第16話 DECISION
あー、マジでめんどくさいな。ときどき何をするのもめんどくさい時があるだろう。それだよ。なんか今日はやる気がおきない。何かやることがあるわけじゃないけど学校が辛いものになる。
「ようやく1時間目が終わったところか・・・・」
何度も何度も時計を見てしまう。あぁー、もう帰りてぇな。
「どうした?井野宮。元気がないぞ」
「それの半分はお前のせいな」
「俺!?」
退屈をまぎらわすために志野野辺をからかう。だめだ。つまんね。今日は何やっても駄目な日だな。某目ざまし付き時計テレビの占いでは12位に違いない。
「あれー?井野宮君。どうしたのー?」
「別に。なんでもないよ」
真苗は心配してくれた。その気遣いはすごく嬉しいんだけど、今はちょっとな。だれに何を言われようが今日はどうも気分がすぐれない。
「なんなんだろうな・・・・この感じは」
「あれじゃないか、思春期特有の・・・・・・・」
「それは言わせんぞ。何かわからないが嫌な予感がする」
志野野辺の考えはなぜか読める。というかこいつが単純すぎるだけなんだが。
「ふむ、なら別荘にくるか?」
「なぜ、そこにいきつく。そしてお前別荘なんてあんのかよ!」
委員長が唐突に言ってきた言葉に動揺をかくせない。
「いや、どこか環境の違う場所に行けばいいのかと思ってな」
「誘ってくれるのは嬉しいが、今はまだ夏休みでもなんでもねぇよ。普通に学校がある」
その学校が憂鬱の原因の一つなんだけどな。
「なんか面白いことがおきないかなぁ・・・・・・」
俺は自然とその言葉を言っていた。俺らしくない。面白いことなんておきなくてもいいって思ってきたのに、その考えがいとも簡単に砕けた。ちょっと暇なだけでだ。
「バカいえ、俺はこの日常が一番好きなんだ」
誰に言うでもなく、ただ独り言のように俺は呟いた。
〇
気温は低め。しかし空は快晴。この天気は一度見たことがある。いや、そりゃあ一生に何度かはあると思うが、もっと最近。しかも印象深い。この場所もまた印象深いものだった。
「モラルと初めて出会ったところ・・・・・・か」
俺は出会ってよかったのだろうか。俺は自分でもわかるぐらい変わった。モラルと出会ってな。真苗とかにも明るくなったと言われたほどだ。それは果たしていいことだったのだろうか。
「俺はあれで・・・・・助けるという選択肢でよかった・・・・・・のか?」
もう分からない。死霊使いを倒し、モラルが学校に来たあたりからこの違和感を感じていた。
「よかったんじゃないかな?」
「ん?」
急に俺に話しかけてきたのは黒髪でブラウンのコートをきた、疲れた刑事のような男。
「どんなことに悩んでたのかは知らないが、少年がいいと思ったことをやったんだろう」
「あぁ・・・・まぁ」
俺は初対面なのに返事をしてしまった。俺って意外と人見知りなんだぜ。
「ならそれは正解とはいえないのかい?」
「いや、俺はそれが・・・自分の選んだことが正解かが分からなくなったんです」
「ふむ。俺は正解だと思うね」
「なぜ?」
「なんとなくだ。俺はあんまり考えないようにしてるんだよ」
そんなバカな理由があるかと思ったが、このおっさんの言うことになぜか反論しようとは思わなかった。不思議な感じがする。
「それと俺に敬語はやめてくれ。苦手なんだ」
「あぁ、わかったよ。おっさん」
「おっさんというのはやめていいんだよ?」
顔がこえぇよ。そんな気にすることか?いや、おっさんにはおっさんの考えることがあるんだろう。
「初対面なのになぜか親近感がわくというか、おっさんはすごいな」
「そんなことはない。俺はなにもしていないぞ。少年が勝手に俺の言っていることを聞いただけだ」
なぜかすごく親しみやすいおっさんだった。
「分かった。俺も何も考えないようにするよ」
「いや、それはいけない。少年はまだまだ考えないといけない歳だ」
「そういうと思ったぜ。俺はもう大丈夫。心は晴れた」
「そうか。それはよかった。じゃあ、俺はここで」
「待ってくれ!おっさんは何やってるんだ?まさかフリーター?」
「違うわ!うーん・・・・物をつくる仕事かな?」
「今度職場教えてくれよ!会いに行くぜ」
「やめてくれ。気持ち悪い。男にきてもらっても嬉しくねぇよ。じゃあな」
ほんとなんだったんだろうな。でもおっさんとの出会いで分かった。俺はきっとモヤモヤしたかっただけなんだ。非日常にかかわる言い訳みたいなものだな。俺はモラルを守ろうと思ったんだ。
「俺は言い訳なんてしない。主人公にはならないが、非日常には関わってやる」
いきなりですがタイトルの意味は決意です。
たまにありますよね、やる気がない日。
でわ