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強襲、即応、過貫通

 俺を叩いたルアネの手の心配よりもノピの号令の強制力だ。抗ってみたものの、文字通り必ず実行される。ならば従いつつ何ができるかを考えた方が建設的だろう。

 星空の下、換装と装填をし続ける。寝る必要が無い榴弾砲にできるのは何万回もの反復。金属疲労は今のところ起きていないが、断線した魔力回路はそのままだ。試しに魔力を流してみると断線した箇所でどこかに消えていくようで。無駄に1消費したが意味はあった。装填は音が鳴ってしまうので換装ばかりして少し休憩した時。


『一定回数以上、装填を行いました。装填速度が上がります。

 一定回数以上、換装を行いました。換装速度が上がります。

   警告:魔力回路に触れている者がいます。  』


 いつものメッセージがズラズラと流れるそこに追加された違和感。俺の視界には何も映っていない。見慣れた地面と雑草と脚。砲全体に張り巡らされた魔力回路に乗られてはいないと思う。触れられている感覚も無い。薄暗いが注意深く見てみると、一部の雑草と地面が少し動いた。そこだ!


「……!」


 根こそぎ徴収する勢いで魔力を吸い上げる。ザッと膝くらいの跡が地面に現れ次いで人が現れた。魔力8。ルアネより多い魔力量。夜の丘に光学迷彩でも使ったのか透明になって来るなんて普通じゃない。朝まで魔力タンクとなってもらおう。ほらほらもっと搾り出せ。


「ぅ……ぁ……」


 声からして女か。途中パリンと何かが割れる音が続き、また動こうとした。魔力の数値が増えなくなるまで吸い続け、ようやく気絶したようだ。魔力の予備でもあるのだろうか。ほんの少しでも動けば気絶するまで吸って吸って吸いまくってやる。




 ガクガクと震える黒ずくめに朝日が差し込み、姿形を明確にしていく。

 ノピより頭一つ高い身長。フードから出ている耳も黒で、髪は服の中に入れていて……多分長い。顏が見えれば良いんだが。顎下以外全て黒色のコイツは何なのだろう。


「……誰だ?」

「ぅぅ……んぐっ……」


 今日も来たルアネが俺の傍で倒れビクビクしている不審者を見つけて半眼になる。俺は悪くない。今も動こうとしたのでゴッソリ頂いた。魔力12。

 ルアネが小さな石に話しかけてしばらく待つと、以前性能チェックで的にした大人たちが来た。


 連行される黒ずくめ。意識を失っているようでダラリと手足を垂らしている。

 丘から離れて教会を通り過ぎたところで大人たちが吹き飛ばされた。1メートルも飛ばされていないのにバタバタと倒れる大人に違和感を覚える。路地に逃げていく黒ずくめ。俺から離れるのを待っていたのか。近くに白い胸当てを着た大人がいない。逃げられてしまう。

 照明弾が選択されていたので装填すると、今まで以上に早くマーカーが出現した。朝の街に照明弾は効果が薄い。しかし俺の照明弾は少しばかり用途が異なる。

 黒ずくめは路地から通りに出た。なおも直進したため俺は視認範可能だ。今回は絞る必要が無い。装填が終われば……よしっ!

 ドンっ! と照明弾を射出し、放物線の頂点付近で小さな太陽が2つ現れた。カッとまぶしい光が別の路地の影に入った黒ずくめを照らす。瞬時に横へ飛びのいたにもかかわらず照明弾はサーチライトのごとく捉え続けた。黒ずくめを追う照明をそのままに榴弾に換装する。28秒。

 教会付近の大人たちへ駆けていたルアネが照明弾の照らす先に気づいた。いくつか指示を出しながら介抱をし始める。23秒。

 黒ずくめが人通りに紛れた。照明弾は民家の屋根を照らしながら南方へ照射範囲を動かしていく。悲鳴や破壊音が上がり始める。黒ずくめは未だ見えない。18秒。

 ジグザグに動いているのだろう、照射範囲が南から南東へ不規則に揺れている。下手に街中に潜まれると住人に被害が出かねないな……。ここだったら撃てるというポイントを探すか。13秒。

