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青白い燐光の舞う街

「おはよう、ヨシダホー。弁明を聞こうか」


 朝。ルアネが特殊作戦司令部に座ると、机に肘を置き指を絡め真剣な顏でつぶやいた。俺に聞こえている事を理解しての行動だろう。ぶっちゃけ心当たりがあり過ぎる。

 朝起きた曹長は砲塔の外でノピにルアネを呼びに行かせた。この時点で、いや実は魔力を動かしていた時にはバレていたのだろう。


「……はぁ。ヨシダホーは寝ないのか?」


 変に隠すのは無理だと正直に魔力をコネていたと白状すると、ルアネは渋い顔をしていた。あれこれ禁止されたのだから仕方ないと思う。

 睡眠は必要なくなった。装填や換装、魔力凝縮で時間は潰せるが、どうしても飽きは来る。夜中の爆発や砲撃等の音はうるさいらしく、街の住民は何とか静かにしてほしいようだ。


「幸い、ヨシダホーの異様は誇張して各方面に通達している。しばらくは撃たなくて良いはずだ。魔力の操作……凝縮だったか? の慣熟に費やしてくれ」

「イエスマム」

「……いつも、この魔力量で訓練しているのか?」

「この量が最小なんだ」

「そうか……早く慣れてくれ」


 ルアネからは見えないかと思って凝縮させていたら目線が凝縮させている魔力へと送られていた。司令部にいると分かるみたいだ。後で聞いたらノピも圧迫感のようなものを感じるらしい。凝縮が甘く漏洩しているのだそうだ。


『漏洩した魔力を積層魔力回路へ再循環させますか?』


 お? そっちでやってくれるならありがたい。慣れるまで頼む、と承諾する。

 俺が司令部を囲う高さの魔力回路で凝縮し、他の積層魔力回路で再吸収から循環させてくれるようだ。ルアネもホッとしたようで……圧迫感のようなモノは薄れたか?

 凝縮に失敗した魔力が再循環されるのならば、失敗を恐れず凝縮ができる。


「次の作戦は未定だ。ノピが昼から来る。大人しくしてるんだぞ?」

「おわっ!? ……いってら~」


 早速凝縮に失敗し、ルアネが三白眼でジト目を送ってくるが気にしない。ノピが来てくれるようだ。少しは見せられる形にできるよう練習していこう。


 ふわ……ふわ……


 ん? 気のせいか視界がチラつくな? 2回目の凝縮失敗から積層魔力回路の周りに青白い燐光が漂い始め、風に流されていく。

 丘から教会を通り過ぎ、兵士たちのグラウンドを越え東門へ。どうやら街中を半時計周りに滞留するようだ。積層魔力回路を循環するんじゃなかったのか?


『積層魔力回路は現在地より東門までを全長とする複数の円形回路の集合体です。

 4層から成り、それぞれ別の機能が発現します。

 全機能を発現するには魔力1000が必要です。現在 2 』


 えぇ? 街サイズの回路だったのか……俺の周囲だけかと思ってた。東門どころか5メートル先の回路すら感知できないのに。全機能の発現には程遠いな。ぁ、また失敗した。


『一定回数魔力を扱いました。

 魔力感知範囲が広がります。

 凝縮成功率も上昇しました。』


 お、1メートルほど範囲が広がった感じがする。範囲は狭いのに青白い光を視認できるの何でだろ?


『街の住民にも視認できるよう散布しています。現状、貯め込みすぎると爆発しますよ?☆』


 ……がんばって魔力を制御しよう。

 ノピが作戦司令部でラッパの練習をしている間も、エルンスト1曹が青白い燐光を興味深そうに見ている間も凝縮の練習をしていた。


「今日は、どこか悪い?」

「ん? のわっ!? ……魔力を1箇所に集める訓練をしてるんだ。できるようになるといいらしくて」

「……ん、むずかし」

「そういえばノピ2等兵は隊長から課題を出されているのですね」

「ん、練習する」


 当直の1曹に断り、ノピはしばらく課題曲を練習するようだ。何かテンポの早い曲だな? ぁ、これ『速足行進』だな。縦隊での行進時の……。


『命令に準じた行動は補正されます。』


 ヒィンと小さな音が響く中、魔力回路を流れる青白い燐光の流れが速くなった。突風でも吹いたように。ぅぁ、留めようとする魔力がガンガン流れて行ってしまう。凝縮しようとする傍から霧散する魔力にアタフタしていると、視界が暗くなってきた。


『魔力が急激に欠乏しました。休眠状態へ移行します。

 作業状況を保持します。魔力凝縮数2、消費魔力13、循環係数4』


「……司令部の照明が少し暗くなった気が、気のせいですか」

「? ヨシダホ、寝ちゃった?」

「彼は、寝ないのでは?」

「いつもずっと話してるのに、何か変。起きてる?」


 ノピ、俺の独り言まで聞こえてたのか……。ダメだ、砲身も旋回もできない。勝手に魔力がギリギリまで持っていかれて怠くて仕方が無い。ちょっと休むか……。








「おはよう。ヨシダホー起きてるか? ……今日も反応なし、か」

「うぃにょっ」

「ノピ……ハシゴを飛び降りたら危ないぞ?」

「だいじょぶ。おねぇちゃん1人? はい、朝食(これ)

「お、ありがと」

『一定回数魔力を扱いました。

 魔力感知範囲が広がります。

 凝縮成功率も上昇しました。

 一定回数魔力を扱いました。

 魔力感知範囲が広がります。

 凝縮成功率も上昇しました。

 一定回数魔力を扱いました。

 魔力感知範囲が広がります。

 凝縮成功率も上昇しました。』


 ルアネとノピの声に意識が覚醒していく。積層魔力回路の凝縮した魔力がいつの間にか3箇所に増えている。感知範囲も教会程度の範囲へ広がり、魔力回路の形もおうし座の「ししのおおがま」♉のような

モノに見えている。

 ノピから朝食を受け取ったルアネが特殊作戦司令部の机で食べ始め、ノピは壁に手を当ててからラッパの用意を始めた。街の住民も行動し始めており、朝の喧騒が耳に届いている。


 起床ラッパ。いつもより大きな音なのは俺を起こすためか。起きてるんだがな。


『おはようございます。兵員との再接続を完了しました。命令に準じた行動は補正されます。』

「おはよぅ」

「!? 起きた! ヨシダホ!」

「ヨシダホー。今回の()()について説明してもらえるか?」


 ノピに聞こえない程度の声量で、ルアネが口元を隠して聞いてくる。ノピと他愛もない話をしつつ、ルアネと積層魔力回路の大きさや凝縮をボカして伝えていく。いつもの俺ならば、こんがらがる所だ。ノピのラッパで補正されたのだろう。上手く使えば兵員でも(だま)せそうだ。だませているよな? ルアネは去り際に「少し調べてみるか」と言っていた。ヤベェどこかミスったか? 言葉尻を()らえるのは感心しないぞ? 忘れてくれていいんだぞ?


「えっと、おねぇちゃんは心配してたよ? 史料閲覧室にもこもってたし」

「こもってた? ノピ。俺が応答しなくなってから何日経った?」

「んと……1,2,3,4日経った」


 4日かぁ。司令部に目新しい装置? が複数置かれているし、砲塔内の配管が増えている。いつに間に作業したのか。全然起きなかったんだなぁ……。

 3つの凝縮した魔力が大きさを変えながら維持されているのを見ながら、朝日を浴びる街へと流れていく青白い燐光の行方を追うことにした。


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