第20話 SAVING
俺は・・・・・・・・・・・。
『天十・・・・・・・・・・』
ルナか・・・?なんでルナの声が?どうして・・・?あぁ、そうか。
俺は死んだのか。
ルナ。ようやく会えるんだな。待ってたんだぜ、このときを。
『あなたはまだこちらにはこれません』
何言ってやがんだよ。俺はもう死んだんだ。そこへ行けるはずだろ。ルナ、お前まさか・・・天国に行けてないのか?まだ流れてるのか?「時空の流れ」に。
『そういう意味じゃありません。まだあなたにはやることがあるでしょう』
やる・・・・・こと?そう・・・・・か・・・・俺は・・・・・・。
『私よりも小さくてまだ弱い。そんな彼女をおいていくのですか?』
俺は・・・・・・・・・俺は・・・・・・・・・・・・・俺は!
「バカー!!!死ぬなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
!!この・・・・声は・・・・・・・・・・・・・モラル・・・・?
「あんたが死んでどうするの!?このあと勉強会でしょ!!!」
ふふっ・・・。そうだったな。真苗を待たせるのも悪いし。じゃあな、ルナ。
『ちゃんと守ってあげてくださいね』
〇
「無理だよ。お嬢ちゃん。その胸に開いた穴。赤い血。そいつは死ん・・・・・」
「死んでない!こいつと約束したんだ!このあと勉強会やるって!」
「ははは、それはそれは。悪いな。約束破らせるようなことしちゃってさ」
「絶対天十はくるんだ!!!!」
「勉強会とやらにか?そいつは無理・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・じゃねぇ・・・・・・・・・」
「!!」
「無理じゃねぇええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「まさか・・・こいつ!」
「天十!」
「ったくおかげで三途の川を渡るところだったぜ」
「お前・・・でも傷が・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
「傷?なんのことだ?」
「胸に開いた穴が・・・・・・・きれいにふさがってる。衣服に血すらついてない・・・」
俺にはなんのことか分からないが、ルナが助けてくれたんだろうな。きっとそうだと信じてる。あいつは俺を・・・お前を救えなかった俺を救ってくれたんだ。
「もう死ぬわけにはいかねぇ。それどころか傷一つだってつくわけにはいかない」
「無駄だ!俺は錬金術師!ここの廃校になった校舎の教室全体を銃で包む!」
「モラル!次元移動を頼む!どこか・・・植物で覆われた場所に!」
「分かった!次元移動!」
光に包まれる。俺は必死に考えた策で挑む。負けるわけにはいかない。
「何だここは!?」
「次元移動で移動したんだ。こいつの能力でな」
移動した場所はホントに植物だらけの島。見渡す限りの緑、緑、緑。太陽が照りつけちょっと暑い。
「ここに移動したとて俺の勝ちは変わらんぞ」
「変わるさ」
「『四方拳銃』」
「撃ってみろよ。その瞬間お前の負けだ」
「ふざけたこというな。少年。ここらで諦めてくれないか?」
「なぜ?」
「俺はお前を殺したくない。いや、人を殺したくない。お前が諦めるなら・・・・・・・いや、悪い。今のお前は戦士の顔をしている。そんなやつにこんなこというのは失礼だな」
俺は拳をつくる。強く握りしめる。やつを殴る準備だ。
「ではさいなら。少年」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!
一斉に撃ちこまれる。これをかわすことは無理だ。ならかわさなければいい。
ヒュンッ!
「!!」
弾丸は全て俺の体を貫通していった。ただ貫通したんじゃない。なぜなら俺は無傷だから。
「どういうことだ・・・!何をした!!!」
「ここは植物しかないような島。あんたの弾丸が全て二酸化炭素でできているなら・・・・」
「植物の光合成か!?」
光合成。植物が日光にあたると葉緑体がおこす現象。二酸化炭素を吸い、酸素を吐く。やつの弾丸は俺を貫通する前に植物に吸われたんだ。だから薄くなった弾丸は俺の体をすり抜けていった。
「『飛』」
パァン!
空気が爆発する。俺は間合いを一瞬で詰め・・・・・・・
「悪いな。おっさん。俺にもやらなきゃならないことがあるんだよ!!!」
バゴォ!
「グッ・・・はっ!」
おっさんを思いっきり殴りつけた。死にはしない。でもそれでいいのだろうか?いや、いいんだ。何も考える必要はない。殺す必要はない。ただそれだけ・・・・。それだけのことなんだ。
〇
「井野宮君遅いよー」
「いやー、悪い悪い」
「この人探しに行ったら地面にいるアリを観察してたんですよ!まったくこのバカ・・・・」
おいおい、猫かぶれてねぇしその説明はどうなんだ。アリを観察って。一応高校生なんだが。
「私もよくそういうことあるよー。かたつむりさんとかね」
こいつも一応高校生なんだが。
「ま、とりあえず勉強しようぜ」
「うん!さっそくなんだけどこの問題が・・・・・・」
「げっ!数学かよ」
「なにそんな問題も解けないんですか井野宮さんは。まったくクズですね」
「なんで俺がそんなに責められるの!?」
この時間はいい。安心できる。やはり日常が一番なんだな。
「俺は文系なんだよ!国語なら完璧だぞ!」
「現国やってみなさいよ」
「やってやろうじゃねぇか!」
「あははー、二人とも仲いいね」
この日常はいつまで続くのだろうか。永遠がいい。永遠に退屈でいいんだ。そんな日常が俺は大好きなんだから。この日常が壊されるようなことがあれば・・・・・俺はどうするんだろうか?分からない。知りたくない。分からなくていいような気がした。
〇
「やられちまったか、あの親父」
「しょうがないですよ。それと汚い言葉を使ってはいけません。女の子でしょう」
「ちっ!これで俺が行かなきゃいけねぇじゃねぇか!」
「文句をいってはいけません。まず俺というのはやめなさい」
2人の女の子がいた。どちらも綺麗な顔をしているが、乱暴な言葉使いの方はしかめっつらで鋭い眼光。丁寧な方は常に目をとじている。身長は150後半。ブラウン色の長い髪の毛。白いワンピース。
「まぁいい。俺で確実に仕留めるぜ」
「アンジェ、大丈夫ですか?」
「心配すんな、モカ。俺は剛腕のアンジェちゃんだぜ!」
「そんな二つ名付けられてないでしょう」
もう時は夜。その夜の暗さが目立たなくなるぐらいの闇がそこにはあった。
今回のタイトルは救いです。
とうとう20話ですね!
そして更新が遅れてしまってすみません!
次回からは4章なので頑張ろうと思います!