第10話 ANGEL
おかしい・・・・世の中がおかしくなったのは今に始まったことじゃないが、真苗が消えた。消えたんだ存在ごとな。なぜか俺以外のみんなが真苗の存在を忘れている。
「意味がわからない」
とは言うものの俺は誰に聞けばいいかは分かっていた。俺は授業が終わり、帰り支度を終えると急いで家へ走り出した。あいつに聞けばわかるに違いない!
〇
「女の子の部屋か・・・・・。自ら行くのは初めてだな」
そう俺は今、俺の隣の部屋。モーラの部屋に訪れていた。チャイムを鳴らす。
ピンポーン
「はーい、ってあんたかよ」
「その反応はひどいとは思わないか」
「昨日のあんたの方がひどいわよ!!」
そう、モーラは昨日肝試しに誘ってもらえなかったことについて怒っているのだ。別に誘わなくていいかなと思ったけれどやはり興味があるらしい。
「悪かった!次はちゃんと連れて行く!だから相談にのってくれ!」
「相談?まぁ、中入れば?」
俺は部屋に入れさせてもらう。一応、寮なので広いということはないのだが、なぜか俺の部屋より広く見えた。そして甘いにおいがする。
「で、相談って何?」
俺が座布団に座ったのを見計らってモーラが聞いてくる。
「真苗って知ってるか?あれ?モーラはまだ知らなかったっけ?」
「モラルでいいわよ。モーラ・ルーレトだからモラル。真苗・・・・あのトロそうな女ね」
「正解。あいつがいなくなっちまったんだよ。いや、存在ごと消えたんだ」
俺は昨日あった経緯を全て話し、今日のことも話した。
「ひとだま・・・・・ねぇ・・・・・」
「なぁ、どういうことなんだ」
「2つ可能性があるわ」
「お、ほんとか!」
やはりこいつに聞いて正解だった。
「一つ目は職業の戦いに巻き込まれたか」
「ジョブ?」
「あの、色縦師とか錬金術師とかをまとめてそういうの」
そういえばあの錬金術師、戦いに巻き込まれた人間はいなかったことになるって・・・・。まさか!
「待ちなさい」
「でも!」
「まだ、可能性があるわ。まず、それは結界を張っていた場合のみ適応されるのよ」
「じゃあ、あの学校には結界がなかったのか?」
「あたしにはわからない。結界は死人を増やさないためのまわりに張るバリアみたいなものだからその必要がある場所にしか使わないと思うの」
「・・・・・・・じゃあ、もう一つの可能性は?」
「死霊使いの可能性ね」
「ネクロマンサー・・・?」
「死霊使いよ。ひとだまということからもう一つはこの可能性ね」
「じゃあ、さっさとそいつを探さないと!」
「いや、厄介だわ・・・・。ひとだま。すなわち人の魂の抽象化が行えるのは上位ランクの死霊使いだけ」
「ってことはもしネクロマンサーが相手だったら・・・・・・」
「こっちが死ぬかもしれないわね」
上位ランク・・・・・上級か・・・・。色縦師が確か一番弱い初級だったはず・・・・。だとしたらあの何倍強いやつがでてくるんだ?
