第32話 SEARCH RARTY
清々しい夏休みの朝。俺の気持ちは高ぶっていた。いわゆるスーパーハイテンションだ。次の攻撃ではただの『こうげき』でも大ダメージを与えることができそうな気分。
「いやーちょっとした小鳥のさえずりでも笑えてきちゃうな」
ふふふっと笑ってみる。小鳥のさえずりがこんなにも面白いものだったなんて気付かなかった。夏休みという余裕、浮かれが俺を身近なものに注目させるのだろう。
「さーて、今日の講習も頑張るかー」
今は登校中。登校する際のいつも通りの景色もちょっと違って見える。こんなところにこんなものがあったのかー、という新鮮な驚き、新たな発見。登校でさえ楽しんでしまう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だめだ」
今までの気持ちは全部本当だ。ちょっとニュアンスが違うかもしれないけど。
「眠すぎる・・・・」
前回のことは覚えてくれているだろうか。これも誰に話しているわけでもなく独り言なんだけど。俺は勉強するために真苗の家へ行った。しかしそこで行われたのは勉強という名のマリ〇カートだった。たまたま俺が見つけたので「一回息抜きにやる?」と言ったのが始まりだった。
「なぜ俺はゲームを発見したのだろうか・・・」
そんな後悔がある。真苗が異様にそのゲームに強かったのだ。なのでマリ〇カーター(自称)の俺は負けるわけにはいかなくなった。そこで近道を使った。真苗はそんなものは使わずにする主義というか知らなかったのでずるいと訴える。という繰り返しだ。
「あれはやはり俺が悪かったな・・・」
なんて思う。あのあと勉強に気付いた俺は「やべぇ!」と叫ぶ。真苗は何度も謝るのでお前のせいじゃないと説得するのに時間がかかり、家についたのは7時。ここまではいいだろう。その後モラルに今日何があったか話せと言われ、夕飯を作り、話しながら食べ気付くと11時。
「クマができちまった・・・・・」
そして当然徹夜。朝4時ぐらいに終わり眠ろうとしたら、俺は風呂に入ってないことに気づく。風呂に入り終わってすっきりすると眠くなってくる。そこでめずらしくトイレに起きたと思われるモラルが俺の部屋まできて、目薬をいやがらせにさされる。そのせいで眠れなくなり・・・・
「今に至る。結局一睡もしてねぇ」
まぁ、自業自得っていうやつかな・・・・・・・・・
「いや、よく考えたらモラルのせいじゃね!?」
新事実発覚。それと同時に学校到着。
〇
「おはようー井野宮君ー」
「おうおはようってもうお昼だぞ」
何事もなく講習が終わり今は下校しようとしたところだ。講習は受ける教科によって教室を移動するので真苗とは別々になってしまっていた。俺は苦手な数学、化学。真苗は現文と英語。
「よ!昨日はどうだったか?二人とも」
そこに志野野辺雄大がやってきた。
「どうって・・・・走ったな」
「うんー走ったよー」
「お前らは何をやっていたんだ・・・・」
何ってお前・・・・・まぁ、いいや。ところで・・・・
「志野野辺。用があるんだろ?なんだよ」
「へ?なぜわかった!」
「3つ目の教科俺は数学、お前は漢文だろ。教室が離れすぎてる。なのにお前がこんなにはやく俺らのところに来るってことは・・・用があるんだろ」
「当たりだ。じゃあ改めて。井野宮今日暇か?」
「あー、暇だけど」
「じゃあ、真苗今日は俺が井野宮借りるな」
「俺の意見は!?」
「いいよー」
「俺は自分で決められないのかよ!!」
といいつつ玄関へとむかう。玄関で真苗と別れ、俺らは制服のままお店がたくさんある街のほうへいくことにした。
「何の用だ?」
「いや、いつも通りだ」
「あぁ、もうそんな時期か・・・・」
実はというか前にもいったがこいつはこの地域の不良のファンだったんだ。2つの派閥。『シルバーウルフ』、『暗き蝙蝠』。その大ファンなんだ。なので一カ月に一回は俺らでその情報を探るみたいな子供の遊びだよ。危険な目にあったことは一度もない。というかそれらしい情報がつかめないのだ。
「さーて、今日も行方不明になったリーダーでも探すか!」
「今回はリーダー探しなのか?」
「あぁ、そうだよ。まずはリーダーを探してみたくってね。会ってみたいんだ」
「ふーん」
俺は一応『銀色の闇』という2つの抗争に関係している。というかその抗争を止めようとしたんだがな。その際にリーダーは何回か見かけたんだが、2つのチームのどちらも顔を隠していたため顔までは分からない。そんななか探すのは不可能に近いんだが。
「じゃあ、どこからいく?」
「とりあえずは裏路地だな。お決まりだろ」
と言って裏路地に入る。見た所なにもなさそうな暗い道。意外と広く普通の道とあんまり変わらなかった。まわりはスーパーなのでいかにも不良!という感じの人もいなかった。
「何もないな・・・・うーん・・・・」
「まぁ、今日はまだ長いんだ気長にいこうぜ」
「そうだが・・・・ここの裏路地も駄目か・・・」
はやくも行き詰まった。なんだこれ。時間の無駄だと思うのは俺だけだろうか・・・・・。
「次行こうか」
「あぁ」
次は普通の道。それらしい人を探すという作戦だ。だが・・・・・
「平和そのものだな・・・・・・・」
「あやしいやつなんていないな・・」
次!今度はちょっとあやしい裏路地。ここにはさすがに・・・と思ったが・・・・
「ここ・・・ゴミステーションだったんだな」
「くっせぇ!出るぞ!」
次!あやしい裏路地徹底捜査!!
「ここもいないぞ」
「ここにもいねぇよ」
「じゃあここは?」
「ウソだろ!ここにもねぇのかよ!!!」
「あぁああああああああああああああああああああもう!!!!!」
「気をしっかり持て。井野宮。大丈夫まだまだ屈しない」
「俺が屈しそうなんだよぉおおおおおおおおお!!!!」
もう嫌です。こんなの。
〇
「今回も手掛かりなしか・・・・・」
「あぁ、ま、次頑張ろうぜ」
「そうだな、じゃあな」
「じゃあな」
と言って志野野辺と別れる。今日4時から部活らしいので今はまだ3時。
「俺も帰って予習するかな」
まだ3時だが帰ることにした。
「シルバーウルフ・・・・・ねぇ・・・・・」
俺は実は今両方の派閥の場所を知っている。もちろんリーダーは行方不明だが。志野野辺には近寄ってほしくない。危険すぎるのだ。今は2つの派閥仲がいいが、昔は荒れていた。荒れていたなんて表現じゃ優しすぎるぐらいだ。
「はぁー、俺には関係ないけどさ」
俺は最近脇役ということを忘れている気がする。モラルを守ろうとは思った。見た目中学生の子がきついめにあうなんて見過ごせない。それにあいつのおかげで俺はいくらか楽になった。しかし主役になるつもりなんてさらさらないんだ。陰でこっそり守りたい。なのに天使・・・・・・・
「天使・・・・・・あれはなんなのだろうか」
俺は完璧に負けた。何もできなかった。自分で逃げることも。モラルを助けることも。
「考えても無駄か・・・・・」
俺は歩いていく。モラルのところにいくために。いや、予習をするためにだけどさ。
捜索パーティーという題名ですね。
前回に引き続き遊びというテーマです。
最近眠いので主人公も眠くさせました(笑)
主人公じゃなくて本人は脇役と言っていますがね。
でわ