火事場の作戦
俺=仁
私=麗華
二人の視点です。再びアクションに戻ります。今回の話で仁の親友『博人』の過去が明らかに。少しだけいやらしい表現も含まれています。(一瞬だと思いますが…。)
俺が倉橋会社に転勤して1ヶ月。ようやく俺も分解作業から解放されていた。プルルル。オフィスの電話を取る。『大柳様。博人とおっしゃる方がご面会を求めています。』「わかりました。すぐ行きます。」俺はロビーに向かう。「よう。仁。」博人だった。そういや博人の私服は初めて見た。「最近どうよ。ストーカーの件は?」博人は俺に問う。「仕事は慣れたがストーカーのはまだな…。」「そうか…。まあ今手開いてるか?」ちょうど帰り間際だったので博人の誘いに乗った。
「話って何だ?」いきなり博人の拳が飛んできた!?俺は拳を受け止め「いきなり何をするんだ!?」「そうか…やはりお前が大柳仁平か。」何言ってんだ?こいつ。「問答無用だ。俺かお前か。どっちが翔太を倒すにふさわしいかどうか勝負しろ。」翔太だと!?翔太の名前を聞いた俺は構えた。博人は手強い!?凄まじい拳からボディスラムを喰らわされる…。だが俺も負けられない!俺は博人に膝蹴りを喰らわせ、続けて頭突きを喰らわせた。勝負は俺の勝ちだ。「参った。翔太はお前に譲る。」「どういう意味だ?」俺が聞くと博人は静かに語り出した。
「6年前、俺は族のヘッドだった。」「博人が!?」「あの時に俺は新たな刺激が欲しくてな、竹本の誘いにのった。」「えっ!?」「実はあの夜逃げに俺もいたんだ。」「博人が!?そいつは知らなかったな…。」「無理ねぇよな。俺は目立つ存在じゃなかったからな。まあ俺はあの時逃げ出したんだ。」「逃げ出した?」「ああ。どうもあの仕事に裏があるように思えてな…。俺はそういうとこに勘が働くんだ。」「っで…その後どうしたんだ?」「逃げ切った。だがそれが奴らにバレて家族同然だった族仲間が全員翔太の野郎に殺されたんだ。」「殺された!?」「そして俺は奴に復讐を誓った。俺は会社員になり今でも奴を待っていた。春野にも頼んで奴を調べてたらお前が関与してることを知った。」「そうだったのか…。それでいきなり襲う真似を。でも何で今になって?」「それは明日、真理子さんが働いている料亭に翔太が来るからだ。」「何!?」「翔太共が倉橋会社と打ち合わせすると聞いたからだ。」「それで今日、俺を尋ねたって訳か。」「これでわかったよ。翔太を倒すには仁を倒さないとならない。だが俺は負けた。奴はお前が倒せ。」「いや…。翔太は博人に譲る。」「しかしお前…。」「確かに俺も兄貴の希望を奪った翔太は憎い…だが俺は奴とは男としてケリつけたいだけなんだ。」「お前…いろいろ考えてんだな…。俺と同い年とは思えないぜ。」「さあな…。生きてるとそう思えてくるだけだ。」「さあ。帰るか。」博人がそう言うと時刻は19時にさしかかった。俺は博人を車に載せて一緒に帰った。「明日10時に春野の家に来てくれ。」明日翔太が…。予想もしてなかったな…。
次の日。俺と博人は春野の家に集まった。「実は明日ね。倉橋会社と佐々木財閥が打ち合わせにこの料亭を使う。」「竹さんもいるのか?」俺は竹さんが気になった。「リスト登録されてるわ。」「そうか…。何であの時に俺達をはめたのか…俺は聞きたい。」「むずいと思うぜ。」博人が深刻そうに言う。「お前参加できんのか?」「無理だな…。ましてや俺は研修生だからな…。でも義姉さんに頼んで予約を入れてもらうようにしてみる。」「わかったよ。作戦実行は夜だ。」こうして博人と別れ、俺は一旦帰宅し、義姉さんに話をつける。「予約を入れたいんです。」「予約?どうしたの仁君?」「実は…倉橋会社の上の人間の仕事を見てみたいと思って。」翔太の名前はあえて出さなかった。まさか夫の仇がいると知ったらどうなってしまうか…。「お願いします!」俺は両手を合わせて必死に頼みこんだ。「仁君が仕事に熱心なのは知ってるわ。だから掛け合ってみる。」交渉は成立した。俺は戦いに備えて昼寝することにした。