 南東の外壁付近は撃てる。継ぎ足しで造ったような住居が乱立しているエリアに近い。空地もあるなと考えていたら照明弾の光が弱まってきた。そろそろ限界か。8秒。

 建物の陰に入ってしまった照明弾だが、マーカーは今も追えている。黒ずくめが建物に入ったようで、マーカーの外縁が南南東の屋根に映った。3秒。


 黒ずくめは屋内か……。狙撃手ならば対象が現れるまで待つ。だが砲兵部隊は間接照準射撃も行う。直接視認していない対象だが、マーカーの絞りが始まった。立ち止まったか座ったか。いずれにせよ移動していない。

 装填が終わると同時に撃つ。バズン! とけたたましい爆音が轟き砲全体が一瞬浮いた。2発の榴弾が建物の屋根と側面の壁に着弾。2発とも壁をぶち抜き内部へ貫徹し、同時に爆発した。

 2階建ての建物の大部分が爆散する。マーカーが()()()()()()に、そして()()()()()見えなくなった。爆風で吹き飛んだにしては変な挙動だ。

 次弾装填……という所でマーカーが突然消失した。ん? 消えた? 何で? と見てみると照明弾が燃え尽きている。30秒程度しか持続しないのか。照明弾の効果は「対象を追尾して照らす」だけではなく「障害物を無視してマーカーで対象を捉え続ける」もあったらしい。何かイイ感じに狙えていたのは、たまたまだったか。

 もう一度半壊した建物付近を見てみたが、黒ずくめは見つけられなかった。逃がしてしまったようだ。何だかモヤモヤする。砲身にススがこびりついたわけでも弾詰まりが起きているわけでもない。魔力回路が機能していれば、照明弾をより長く持続できたかもしれない。より確実に爆殺するには……何だか思考がブレた。


「はぁ、はぁ、なぜ街中に撃った……答えてもらおうか!」


 総毛立ったキツネ耳上官が駆け寄ってきた。着弾地点を見てきたのだろうか。手に黒ずくめの着ていた服と同じ黒い布を握りしめ、瞳を縦長にし犬歯が少し伸びている。でも口は言い切った後で「へ」の字にしているのはなぜだろう。


「答えろぉぉぉ、お”、お”、お”」


 砲身をグイグイ押したり引いたりしているルアネだが、そもそも俺は声を出せない。YESNOで答えられる聞き方に変えてくれないと、反応に困るし。動かされるのも(しゃく)なので砲身を留めたら(うな)り始めたし。

 ある程度ストレスを発散したルアネは、息を整え脚に座り聞いてくる。


「……で、負傷者は奇跡的にいなかったが黒ずくめ(こいつ)は仕留めたのか?」


 横振り。次の質問は「見えていたのか?」だったので縦振り。「今もか?」には横振り。「あの光りながら落ちていたのは関係あるか?」は縦振り。「いつ見つけた? 朝か?」には横振り。「夜?」は縦。

 ルアネが握っていた黒い布を俺に見せてくる。赤い刺繍で模様というか紋章に見えるが。


「見えるか? 隣国の特産素材にこれ見よがしの他国旗だ。諜報活動だと見て間違いないだろう。ただ――」


 考えるポーズのルアネが黒ずくめの移動経路を眺め、ノピたちの宿舎で視線を固定する。訓練生は横隊で立ったり座ったりを繰り返していた。何だアレ? 外壁の上での行動だろうか。ノピは見つけたが黒豹の子がいない。


「――私だ。今日欠席した訓練生を調べろ」


 ピースがカチリとハマるような音が聞こえた気がした。

強襲……ではないかもしれませんが、強そうなタイトルとしては良いかな~。

過貫通はゲーム用語かもしれません。まぁ、何となく分かるでしょう。

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