銀色の闇first 第37話 DESIRE
俺はとりあえず、志野野辺に電話した。あいつこの時間帯にたまーにコンビニ行くから家から出ないように連絡だ。ちなみに今は夜10時過ぎ。
「お、志野野辺か?」
『お、井野宮か?どうした?』
「今日はコンビニに行くか?」
『なんだ急に?今日は行く予定はないぞ』
「そうか・・・・じゃあ、今日はもう家にいるようにな」
『いるっちゃあいるが・・・。何かあったのか?』
「いいや、なんでもない」
『そうか・・・そうだ俺らバスケ部は新入生を迎える時、ピー〇ーパンをやるんだ。俺はティン〇ーベル役なんだがどう思う?』
「どうでもいいわ!、じゃあな」
俺は急いで通話を終える。あいつの話はまた今度ゆっくり聞こう。たいしたことじゃなかったが。
「ちっ・・・・まだぶつかってないだろうな・・・・・・」
俺がむかっているのは暗き蝙蝠の拠点だった。
〇
決して起こしてはいけない喧嘩というには派手すぎて、戦争というにはあまりにも正統的な戦い。
殺人、破壊、浸食。
繰り返し行われる恐るべき闇。
銀色の戦い。
それらを恨み、妬み、恐ろしさをこめて人々は
銀色の闇と呼ぶ。
〇
「リーダー代理!・・・・って梨菜!?」
暗き蝙蝠の拠点。もうそこには誰もいなかった。いや、いるにはいる。倒れた暗き蝙蝠のメンバーが数人。重傷ということではなかったが、意識がない。俺は梨菜を抱えて無事を確認することにした。
「梨菜・・・大丈夫か!」
「う、ううん・・・・井野宮さん・・・・?」
「そうだ。何があった?まさかもうシルバーウルフの連中が・・・」
「いえ、・・・違います」
意識がはっきりしてきたのか梨菜は立ち上がる。
「ここに倒れている人はみんな戦いに反対の人達なんです。リーダー代理に話をしても、無理で・・・」
「それで武力行使された・・・と」
「はい。やはり数が違いすぎます・・・。勝てませんでした・・・」
「いや、いい気にするな」
「でも・・・・またあの戦争がおこっちゃいます・・・・またとめれなかった・・・・」
梨菜は責任を感じてか泣きだしてしまった。俺はなんて声をかければいいのだろうか・・・。こういう面でも俺は自分の役立たずさにあきれていた。泣いている少女に声をかけることもできない。
「梨菜はここにいろ」
「え・・・井野宮さんは?」
「止めてくる」
「じゃ、じゃあ私も・・・・・」
「いいから。ここにいてくれ。それにまだ意識が完璧ではないんだろ。それなら逆に足手まといだ」
「井野宮さん・・・・・」
「止めてくる・・・・・お前の思いも背負って・・・止めてくるよ」
「はい・・・・分かりました」
俺は走り出す。俺だけじゃない。この戦争を止めることはみんなのためでもあるんだ。負けるわけにはいかない!俺はどこまでも走る。息が切れようとも。息が絶えようとも。
〇
ここの商店街は信じられないぐらい広かった。商店街と言っても店がたくさん並んでいるだけであり、古風な感じはまったくしない。むしろ最先端という感じがした。ここにくればどんなものでも買え、そろえることができる。でかいデパートは当たり前。本屋に文房具屋。ホームセンターに100円ショップ。たくさんの店がそろっていた。
しかもこの大きさは町一個分。商店街というよりデパート街。お店が多い分、ここには路地裏が増える。店の大きさもそろえられてないので所々でかい路地裏があるのだ。
そこを拠点としているのがシルバーウルフに暗き蝙蝠。お互いの拠点は正反対のところにあるため、今、バスもないここでは徒歩で移動するしかないが、ぶつかるのにすごい時間がかかる。
なのでそこがぶつかる前に止める仕事が井野宮天十に課せられている。
