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同時発射数 X 連装化 X 充填魔力量

 夕方。西日の当たらない丘の上。改修を終えた砲塔は各部正常に動いていた。装填すると特殊作戦司令部の徹甲弾が揚弾されていき、撃たずに換装すると元の位置に戻っていく。試しに徹甲弾の上に紙を載せると別の徹甲弾が揚弾されていった。どう判別しているのだろう。

 連装化によって砲身は2本になり、マーカーも2つに増えた。1基2門だが2つのマーカーは重ならず、砲身は上下移動のみで横移動は砲旋回で行う。圧倒的な火力で携行者を消し飛ばす様を見て、火力だけではダメだと気づくのは遅いかもしれない。

 ノピたちを見送った丘で、どこからともなく現れたウーベェ3曹は砲塔内に入ってきた。特砲隊の一員なので許容しよう。黒髪黒目たんこぶ幼女のたんこぶは治ったようだが、生傷が増えている。疲れているようで徹甲弾の上でダラリと四肢を垂らして寝始めた。

 3曹の手から滑り落ちた報告書は、肝心な内容を書く前で止まっておりミミズが()()()()()ような字が続いている。起こすのも何なので日課の装填や換装をせずジッとしておこう。


『隠蔽率が上がりました。衝撃耐性が上がりました。

 発射時の音の伝達を遅延させます。

  ウーベェ を兵員に登録しますか?』


 音の遅延。着弾まで音や振動が伝わらなければ察知されないだろう。隠密性も上げるべきか。ウーベェ3曹の登録をしても魔力も少ないし司令部にいる時間も短いように思うんだよなぁ。


『視認範囲内の兵員の視界情報は共有できます。』


 おおっと? 風向きが変わったぞ。偵察や斥候の3曹が視界を確保してくれたら照明弾を維持しなくても良くなる。奇襲前の敵に感づかれる事も少なくなるだろう。


 ウーベェ3曹を登録して視界を共有してみる。真っ暗だ。徹甲弾に押し付けた頬に押されウーベェ3曹のまぶたが動くと、俺の視界に光が差した。まつ毛邪魔だな……瞬きが反映されるのは仕方ないか。でもこれで通常時の有効射程が2倍になった。ルアネに東の山を削る許可をもらえば、さらに直線距離は伸びそうだ。






『隠蔽率が上がりました。衝撃耐性が上がりました。』


 朝日を浴びる頃。いつの間にか砲塔を覆うように(つる)が伸びていた。いずれ完全に覆われてしまいそうだ。少し旋回してみたが蔓は動きを妨げずに動き、砲身にまで達している。


「んん……あれ、ここ……あっ! 朝までにって言われてたのに寝ちゃった!」


 ウーベェ3曹が起きたようだ。慌てて砲塔から駆けていく。ラッパも聞こえてきた。今日も安定した音で締まらないなぁ。装填と換装を試してみたが、蔓は妨げにならない。確実に先制攻撃を図れるようになっていく気がする。





「で、山を撃ちたいと?」

「そうだ」

「はぁ……試射は、1発だぞ?」


 昼前に現れたルアネに相談して溜め息をつかれたけども気にしない。関係各所に連絡してもらい、数名の見学者まで現れたが撃って良いのだから我慢できる。ぁ、魔力はもらいまーす。

 マーカーを山の中腹に向け、魔力を充填していく。今日は曹長を除いた特砲隊の面々が司令部で俺の視界の映像を見ながら射撃を待っている。

 前回、40の充填でクレーターができてしまったので30に抑えておく。徹甲弾だし流石に山はぶち抜かないだろう。


 ォン……ド―――ン!


 今までと違う射撃音で徹甲弾が()()飛んでいく。弾速も十分、マーカーの収束も十分、込めた魔力も十分。横一列に飛ばず2発ずつ2列に飛んだからか、山の中腹を音も無く貫通し……あれ? 爆発しないのか? 榴弾じゃないから爆発しないんだっけか?


