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元主人公、今は脇役願望。  作者: 花澤文化
第4章『天使襲来』
33/68

第29話 TABLE

「女の子相手に何やってんの?」


その少年は語る。


「君たち天使でしょ?」


静かに怒りを燃やして。


「その子に危害をくわえたら・・・・・・・」


炎のようにきらめく金髪で。


「天使だろうが殺す」


少年は霊を使う。
















「あんた・・・・・・死霊使いネクロマンサー・・・。どうしてここに・・?」

「勘違いするなよ。僕はお前を助けるために来たんじゃない。僕達の計画にも君が必要だからね」


死霊使いは笑う。不敵に?いや、違う。子供が浮かべるような無邪気な笑み。


「死霊使いごときが天使に敵うと思ってんのか?」

「勝てるとは思ってないけど、生きることはできるね」

「自信があるんだな」

「自信じゃないよ。1+1=2と同じように簡単な答えさ」

「ちびっこが生意気言うじゃねぇか」

「ちびっこじゃないよ。どちらかというと君の方がガキに見えるね」


プチッ!沸点の低い天使アンジェがキレた。


「てめぇえええ!よくもバカにしやがったな!」

「まったく、扱いやすいやつだ」

死霊使いネクロマンサー?どうするつもり?」


モラルは不安を感じていた。まだ死霊使いを信じたわけじゃなかったし、それに天使2人から逃げられるとは到底思えない。そんな不安があったのだ。


「どうするってここから逃げるに決まっている。僕らの計画にも必要な君が天使にとられるわけにはいかない」

「でも相手は天使よ!あなたは死霊使いのなかで一番強いわけでもないし・・・・・」


モラルはちょっと気をつかっていた。たとえ敵だったとしても一番強いわけでもないし・・・なんて言葉は頼りにならないと言っているのと同じ。失礼にもほどがある。でも言わなきゃいけなかった。言わないと・・・強さを確認しないといけなかった。それぐらい天使とは強いのであった。


「僕は死霊使いの中では一番強いよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は!?何を言ってるの?」


最初見えを張ってるのかと思った。ふざけているのかとも思った。でもそうじゃなかった。それは死霊使い、トーテムの目を見ればわかった。


「僕が手伝っている組織はアークラセル側のやつなんだ」

「アークラセル・・・・」


天十が救った世界とは違う、錬金術師や色縦師など名前の最後に師がつく職業ジョブがいる世界。

それがアークラセル。


「でも僕は死霊使い・・・・最後が師じゃなくて使いがついているだろう。これはあの言霊使いと同じ、

ランドバハド側の人間だってことを表してる」


ランドバハド。天十が能力をもらった世界であり、救った世界でもある。職業ジョブの名前の最後には使いがつく。


「錬金術師もね、ランドバハド側にもいるんだよ」

「?・・・・それはアークラセルから来たんじゃなくて?」

「いや、違う。正確には錬金術師みたいなものだ。アークラセル側で錬金術師と呼ばれていてもランドバハド側では錬金術師とは違う名前で呼ばれている」

「あたりまえじゃない。だってアークラセルは最後に師がつくけど、ランドバハドでは使いがつく。なら名前も変わるでしょう」


何を当たり前なことを言っているんだと思った。しかし・・・・・・・


「変わるのは名前だけじゃない。能力も微妙に変わるんだ。錬金術師は元となるものから物を生み出す。でもランドバハドの錬金術師は液体からしか物を作り出せない」

「世界ごとに進んでる技術が違うって事?」

「そういうこと」

「でもそれじゃあ・・・・・・・・・・・・」


それじゃあ、ランドバハド側はアークラセル側に劣っているということ。液体からしか物を作り出せないなんて不便すぎる。しかもさらにそこから水、雨水、石油、とかって制限される。技術が進んでないのだ。


