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質量兵器

 特殊作戦司令部となった砲塔最下部は、有事の際の指揮所として使うようだ。ノピのラッパ練習場所にもなったようで、譜面を持ち込んでいる。

 昨日は商人の護衛の救出がなかなか終わらず、待機が長かったためかノピ以外に誰もいない。砲撃で吹き飛ばした箇所は大人たちが(なら)してくれるらしく、俺は暇な午後を外れた音に潰されていた。装填や換装の音は邪魔になるかもしれないのでマジでやることが無い。国旗降納とともに砲口を下げると街の住民に誤解を与えるらしいので、水平以上を維持しておく。単装砲でも愛嬌を振りまく方法があったら良いのにな。


「教会のみんなの遊び相手?」

「落ちたり旋回にぶつかったら危ないしなぁ」


 砲塔ができる前だったらまだしも今は18トンはあろうかという巨体だ。ケガではすまないだろう。繊細な操作に自信は無いんだ、残念ながら。実際、砲旋回や上下操作で愛嬌など無いだろうし。魔力充填や揚弾でも同様だ。青白い光は俺にしか見えていないように思えるし。ノピのように兵員に登録すれば会話ができるが……子どもを搾取対象にしているようでダメだよな。


「ヨシダホ、いっぱい考えてる?」

「ん? まぁ考える時間は腐るほどあるから。あー、ラッパの邪魔して悪かった」

「ううん。何か習ったのと違うから面白い、かも」

「……他の魔導機構兵装は、この街にいたりする?」

「ぁ、えっと、言えない、かも……」


 俺の質問に明らかな困惑を示し、ノピはラッパ練習を切り上げてハシゴを上っていく。聞いてはいけない質問だったか。ルアネだけでなくノピも俺に他の兵装の情報を言わないようにしている節がある。携行武器の奴なんかは兵員の移動に連れて行ってもらえそうなものだが、街を傍観していてもそれっぽい姿形は見られない。砲撃音などで俺の存在は明白なのだから、いるならアプローチがあるはずだ。

 疑心。現代兵器に転生した()たちであり者たち同士を近づけさせない何かがある、という事だろう。改修のために同士討ちを始めたか、示し合わせて謀反(むへん)でも起こしたか。貴重な異世界の兵器の運用は慎重であるべき……教育されてるという事はマニュアルでもあるのだろう。実験動物は、こんな気持ちなのかもなぁ。


 ノピが来なくなったら、嫌だなぁ……。




「……と思っていた時期が俺にも」

「あった、ここ!」

「あ、はい」


 ノピがエルンスト1曹と資料の束を持って戻って来た。ハシゴを下りようとして砲塔内に資料をぶちまけてもいい、水筒の飲み物をこぼして司令部床に垂れてもいい。ノピがまた来てくれたから。拭いて欲しいけど。

 2人が見せてくれたのは開示できる資料の一節。見えないほどの速度で飛翔する弾丸ではなく、石を飛ばす攻城兵器の投石()の記述。


 林 優月(ゆづき) 18歳男性 投石機 エリーテスの氷湖付近に出現後、■回の変容を確認。ヒモがねじ切れた事および水棲生物の攻撃により機能停止。部族間侵攻のため回収できず。


 短い記述である分、読み取れる内容は少ない。

 俺以外にも改修している者がいた。投石機のヒモは俺で言う所の魔力回路や砲塔の機構だろう。複数回の改修で、どんな姿になったのだろうか。

 意思疎通を図っていた。機能停止するまで戦ったのか守ったのか何もできなかったのかは分からない。争いに巻き込まれたのかもしれない。俺もそうならないとは言えないからこそ冷ややかには見れないな……。


「ほとんど黒」

「かなり繊細な問題を孕むので大隊長の許可が無ければ見れませんよ」


 数名分の記述は完全に消されている。年齢の部分が短い者もいたようだ。以前ルアネが持っていた資料よりも簡潔な内容しか載っていない。自身では移動も意思疎通も装填もできない状況で破壊されたら俺も黒塗りになるのだろう。1曹の言葉が真実だ。


「だいじょぶ?」

「大丈夫だ。同じ(てつ)は踏まない」

「てつ?」

「そちらの閲覧が終わったら、こちらの確認もお願いします。あなたと同じ魔導機甲兵装(こきょうのかた)の位置と諸元……は、戦況図(こちら)隊長の机(そちら)に」


 忙しく動いているなと思っていたら1曹は戦況図を更新していた。指を差されたルアネの机の上には数枚一括(ひとくく)りの書類が3部置いてある。赤いスタンプが斜めに押されているのは取扱注意なのだろう。つまり部外者には閲覧できない内容が書かれているという事。