ここはシルバーウルフ。
「なんとしてでも暗き蝙蝠を根絶やしにするぞ・・・・」
「分かってます、リーダー代理!」
返事をしたのはリーダー代理になる前からリーダー代理に付き添っていたメンバー。
「俺は・・・・俺はリーダーからこの大切な仲間を預かっているんだ・・・。それを崩されるわけにはいかない・・・。崩される前に崩す!それが今回の目標だぞ!」
「はい!・・・・とと・・・。リーダー代理!やはり井野宮さんが来ているらしいです!」
「井野宮さん・・・・よし!邪魔されないように止めろ。無理なようなら・・・・・・・・・・」
「殺せ」
「分かりました。伝えておきます」
うって変わってここは暗き蝙蝠。衝突までかなりの時間がかかるため走りながら移動している。暗き蝙蝠は一人ひとりでの戦闘が得意なため、仲間がはぐれていても平気なのだ。
「姐さん!」
「いつの時代の不良だよ・・・。普通にリーダー代理と呼んでくれ」
「いえ、それじゃあむこうと丸かぶりです!なので姐さん!井野宮さんが来たらしいです」
「予測済みさ。手はうってある。すまないね・・・井野宮さん。これもチームのためだとわかってくれ」
「でも本当にシルバーウルフが悪いんでしょうか?」
「何を言っているんだ。最初に攻撃いてきたのはむこうだ。仲間が一人刺されているしな。それにむこうの仲間が死んだのをこっちのせいにしている!寝込みをおそうなど!卑怯な真似はしない!」
「はい!その通りですね!」
「今に見てろ・・・・」
〇
「人通りは少ないな・・・・」
俺、井野宮天十は商店街を走っていた。チームがぶつかる場所は予想済み。一回銀色の闇に立ち会っているんだ。それぐらいはわかる。
「一般人が巻き込まれる恐れはないか・・・・」
すると前から人がきた。数は3人。
「一般人か・・・・ってシルバーウルフの連中じゃねぇか!」
目立つ白の学ラン。
「井野宮さん・・・・」
「ちょうどいい、リーダー代理のところまで連れてってくれ」
「それはできません・・・・」
「なっ!どうして・・・・」
「リーダー代理からの命令です。井野宮さんの足どめ、それができないようなら殺せ・・・と」
「!!」
「すいません、井野宮さん。カツヤ!」
「シン!」
「アヤセ!」
「「「行くぞ!!」」」
するとまずカツヤと呼ばれた人物がすごいスピードで俺に近づき、腹を殴ろうとしてくる。それを俺はぎりぎりでかわす。しかしその間にシンが俺の背中めがけてとび蹴り。
「ぐっ・・・!」
それをモロにくらった俺はその場に倒れる。しかしアヤセと呼ばれた人物がすかさず、俺の顔面めがけて蹴りを繰り出す。
「あっぶねぇな!」
俺は背中をのけぞる形でそれをかわし、その後地面を転がって距離をとる。
「くっそ・・・・確か・・・シルバーウルフの得意なものは集団戦法か・・・・」
冷静に分析をしていたけれど心はもう冷静ではなかった。シルバーウルフのリーダー代理は好戦的だが優しいやつだったのだ。そいつが俺を殺せという命令を出している。これは心にこたえた。
「はぁ・・・はぁ・・・・・」
俺はすぐに立ち上がる。しかしここで能力がないことと同時に俺は喧嘩が弱いことにも気付いた。もうどうしたらええねん・・・・。能力に頼ってばかりだからこうなるんだよな・・・。でも俺の一撃。一撃の拳をくらわすことができたら勝てる!腕だけは鍛えてるんでね。
「そっちが本気ならもう手加減はなしだ。本気で行く」
俺は思いっきり走る!まず最初に相手にしたのはアヤセだった。アヤセは何発ものパンチを繰り出してくるがそれを距離をとることで回避。相手の攻撃がやんだ瞬間に俺はまた全力でダッシュ!相手の懐へもぐりこむ。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