「確かに錬金術師の能力に関しては劣っているさ。でもそれだったら他の職業ジョブで勝っていることもあるんだよ」

「!!・・・・・それが死霊使い・・・・・・・・・・」

「そうさ」


アークラセル側では死霊使いのことを霊媒師と呼ぶらしい。そして組織もアークラセル側にあったため下っ端の方で働いていたということだ。でも・・・・・


「でも、実際は霊媒師の頂点より何十倍も僕のほうが強い」


それが結論。


「でも俺たちは天使だぜぇ!」


ここぞとばかりにアンジェが割り込んだ。ガキ呼ばわりされた怒りはまだ消えてないらしい。


「天使はどちらにも干渉していてどちらの職業ジョブにも勝る!」

「だから勝つなんて言ってないだろ」

「!!」

「生きると言ったんだ。勝てるなんて思ってない」


モラルには伝わってきた。本当は勝ちたいと思っているんだ。しかしそれはかなわない。彼が死霊使いであるかぎり絶対に・・・・。


「だらだらと長い話で飽きちまった。もう我慢の限界!!死ねよ」


天使のまわりに氷の杭が現れる。無数の数が数えきれないぐらいの杭。井野宮天十を苦しめてきた技のうちの一つ。


「呪力解禁。解き放たれる魂たちよ。我に力を与えたまえ・・・・・・・」


死霊使いはすごいスピードで言葉を紡いでいく。


「顕現せよ!暴力霊『雷神雲らいじんうん』!!!」


すると死霊使いトーテムの前に2メートル程度の背丈の人が現れた。ただの人ではない。筋肉で覆われた体。上半身は裸で下ははかまをはいている。髪は長く、顔にはでかいお札が貼ってある。淡い赤色に光る全身。背には大量の武器を背負っており、手にはでかい槍が握られている。


「これは・・・・・・・・・・・・?」

「攻撃が得意な暴力霊の上位霊だよ。天使あいてでも十分に戦える」


「コォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


叫び声をあげる暴力霊の雷神雲。その瞬間その姿が消えた。


「何!?」


氷の杭はすべて破壊されていた。


「どういうこと・・・だ・・・・?」

「アンジェ。注意してください。あなたの攻撃は物理攻撃。霊相手では不利です」

「俺に弱点なんかねぇんだよ!くらえ!」


バサッ・・・・・天使も瞬間移動を開始。霊の後ろにまわり攻撃しようとしたとき・・・・


ガキンッ!


「嘘だろ・・・・防がれた・・・・。どうしてだ!手は2本とも反応できていなかった!なのにどうして!!!」

「アンジェ。よく見てください。その霊・・・・・・・・・・・・・・・・




「腕が4本ありますよ」




「なっ!?ただの人間の霊じゃねぇのかよ・・・・・・」

「その通りだ。暴力霊の上位霊と呼ばれるめずらしい霊のほとんどは悪魔の霊なんだ」

「悪魔の霊?」


思わずモラルがきいてしまった。しかし気になることでもあったのだ。悪魔が誰かの使いにさせられるなど考えにくい。


「だからこの顔のお札。これはダンドバハドの死霊使いなら全員持ってる強力な呪力抑え込みのお札だ」

「それで無理やり命令をきかせてるってことか?」

「人聞きが悪い。悪魔は死んだら永遠に檻に閉じ込められるんだ。危険だからな。しかしそうやって誰かの使いになることで檻に閉じ込められる期間を短くできるんだ。だから悪魔も喜んでやってくれるね」


