第14話 FLIGHT
「さぁ、踊れ。盛り上がれ。たのしめ」
くっそ。見る限り霊、霊、霊。怖すぎて逃げようかと思ったぜ。数百、いや数千もの霊があちこちに漂っている。どの霊も目はうつろ。それが怖さを倍増させてるんだが、気になる感じだった。
「あれ?」
そういえば、この死界ってやつ霊でできている世界とか言ってたよな・・・・。それって・・・・
「なぁ、この死界を作ったのってだれだ?」
「何を聞くかと思えば・・・・僕にきまっているだろう」
だろうな。でも問題はそこじゃない。こいつらはまだ成仏をしていないってことだろう。もちろん、この世界に使われた霊たちも。
「この死界で使われた霊は成仏できるのか?」
「永遠にできない。僕がそうしたからね」
「な!?」
「この場所は僕を圧倒的有利な状態にしてくれる!!ここならだれにも負けない。そんな素敵な場所を手放すわけないだろう」
「じゃあ、お前は霊を利用したのか・・・・・・・?」
「その通り。こいつらが苦しもうが僕は知らない」
ふざけんな・・・・・なんでだよ・・・。もう少しで成仏できたやつもいるかもしれない。もしかしたらもう成仏してるやつもいたかもしれない。それを無理やり縛って、死界に使われて利用されて。
『苦しい・・・・・・・助けて・・・・』
「!!」
これはなんだ・・・・。誰の声だ?
『成仏したい・・・・・』
『楽になりたい・・・・』
『苦しい・・・・・辛い・・・・』
これは霊の声か?なぜこんな声が急に聞こえるように・・・?しかもトーテムには聞こえてないみたいだ。まさかこれは俺に向けての言葉なのか?
『助けて・・・・・・・・』
『誰か・・・・助けて!!!!』
ギリッ
思いっきり歯を食いしばった。悔しかった。こんなに助けを求めていたなんて。利用される辛さ、成仏できない辛さなんて俺には分からない。でも・・・・・・
「なぁ、トーテム」
「なに?、ようやく本気だしてくれるの?」
「あぁ、ここからだ」
こいつは絶対に許せないことは分かった。
「ははっ!纏う空気が変わったね!楽しめそうだ!!!!!!」
「お前。何かおかしいと思わないか?」
「?」
そう俺はもう出し惜しみなんてしない。俺の得意分野を見せる時だ。
「ここ、死界に入るための扉、どこにあったか覚えてるか?」
「それを言って何になるの?まぁ、いいや。確か学校よりも高くはるか上空に・・・・・・!?」
「気づいたか。なぜ俺がそんな空高くある扉にたどり着けたと思う?」
「お前・・・・・まだ隠してるものがあるのか・・・?」
俺は構える。すると俺の足のまわりに空気が渦巻きだす。
「言霊っていうのはな、思う力が強ければ強いほど言霊自身も強くなる」
「だからなんだっていうんだ!」
「『飛』」
すると俺のまわりを渦巻いていた空気がはじけ、俺は一瞬にしてやつの目の前に移動する。
「な!?」
「さすがにこれだけ速く距離を詰めればお前の霊も何もできないだろ」
「そ、そんなバカな・・・!?」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
俺はやつの顔面に拳を叩きつけた。何の変哲もない拳。言霊がのっていないただの。でもそれは俺の思いそのものだ。それをやつにぶつけた。
ドゴォッ!
「がはっ!!!!!」
トーテムは音をたてて倒れる。
「二度とこんなことすんなよ」
〇
「でも意外だったわ」
「何が?」
今は学校のグラウンド。真苗を救出し、安心して帰宅しようというところだ。
「あんたにもテレポートが使えたのね。扉に入る時なんて真上に飛んでたし」
「あぁ、あれはテレポートでも飛んでるわけでもない」
「え?でも一瞬で敵の前まで移動したじゃない」
「あれは俺の一番得意な技でな。空気が一気に爆発してその衝撃で体が動いてるだけ」
「ていうことは超高速移動っていうこと?」
「そんな感じだな。俺は昔から空を飛んでみたいという思いが強かったらしく、この言霊だけ異様な強さを誇っているんだ。でもさすがに羽は生えなかったけどな」
「超高速移動のくせに真上にも移動できるなんて飛んでるのと同じよ」
「いやいや、そのあと落ちていくだろ。それじゃあ飛んでるとはいえない」
とまぁ、こいつに説明をしてやってるうちに真苗のうちについた。こいつも一人暮らしだからな。親とかがいなくて助かった。
「モラル。こいつをベッドの上におけないか?」
「やってみる・・・・。次元移動!」
すると真苗を光が包み・・・・消えた。
「成功したわ。まったく1日に2回も使わされるとは」
「悪い悪い。でも、ま、全員が無事でよかったな」
「私は今回すごく空気だったような気がする・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・気のせいだ」
〇
「おはよー、井野宮君ー」
「真苗!真苗だよ!」
「なにそのテンションー!?どうしたの?」
「いや、なんでもない。会うのが久々だなぁと」
「毎日会ってるじゃない」
「あ、そうだったな・・・・ははは」
どういえばこいつ、あの間の記憶がないんだもんな。
「おはよう、井野宮、真苗」
「おはよう、井野宮君、真苗君」
「おはよー、木野白さんに志野野辺君」
そうか、まわりのやつも真苗のことは思いだしたんだな。なんかようやく俺の日常って感じだ。そして気になるのが、俺らは学校にいる。だけど学校って壊されたはずじゃなかったっけ?
「それはたぶん結界のおかげじゃない?」
「あぁ、結界が張られてたのか。だから学校が壊されたことはなかったことになったと」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?俺今だれとしゃべってるんだ?
「何?その驚いたような顔は?」
「モラルー!?なんでお前がここに!?ていうか制服もうちの高校のやつだし!」
「あれー?井野宮君知らないの?昨日から留学生としてきたじゃない」
「そうだったっけかー!すっかり忘れちまってたよー!」
俺はモラルを強引に引っ張り、真苗たちに聞こえないように
「どういうことだ」
「すこし記憶を改ざんしたの」
「なんのために!」
「私も学校に行きたかったのよねー。それだけ」
「それだけで俺の日常が壊されてたまるかー!」
「井野宮君ー、モラルちゃんー。学校遅れるよー」
「はーい、行きましょう。井野宮君」
何この笑顔。なにこの性格。キャラ作ってんじゃねぇか。まぁ、でもたいして驚きはしなかった。俺にしてみたらこの経験も2度目だ。
だからといって日常が荒らされるのは慣れないけどな。
第2章終了です。
次は第3章なわけですが・・・ここまでこれたのも皆さんのおかげです!
ありがとうございました!
タイトルは飛翔。
でわ