 林 優月(ゆづき) 1()歳男性 ()()()()() 機能停止するもヒモを交換後、帝国暦■■■復帰。4回の変容を確認。投石機から大型の弩を横倒しにした形状へ変形し射撃する。現在、ハガクフル外壁上に設置されている。意思疎通可。自走可。魔力を込めた爆弾を連射可。

 

 伊藤 (まさる) 年齢性別不明 軽火器 発見時、機能停止。付近に戦闘痕多数。銃身が大きく破損しており復元不可。帝国暦■■■ 復元後、復帰。意思疎通不可。実弾の携行が必要。単射。装弾数1。


 毛利 瞳 18歳女性 軽火器 短機関銃。連射速度が高く、銃弾生成に多量の魔力が必要。携行者の意図に反して銃弾を生成するため、薬を常備すること。装弾数50。意思疎通不可。トリガーハッピー。使用に際して撃ち切り、携行者が倒れても近づかない事。


 ……それぞれ別方向にヤバさがあった。

 1人目は投石機が爆弾投げちゃいました☆ てか? しかも自走できるし変形もできるのか。俺もしたい。ハガクフルは東の谷の向こうだ。4回の変容という事は俺と同じくらいか? 向こうの射程が勝っていることは無さそうだけれども注意は必要だろう。

 2人目は精神をやってしまったのかな。意思疎通できるまでは本当にひとりぼっちだからな……。

 3人目。50発の装弾数の短機関銃。表記がおかしい。撃ち始めたら弾切れ後も延々と銃弾を生成し、人がぶっ倒れても近くの人から吸い続けて撃ち続けるような……。機関銃の連射速度は俺よりも圧倒的に速い。弾幕を張る代わりにバタバタと人が倒れる光景が目に浮かぶ。


「射程は、こちらが有利。資料は持ち帰ります。形状等を覚え、早期発見および撃破に努めてください。この3人については見つけ次第、撃って頂いて構いません。強制は……できませんが」


 1曹が書き加えた戦況図を見ていると『地図情報を更新しました。予測射程圏を表示します。』というメッセージが現れた。戦況図に赤い円と点が表示されたので、そこにいるのだろう。いつ索敵した? って赤い点が近づいてきているような? もうすぐ東の谷を通るところ。

 突然、司令部の照明が暗転し、赤色灯が点灯した。ノピもエルンスト1曹も突然のことに動きが止まっている。


『射程圏内に敵性反応。14キロメートル東、西へ低速移動中。

 兵員の呼集を推奨。

 即応弾の装填が優先されます。』


「ノピ、呼集ラッパを吹いてくれ。敵が東の谷を越えて街に近づいてるんだ」

「え? 呼集? え?」

「彼は何と?」


 ノピが1曹に伝え終わると、改めて1曹がノピにラッパを指示した。指揮系統がある。照明弾への換装と装填をしながら砲口を東の空に向けておく。

 揚弾が始まる中、ノピが砲塔の外で呼集ラッパを吹くと、街に緊張が走るのが分かった。兵士としての自覚があるようで、胸当てを着けた大人たちが走っていく。

 吹き終わったノピを砲塔内に避難させ、照明弾を発射し榴弾への換装を急ぐ。2発の砲弾がそれぞれ発光してすぐ敵集団を視認した。距離13.4キロメートル。小さな銃を携行して歩行している。短めのマントを羽織り、つばの無い帽子を被った男たち10名。他が背嚢(リュック)を背負っているのに、1人だけ何も背負っていない。全員が照明弾を視認して、すぐに物陰に隠れようと動いた。

 手に持っているのは、単発銃の方かと軽装の1人を見ていると照明弾に銃を向け、ノータイムで撃った。


 およそ拳銃から発射されるとは思えない巨弾が片方の照明弾を撃ち抜く。え? は? デッカ……くらいしか考えられない俺が呆けている内に、街の南東の山肌を巨弾が大きくえぐりながら着弾した。


『敵の発砲を確認。情報を修正します。』

「うっ!? 地震!? 敵襲か!」

「にゃっ!?」


 砲塔内にも揺れと大きな音が響き、2人が慌てている。赤い円がどんどん広がっていく。東の山を越え、街の近くまで。

 照明弾からの視界に下半身だけの人と離れた位置に転がる拳銃、そして拳銃へ駆け寄る背嚢を投げ捨てた人に気が付いた。さっきの人は、どこへ? と現状は理解できないが、拳銃を拾い上げた人が照明弾へと銃口を向けた時。あるはずの無い背筋がゾワリとする感覚と、早く撃たなければと本能的に思った。


『積層魔力回路へ魔力 40 を充填します。射撃には重度な損傷を伴います。』


 

ライフルとP90

軽火器に携行ロケット弾を含めるかで変わりそうです。

貫通するのは銃弾の材質なのか形状なのか炸薬なのか初速なのか、大きさなのか

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