夕方17:30。俺は自宅で博人と合流し、車から赤い装甲を出して着替えた。18時。街に警官が張り込んでいる。俺達は警官に見つからぬように行動する。作戦実行だ。俺達は無事に料亭に入った。打ち合わせが行われている部屋の隣の部屋の隙間から奴らを覗きながら探す。「いやっ!放してください!」麗華ちゃんが男に抱きつかれていた。「よいではないか。よいではないか。お嬢様。」麗華ちゃんに抱きついていたのはAV高田(本名は高田で女性社員が影で呼んでるあだ名)。よいではないかって…時代劇かよ…今時流行んねーよ…。「さすがお嬢様。スタイルもいい~。」あの変態AV野郎!!麗華ちゃんの胸触りやがった!「やっ!」嫌がる麗華ちゃんをお構いなしで触り続けるAV高田に俺は怒りを覚える。まさかあいつがストーカーではないのか!?「やめろ仁。気持ちはわかるがここで暴れたら計画は潰れるぞ。」博人の説教で我に返る。俺の握り拳から稲妻が…。それからAV高田は麗華ちゃんをどこかへ連れ去り、義姉さんはゆっくり尾行?した。「麗華ちゃんは真理子さんに任せとけ。にしても翔太も竹本もいなかったな…。」いないことに疑問を持った瞬間だった!?「貴様!?気でも狂ったか!?」その声の主を見たら…「心配いらん。証拠は残らん。」翔太だった!?兄貴の仇…6年前、俺の人生を変えた男…佐々木翔太。俺達は翔太のところに行くと「ほぉ。とんだ顔合わせだな。」翔太は驚きもなかった。「決着だな…翔太。俺はお前に借りを返さないとならない。」博人が構えると翔太は笑い出した。「何がおかしい!?」「いいのか?ここで油を売ってて。あの麗華という女…早く救い出しに行かないと高田と一緒に焼け死ぬぞ。」翔太が言った瞬間…「火事だぁ。」と声が聞こえた。「仁。ここは任せてお前は麗華ちゃんと真理子さんを救い出しに行け。」「わかった。」翔太は博人に任せて俺は廊下に出る。激しく燃えてる…これじゃあ火の海だ…。佐々木財閥のガードマンが襲いかかる。俺はガードマンを倒しながら麗華ちゃんと義姉さんを探す。途中で電気が落ちて来て前転してよけて、他に逃げ遅れた人に声を掛けて誘導しながら必死に探す。俺の前に三人の男が囲む。「大柳仁平だな。我らは翔太様の腕。覚悟。」邪魔な男達はメリケンサックだの棒だの使い、少してこずったが稲妻の拳で返り討ちにする。火が吹いている中俺はあの男を見た!?「竹さん?あんた竹さんじゃないのか!?」俺は竹さんの後を追った。
私は高田さんに引っ張られていた。完全に火に囲まれていた。「何であいつ!この女をつれて来いなどと…そうだこのまま独り占めしちゃうかグヘヘ。」高田さんはいやらしい顔して私を見て来た。さっきも体を触られて怖くて、気持ち悪かった。その時。高田さんは男に銃で撃たれた。「きゃあ!?」思わず悲鳴をあげる。そして仁さんが男を抑えつけて「竹さん…。あんた何でこんなことを…。」「腕を上げたようだな。大柳殿。」竹さんという男がそう言うと仁さんを投げ飛ばし(仁さんは受け身をとった)窓を破って姿を消した。「大丈夫か!?麗華ちゃん。」仁さんが歩み寄る。私も歩み寄ろうとした時!?「何で?何でそのストラップを仁さんが…。」姉が姿を消したあの日、現場に落ちていたのと同じストラップを何で仁さんが…。「いやっ!触らないで!近寄らないで!」私は仁さんが差し出した手を叩いてしまった…。まさか姉の失踪に仁さんが絡んでるのでは…。