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それぞれの崩壊

俺=仁

私=ドラちゃん

二人の視点です。

 仁が東京に行ってから3日となった。私はいつもの河原でいつ帰ってくるかわからない仁を待っていた。「あっ。武蔵君。」私の前に現れたのは童顔の武蔵君。彼は童顔から女の子達から可愛がられている。「今日も仁帰って来ないんだね…。」彼も仁を心配していた。武蔵君は小学校の頃いじめられてたところを仁に助けられ仁の強さに憧れを持ち仁と一緒にサッカーをするようになった。仁はサマーソルトキック、武蔵君はダイビングヘッドが得意で二人揃ってサッカー最強ともいわれていたほどだった。「俺買い物あるから仁が戻ったらまたサッカーしようって言ってくれよ。」武蔵君は行ってしまった…。仁…。私待ってるから…。仁は私の片思い。昔よく男子にからかわれたときによく助けてくれて、サッカーをしている姿はイキイキしててカッコ良くて、姉さんが仁のお兄さんと結婚した時はいつでも仁に会えるという期待感を持ち仁に接してきた。私にとって白馬はいないが王子様で未来の彼氏~。そんなことを考えていると黒い服を着た仁が歩いていたから「仁~。」と声を掛けたら仁は倒れてしまった…。


 ふと目が覚めると見慣れたような部屋が…。「仁~。」ドラちゃん?「仁~。まったく心配したんだから。」ドラちゃんは俺に抱きついてきた。「ここは?」少し戸惑っていると「よっぽど疲れたのね…。」真理子さんいや義姉さんが冷たいレモン水を持ってきた。「あっ!そうだ…。」俺はポケットからマリモちゃんストラップを取り出した。「それって!?大二郎さんが持っていた…。」義姉さんは驚いて口を開けたままになった。まあ無理もないか…。

 今から3時間前ほどだろうか…。俺は目を失明した兄貴を担いで東京から横浜目指してひたすら歩いていた。もう3日ぐらいは経つだろう …。眠い…、腹減った…、腕が痛い…、膝も痛い…。きっと兄貴は眠い…、腹減った…、両目が痛い…、真っ暗で何も見えない…。「仁…。お前はこれからどうするんだ?その脚ではサッカーはできないとおもうが…。」長い沈黙から弱りながら口を出したのは兄貴。「俺は…。」わからない…。何もない…。「俺達は罠にはめられた…。もう逃げることはできない…。」兄貴も今絶望状態だ。「何言ってる…兄貴には家族がいるだろ!もう少しだ…気をしっかり持て…。」兄貴も俺もまだ未成年だ…。俺達には帰りを待っている姉妹がいるんだ。海岸にて少し休憩することにした。「波の音だけは同じだな…。俺にはもう闇しかない。光と闇が実在しているのならここで闇に飲み込まれてもいいかもな…。」「演技でもないこと言うな…。」言い返してみるが光を失った兄貴にそれ以上は言えない…。「いたぞ!大柳兄弟だ。殺せー。」くそっ!?追いつかれたか…。「仁…。無理だ…。俺を置いてお前だけ逃げろ…。」「兄貴を置いて逃げられるわけないだろ!ここで待っててくれ。」俺の体が限界を訴えるが戦えない兄貴に変わって俺が戦う!俺は激痛が走る腕に稲妻を込めて追っ手に向かっていった。5人くらいだ。まず2人の間を挟んで両足でキック。続いて3人目に飛び込んで腹部をパンチ。そのまま4人目の頭を鷲掴みにし地面に叩きつける。最後の5人目は海に投げ飛ばした。「はあはあ…。うぐっ!?」全身に激しく激痛が襲ってきた。「いたぞ!」新たな追っ手が来る。ここまでか…。兄貴は立ち上がり「仁!磯部の家の事、あとは。」兄貴はマリモちゃんストラップを俺に投げつけて「これを真理子に渡してくれ。」そう言うと兄貴は追っ手の末端中に突っ込み追っ手を道連れに海に転落した…。「兄貴ぃー!!」俺は兄貴が落ちた海を見てただ絶叫するしかなかった…。


 「兄は、大柳大二郎は、最後まで勇敢な男でした…。」義姉さんは最後まで話を聞いた後涙を流していた。ドラちゃんもただ黙っているしかない様子だった…。「本当にあの人…自分勝手な人…。」義姉さんは涙声で呟いた。これ以上苦しむ姿を見ていられなかった俺はとうとう俺の意志を言った。「泣かないでください。今度は俺が義姉さんとドラちゃんを守ります。絶対に寂しい思いなんかさせません。」言った後に俺は義姉さんを抱きしめていた。やがて義姉さんはすすってから泣き止んだ。義姉さんは両手で顔を覆っていたのが可笑しくて笑ってしまった。「仁君もお兄さんと同じで意地悪ね。」義姉さんは笑っていた。


 次の日。まだ夏休みだったが俺はサッカー部を退部した。全身の激痛を病院で診てもらった結果、腕はアザ程度だったが、膝は骨折し全治3ヶ月と診断された。治ってからサッカーはできると思うが1日でも練習を欠かしたことのない俺にとっては衝撃的でもあり、衰えを恐れてしまったからだ…。サッカー部を辞めてからは今までいた女子の野次馬はあっという間に消え去り、特にやりたいこともなくて武蔵からも心配された。ドラちゃんからは何度も説得されるが正直ウザかった…。夏休みの宿題はあっという間に終わらせておいてパートと主婦業で忙しい義姉さんを手伝うべく俺はブックオフでバイトを始め、主婦業も積極的に手伝った。「無理しなくてもいいから。」と義姉さんは遠慮がちに言うが、俺が磯部の家に住みついた以上楽するわけにもいかないからだ。兄貴は幸せだったんだろうな…。と薄々兄貴を思い出していた。

 夏休みだったにも関わらず仁は忙しさに振り回されている気がするのは私だけかな…?仁が帰って来たけど義兄さんは亡くなり、仁は大好きだったはずのサッカーを諦めサッカー部を退部してしまった。原因は全治3ヶ月の膝の骨折だった。私はあの輝いていた頃の仁に戻ってほしくて何度も説得するものの仁は全く聞く耳もたなかった…。仁が私と姉さんの為に自分をなげうってくれるのはいいことかもしれないけど無理だけは本当にしないでほしかった。そんなある日、姉さんが「お腹が痛い!」と苦しみ病院に連れて行った結果、妊娠していたのが判明した。3ヶ月。つまり義兄さんと姉さんの子供。仁は「おめでとうございます。俺は叔父さんになるんだな~。」仁のこんな笑顔久々に見た気がした。「私は叔母さん!何か嫌な呼び名~。」久々に仁と姉さんと冗談を言った。


 3ヶ月後、俺達の生活は崩された。秋に入ってきた始業式前日だった…。「失礼します。警察ですが大柳大二郎さんはこちらにいますか?」警察だ!?兄貴を捜査しに来たんだろう…。「いません…。」義姉さんはおどおどと答える。「嘘つけ!いるのはわかってるんだ!」急に警察の口調が荒くなる。ドラちゃんが前に出て「帰って!妊娠なのよ!」警察に負けじと言ったがドラちゃんはドアから投げ出された。俺は頭に血が登り「兄貴は死んだ!帰れ!」ついに言ってしまった…。「兄貴って…お前!大柳仁平か!署まで同行してもらうぞ!」「逃げて!仁!」ドラちゃんは警察を抑えつけて叫んだ。俺は窓を開けて走って逃げ出して行った…。いつ終わるかわからない逃亡を俺は図ったのだ…。

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