「ヨシダホー? 当たった……か?」

「当たった」

「貫通、してますね……」

「デッカイあなぁ!」

「にゃっ、音が、遅れてきた……!」


 雷の轟音が遅れて響いた。体感5秒は遅れてくるようだ。音を遅らせた分、音量が大きくなってしまうのかぁ。砲塔内に音が響いてしまうのは残念な仕様だが、着弾後に響くため次弾装填までは安全か。まぁ射撃地点の誤解を与えるのは良いと思うことにしよう。

 山肌にサイコロの4のような穴を見ながら、予想外の貫通力に口の端の引きつりのような感覚を覚えた。


『あ、徹甲弾は起爆しますよ? 魔力を充填しましたからね☆』

「え”?」

「どうした? んなぁ!?」


 カッと青白い光が東の山の向こうから放たれると、穴の開いた山肌周辺がゴッソリと街の方へ吹き飛ばされた。

 曇天のような薄暗さの後バラバラと石つぶてと土煙が降り注ぎ、街は阿鼻叫喚に包まれる。砲塔の扉を閉めてすぐガン、ゴンと砲塔にも当たるが、俺の方が硬く問題は無さそうだ。てか徹甲弾じゃなくて徹甲榴弾じゃないか?


『地面に刺さっちゃったので、爆風が後ろにしか飛ばなかったようです。魔力を充填する位置や形状で効果は変わりますよ☆』

「……だそうだ。そうなのか?」

「知らんぞ? ()()は1週間は後だぞ。散らかしたのだからな?」

「スマン」


 充填する位置と形か。今まで特に考えずに充填してたな……。通常は榴弾でも徹甲弾でも爆発するのかな? 砲弾の先端に充填すれば貫通力、後端ならば初速だろうか。発煙弾や照明弾は持続時間かな? ポンポン撃てないから試せるときに試してみよう。


「夜中、撃つのは禁止だぞ?」

「……」

「ガチャガチャ音を立てるのも禁止だからな」

「……」

『命令に準じた行動は補正されますよ。』


 何でルアネに加勢してくるんだよ。まぁ夜間は迷惑だもんなぁ。揚弾ならバレないだろ。


「司令部には交代で当直勤務だ」


 八方ふさがりだった。監視がいては砲塔すら回せないし。ノピは当直勤務に上番できないらしい。俺の癒しは無かった。









 初日の当直は曹長。ルアネも書類仕事を終えるまで残っていたが戻っていく。他のメンツは早々に戻った。


『いいんですか? 砲塔外だけを充填させても』

「迷惑はかけてないからな」

『隠蔽率が上がりました。衝撃耐性が上がりました。』


 グガッ、ゴゴとイビキが響く司令部の外、砲塔を覆う蔓が成長し夜闇に俺の存在を隠していく。長い年月放置された感じになってる気がする。もっと隠蔽率が上がったら丘と同化するのだろうか。

 耐性という要素もあったな……。今のところ衝撃耐性くらいだが、効果も取得条件も不明だ。ジッとしているのも苦痛だし、何かしたいな。


『初日から問題を起こしたら制限をかけますよ?』

「ぬぅ……」


 ルアネたちの言う禁止と、ヘルプさん(仮)の言う制限は重みが違う。全く動けなくされては困るし、充填した魔力をコネコネしてみるか。


 ドゥン……『凝縮を試みた魔力が魔力回路外縁より漏洩しました。』

「んん~? 気のせいか」


 危ねぇ。魔力コネコネめちゃくちゃ難しいんだが。ほんの少し動かそうとしただけで爆発したぞ(ボンだぞ)。曹長も起きてしまったし……再び寝るようだ。良かった、朝まで寝ていて欲しい。

 さて、いきなり問題に直面してしまった。充填している魔力は10だからと全体を動かそうとするのが難しいならば、1から始めてみるか。なんとなくだが必要な技術となるような気がするんだよな。

 回路をテキトーに10分割して1箇所だけ保持してみる。無理な力を加えなければ保持でき……るようだ。ついでに今は不要な残り9を司令部下に戻してみると、うまくいった。同時並行でアレコレし続けてまた失敗してもイヤだしな。

 1の魔力は充填する時と同じだな。難なく動かせる。ジワジワと一点に集めて小さく小さく……ぉ、ぉ、やべっ、あぶな。半分くらいの小ささになると、急に暴れ出すようだ。朝までがんばってみるか。









『魔力凝縮できれば、先の大爆発の倍の範囲を消失できます。がんばってください。』


有効射程――目標を照準して命中させ、射撃の効果を発揮できる最大距離のこと

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