拳を構え殴ろうとするが、そこでシンがまたまたとび蹴り。しかしそう何度もくらうはずがない。俺は最小限の動きでそれをよける。しかしよけた場所にまっていたのはカツヤ。上段回し蹴りをしてくるがとっさにしゃがみ、相手の足を払う。
「なっ!!!」
驚いたカツヤの隙だらけな腹を思いっきり殴る。
「今度こそぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「ぐふっ・・・・・!」
カツヤをダウンさせた。
「カツヤ!!ちっくしょう!」
シンが俺にむかって突進。体をはった体当たりだった。
「ぐっ・・・・・・」
それは予想外のこと。まさか体当たりでくるとは思わなかった。なのでそれをくらい少し圧される。
「はあああああああああああああ!!!」
その隙に俺の後頭部を狙って全力で殴ろうとアヤセがしてきた。
「ちっ・・・・!」
俺は体をおされていて、封じられていたので身動きがとれず、アヤセの攻撃をモロにくらうことになった。しかし痛みが鋭い。おかしい・・・ただ殴っただけじゃここまでにはならないはず。
「なる・・・・ほど・・・・な・・・・・・・・・」
アヤセが手につけていたのはメリケンサック。いつの時代の不良だよ・・・・・と思いながら俺は地面に倒れた。視界が赤い。これは頭から出血してんな・・・・。
「井野宮さん・・・・悪く思わないでください」
「これもシルバーウルフのため・・・・・・」
カツヤを抱え、立ち去ろうとする3人。
「はっ!」
俺は鼻で笑った。
「!!」
「なんで・・・・なんでまだ立てる!?」
俺は立ち上がった。たしかにフラフラするが先ほどの天使ほどじゃあない。これならまだいける!
「何勝手に終わらそうとしてんだよ・・・・まだやられてねぇぞ・・・」
「嘘だ!俺は全力で殴ったんだぞ!なんでまだ立てるんだ!」
「俺には立つしかねぇんだよ!これは俺だけの思いじゃない。俺だけで行動してるんじゃないんだ!お前らは本当にこの戦争に賛成なのか!?」
「「!!」」
たじろぐ2人。俺の気迫におされたのかそれともただ頭から血を流して立っている気持ち悪い人と見られているのか分からないがどちらでもいい!
「だって・・・悪いのは暗き蝙蝠・・・・・」
「暗き蝙蝠が何かしたのか・・・・」
「あいつらは俺らの仲間を殺した!!」
「お前はその現場を見たのか?」
「・・・・・・」
「見てねぇんだろ!所詮その程度なんだよ!まだ疑いのレベルだ!確信じゃない!その疑いのために戦争をおこすのかよ!関係ない人々を巻き込むのかよ!」
「リーダー代理からの命令だ・・・逆らえない」
「リーダー代理はいつも正しいのか!?リーダー代理は今混乱しているだけだ!お前らの知ってるリーダー代理はこんな無益な戦争をおこすようなやつなのか!」
「違う・・・・でも」
「でもじゃねぇ!おかしいと思ったんなら意見を言えよ!たとえ武力行使されても耐えろよ!暗き蝙蝠にはそんなメンバーが数人いるんだ!あんたらが今のあんたらがあの数人に勝てるはずがない!」
「うるっせぇえええ!俺はリーダー代理に従うのみ!」
説得は無駄だな・・・・。そう思い構える。
「そうか。これが最後の警告だったんだがな。じゃあ、俺がお前らの想いを。言霊を砕く!」
俺らは再び構える。勝てる保証などない。でもこいつらはずるかった。俺の気に障った。それだけだがそれで十分だった。俺はこいつらの言霊を砕くべく戦いを挑んだ。
タイトルは想いです。
思いじゃないんですよ!
というわけで実質第6章ということです。
書いていませんが6章ですよ。
でわ