「でもネクロマンサーはなんで人の存在を消せるんだ?」
「人を死界に連れて行くからよ。強制的に死界に連れて行かれたものは存在も消えるわ」
「死界から連れ戻すことはできるんだよな?」
「手遅れだったら・・・死んだのと同じ扱いをされるわ」
「!?だって存在ごと消えてるのに・・・・・」
「死界に連れていかれて1週間がたつと存在が戻る。でも事故で死んだことになるの」
「じゃあ、急がないと!」
「待ちなさい。死霊使いはたぶん夜にでてくるわ。その前にあなたに聞きたいことがあったの」
聞きたいこと?そういや、俺もモラルに聞きたいことがあったな。ついでに聞いておくか。
「俺もお前に質問がある」
「あんたからでいいわよ」
「お前はなぜ狙われている」
そう、これは何回聞いても無駄だった話。しかし俺の友達に被害がでたんだ。これは俺にも知る権利があるだろう。
「やはりもうそろそろ話さないといけないか・・・・」
何かを決心したようにモラルは話しだす。
「私は『天使』。っていったらあんたは信じる?」
「天使・・・・・・・・」
最近アニメや漫画でよく見る天使か?俺が経験した世界ではそんなものいなかったけどな。
「あなたが想像してる天使とは違うわよ。『天を使う』という意味なの」
「天を使う?どういうことだ?」
「次元移動。あんたも見たでしょ?あれは天を使うものにしか使えない」
「つまり、その職業のやつらも使えない力を天使は使えるということか」
だんだんわかってきた。自分たちでは手に入れられない大きな力が欲しかったのか。だからこいつは狙われている。でも・・・・・次元移動なんて何に使うんだ?そんな重要とは思えない。
「次元移動はその名の通り次元をも超越するテレポートなの。だからこの世界。この世以外の場所にもいけるのよ」
「例えば妖精の国とか?」
俺はふざけてみた。しかしモラルは深刻にうなずき・・・・・
「いけるわよ。妖精の国」
「!!!!」
「その変わり天使にはそれぞれ一つしか力が与えられないの」
「じゃあ、お前は移動の能力をさずかったっていうことか」
でも正直まだうさんくさいと思っていた。最近あちこちで天使とかが出てくる物語があるので、親近感というか、なんかいまいち緊張はしなかった。
「なんかしっくりこねぇな。うわ!マジで!?っていう新鮮さがないというか・・・」
「それはあんたが見てる漫画とかにいっぱいでてくるからでしょ!あたしは本物!!」
「いや、本物なのはわかってるよ。次元移動も一度見たしな」
そこでモラルも俺に質問があったような・・・・ということを思い出した。
「そういえばお前も何か質問があるんじゃないのか?」
「あぁ!忘れてたわ!」
やっぱりな。
「じゃあ、質問するよ。あんたの言霊って何?」
絶対くると思った。俺が経験した世界とは違うなとは思っていたからそんなに驚かなかったよ。まぁ、せっかくだし話しておくか。
「俺の言霊っていうのは、言葉に意味をのせたものなんだ」
「意味?」
「そう。言霊という技があるんじゃなくて、言葉に意味をのせたものを言霊と呼ぶんだ」
「で、それを実体化させるのがあんた、言霊使いの能力」
「その通り。だから意味の力が大きければ大きいほど言霊の力も大きくなる。例えば相手をすごく殴りたいと思って意味をのせると通常より強い言霊がでるんだ」
「物騒な話ね・・・・。確か言葉を聞いた人は誰であろうと言霊の力がでちゃうんでしょ?危険すぎね、あんたの能力。でも、ま、わかったわ」
そこで話は終わった。俺はモラルにお礼を言って、自分の部屋に戻って行った。そこで今日の準備をしようと思ったのだ。モラルが狙われているなら今日学校に連れていくわけにはいかない。今度は連れて行くと言ったけど守れそうにないな・・・・。
「さーて、今日もコンビニで弁当だな」
もうそろそろ寮長の料理が恋しくなってきた。でも晩飯の時間の時には部屋をでないと間に合わない。
「寮長自体にあんま最近会えてないからな。晩飯、なんの弁当にしよう・・・」
俺の思考はコンビニの弁当でいっぱいだった。頼れるものはだれ一人いない。自分だけだ。あまり目立たないように今回は終えるさ。だって俺は脇役だからな。
今回のタイトルは天使という意味です。
天使は最近あちこちで出てきます。
でも決してありきたりにならないように書いていきたいです。
こう・・・あっ!と驚くようなね・・・・・・できなかったらすみません・・・。
でわ