霊である。今、ここにいる人たちの生き霊。それを引き出したのだ。
「生き霊を引きだすことは死霊を操ることよりも難しい。だから生き霊自身の意思で僕の手伝いをしてもらわなきゃいけなかったんだ。君を助けたいという意思でね」
「な、何を言って・・・」
「天使を信じて死霊を信じないなんて言うなよ。やつの攻撃が君にきいている時点で君は天使を信じているということなのだから。無理もないけどね、羽やら輪やら人間を超えた身体能力とかそりゃ信じちゃうよね」
「おい」
トーテムと木野白との会話にアルミトルスが割って入る。
「なに、無視してんのさ。楽し嬉し会話しちゃって。悪いけれど死霊使い。君がそちら側についたところでこの状況は変わらないよ。それぐらい分かってるでしょ」
天使と死霊使い。
その2つを比べるとどうしても死霊使いが劣る。それはしょうがないことであり、それ以上に天使が上すぎるということなのだ。
比べるのもおこがましい差。
それがこの2つ。
「知ってるよ。僕は君みたいに自分の能力をそこまで過信していない。死霊達にはいつ裏切られてもおかしくないと思っているよ。でも今回は違う。無理矢理霊を使っているわけではない。あいつらの意思で今、動いているんだ」
「それになんの違いがあるのさ。本物のしぼりかすみたいなもんだろ、生き霊なんて。そんな張りぼてで足止めできると思うなよ」
アルミトルスは動いた。
しかし攻撃するでもなく、やったことは手を広げるだけ。
「こいつらの感情を丸ごと操る」
アルミトルスは感情を司る。全ての感情を操り、相手の敵意を消すことすら可能。そうすれば後はただただ殴られるだけである。
だが、死霊は止まらない。ゆっくりと近づいてくる。
「・・・・・能力がきかない・・・?」
「効いてるよ、僕にはね」
トーテムは薄く笑う。
「残念だけど、僕の敵意はなくなった。元々、そんなにあった敵意じゃないけれど。でもさっきも言ったけどこいつらは生き霊。僕が制御してるわけじゃないんだ。君を倒したい、仲間を守りたいという意思のみで動いている。もちろん幽霊だから感情なんてない。いや、君を倒したいという感情しか知らないからね」
トーテムは笑う。
「他の感情なんて知らないんだ」
「くっ・・・なら!」
アルミトルスは一度空高く飛び、足に光を纏う。
「あれは異質な力を纏っている・・・。僕には詳しいことは分からないけれど、天使の力を纏っているようだね。それにより、異質なものの1つである幽霊に触れられる、と」
アルミトルスはそのまま急降下。
「1人1人潰していくよ、凡人をね!」
落下蹴り。単純な攻撃のそれはしかし高度と速度の分威力が増す。
霊の1人を貫こうとするも、その動きは止まる。
「な・・・んで・・・!」
「凡人じゃないよ。ここにいる霊達は全員ね。特に君が攻撃を仕掛けようとしたそいつは最悪だ。僕も勝てなかった相手だからね。そうだ、そこの蝙蝠ちゃん」
トーテムは木野白を呼ぶ。
「蝙蝠とは私のことか。なんだ?」
「分かんないことだらけで混乱してると思うけどさ、耳ふさぎなよ」
「耳?」
「うん、ほら、耳栓」
トーテムは耳栓を渡す。
「はやくふさぎなよ」
そういうトーテムはすでに耳栓でふさいでいるようだ。木野白もそれにならい、耳をふさぐ。
「なんで動かない!なんなんだこいつは!」
アルミトルスは空中で動こうとするも全く動けない。
「『打』」
次に動いたときは空中に再び戻された時だった。
ただし、ものすごい威力で何か見えないものに殴られて、だが。
〇
この時の事件は2回目銀色の闇として扱われた。新聞でも大きくとりあげられ、荒れた商店街が写されていた。しかしけが人は0となっている。
「都合よすぎだよな・・・」
俺は自分の家のリビングでその新聞を広げていた。
正直昨日のことはほぼ記憶にない。銀色の闇を阻止できたことははっきりと覚えているのだが。
それともう1つ。
「能力が戻っている・・・」
能力が戻っていた。あれだけないない言っていたものだったのに。
そこの記憶もない。
何か、俺の意識の奥底からひっぱりだされたような感じ。
「俺の意識がない間に俺の別人格が動いていた変な感じがするな・・・。幽体離脱とかしてたんかな、そんで生き霊になって・・・。ってんなわけないか」
はははと笑うも、虚しく響くだけ。俺は新聞をとじた。
今回の天使達の目的はモラルではなかった。場を荒らしただけにも見えるが恐らく何か目的があったんだろうな。
でももうあの2人の天使もいないし・・・。
「って、ん?」
なんで俺あの2人がもうやられたと思ったのだろうか。実際に見たわけでもないのに。いや、見たのか?なんだか昨日のことなのに記憶が曖昧だ。
ピンポーン。
そんな俺の思考を切ったのはインターホンの音だった。
うちのインターホンは映像を映すものなのだが、それを見ずに俺は玄関まで行く。もう少しで登校時間のこの時間帯に尋ねてくるやつなど限られている。
どうせ志野野辺あたりなのだろう。
はーい、と言いながら鍵をあける。
「・・・・・梨菜・・・!?」
そこにいたのは梨菜。暗き蝙蝠の一員の女の子である。体のあちこちにガーゼやらがあり、痛々しいが見たところ軽い怪我ばかり。女の子が無理するものではないと思うけれど・・・。
「はい、井野宮さん」
「ど、どうしてうちに・・・?」
「そのですね・・・私もそちらの高校に通うことになりました」
「え、えーと。色々とききたいことがあるけれどまず1つ。梨菜って俺と同い年なの?」
「はい」
1,2歳年下かと思っていた・・・。
「り、梨菜さん・・・」
「なんでさん付け・・・?でもいいです。言いたかったことはもう1つありまして。あ、ここの寮に泊まることになってるんですけど」
「待て。それ大事なことなんだが、なんで軽く流した」
「それでですね」
「お前ってたまに人の話きかないよな・・・」
真面目なのに。
「井野宮さん」
顔を赤らめて下を向く梨菜。
「あの、私と付き合ってください」
お久しぶりです。
この小説は一番最初に書き始めたのに後に書いているものに追い越されていると言う作品です。
不定期であるとは思いますがまさかここまでとは自分でも驚きです。
これからは少しずつ投稿を増やしていきたいです。
他の小説は日常系が多いので割とな頻度で投稿しております。もしよければそちらもよろしくお願いします。
あと、ユーザーの方以外からも感想を受け付けているようになったので、どんなことでもぜひ。
ではまた次回。