悪魔は死んだら檻に閉じ込められる・・・・。天十はどうなるんだろう・・・・。思わずそう思ってしまう。しかし今はそんな分かんないことに頭を使っている場合じゃない。


「これなら天使にも勝てるかもしれない・・・・・。ね!トーテム!」

「昔のように呼び捨てで呼ぶな。いや・・・・勝てることはないだろうな・・・・」


モラルは昔、アークラセル側にしばらく捕まっていたことがあり、そのころまだ小さかったトーテムと遊んだことがあるのだ。何回も・・・・。


「ってえぇ!?勝てないの?」

「ちぃ!何を創造しても消される!もっとどでかいものを生み出さねぇと・・・・」


でかい声にかき消されたモラルのツッコミ・・・・・・・・寂しい。


「アンジェ・・・下がってください」

「うるせぇ!これは俺の・・・・・・・・」

「いいから・・・・お願いします」


モラルとトーテムはモカとかいうやつの気迫に圧されていた・・・。


「わかったよ・・・・」


アンジェを簡単に引き下がらせるその気迫に・・・・・。


「やべぇな・・・・。死界!開け!!!」


目の前に見たことのある死界が開く。


「まだ死界消してなかったの!?」

「消すには時間がかかってな。あと1カ月は必要なんだ」

「というかどうしていきなり逃げるのよ!あの暴力霊なら・・・・・」

「簡単に負けるよ。あのモカってやつさ・・・・・・一瞬やばいぐらいの殺気をだした」


トーテムの手は震えていた。そこまでの殺気・・・・・・・。


「いくぞ、モーラ・ルーレト!」

「え!?ちょっ!」


トーテムは強引にモラルの手を引っ張り死界の中を走る。


「このまままっすぐ走れば人間の世界、地球に戻れる。死界よ!閉じれ!」


さっき入ってきた死界の入り口を閉じる。


「あの暴力霊は!?」

「消されたな。文字どおりに・・・・・」

「!!」


あの強さを誇る・・・・アンジェを圧してた暴力霊を一瞬で・・・・・。


「いそぐぞ!死界の場所を特定される前に逃げる!!」

「でも・・・・・どうして私をあなたの組織に連れて行かないの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・目を覚まさしてくれた礼だ。僕は霊を道具として使うことの愚かさを学んだ・・・・・からな」


きっとそのお礼は私に向けたものなんじゃないんだろうな、と思った。きっとあるヒーローにむけた言葉だろうと思った。











「あぁーーーーーーーーーー!もう海疲れた!」


俺はその魂の叫びとともにベッドに倒れこんだ。ここは井野宮天十の部屋。俺は寮に戻ってきたのだ。


「そういやぁ、モラル、具合悪くしたんだよな・・・・・・・・・・・・・・・ん?」


いや、何かに引っ掛かる・・・・・・。何か違う気がする・・・・・そうだ・・・・・・・・・。


「モラルは俺を逃がしたのか!!じゃあ、まだあの結界の中に!!」


俺はあわてて玄関に行き靴をはく。なんでそんな大切なことを忘れていたんだ!モラルまってろ・・・。

俺は玄関のドアを開けた・・・・・・・・・


「あれ?あんたどこに行くの?」


ドアの前にモラルが立っていた・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「えぇえええええええええええええええええええええ!!!?」

「な、何よ!なんかおかしいところでもある!?」


驚くしかなかった。というか・・・・・・。


「お前どうやって戻ってきたんだ?」

「色々あってよ・・・・」

「色々・・・・か。天使2人はまだ?」

「うん、まだ生きてる。また追ってくるかもしれなぃいいい!?」


モラルは驚いたような声をあげた。というか俺が途中で抱きしめたからだ。


「ちょっ!あんた何やってんの!?この変態!!!」

「ごめん・・・・・・・ごめんな。守ってやれなかった。しかも忘れていたんだ。大事なことを」

「あ・・・・・それは私が記憶を操作したからだけど・・・・あんたのせいじゃないわよ」

「おっと・・・・・お楽しみ中だったかな?」

「!!!!!」


そこには委員長。友永さんに志野野辺、真苗がいた。


「アツアツだな・・・」

「天十もすみにおけないぜー!」

「むぅー!私もまだ抱き締めてもらってないのに・・・・・」


「み・・・・んな?」

「お前まだ夕飯くってなかっただろ」

「うむ、夕飯は食べないとな。私はなぜモラルが一人で帰ったのだと思ったのだろう・・・・」

「あぁ・・・それはだから私が記憶を・・・・・って一般人にいっても意味ないか」


「よし、準備できたぞー!」


志野野辺が言う。そこには大きなテーブルにたくさんの料理があった。


「どれもおいしそう・・・・てみんなも食べてないの?」

「あぁ、なんか知らないがモラルが具合を悪くしたと思ってな。俺らでつくったんだ」

「井野宮君は何もしてないでしょー」

「皿とか配置しただろ!」

「それは作ったんじゃないよな」

「ていうか私は腹が減ったぞ!早くくわせろ。深夜アニメに間に合わなくなる」

「お前はいっつもそれ優先か!!!」

「まーまー、いいじゃねぇか。井野宮。ではみんなで・・・・・・・」






『いただきまーす』





そこには暖かい日常があった。さっきまでの戦闘が嘘のように。疲れが全てふっとぶぐらいに心地いい日常が・・・・・。






お久しぶりです、花澤文化です。


タイトルは食卓という意味です。普通のテーブルなんですが(笑)


なんとか4章終了。

いつもより少し長めになってしまいました。


番外編的なものも書きたいなとか思っています。


でわ

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