そんな格好をしている方が悪い
じっとりと汗ばむ時期になった。
男にとっては眼福の季節だ。
薄着の女が増え、薄手の生地から透けて見える下着の線や、露出した生足やファッションとしてわざと見せるヘソチラが拝める。
いくら暑いからといって、そしてファッションとして流行っているからといって、これ見よがしに際どい格好をしている女は貞操観念が緩く、露出狂の気があるとしか思えない。
男の欲求を煽って楽しんでいるのだ。
エロい格好しやがって、誘ってるんだろ。
深夜の静まり返った住宅街。
コンビニへ向かっていると、女が1人、前を歩いていた。
タンクトップにひらひらしたフリルのショートパンツという格好だ。
すらりと伸びた白い手足は生々しく月光に浮かび上がり、歩く度に左右に揺れるお尻は金魚のように小ぶりで艶めかしい。
むらむらした男は女の後をつけ、タイミングを見計らって近づいた。
自販機前で立ち止まり、飲み物の購入に気を向けている女に背後から襲いかかり、片手で口元を覆い、低い声で耳元で脅した。
「静かにしろ、騒いだら殺すぞ」
突然のことに女はびっくりし、全身を強ばらせて目を見開いた。
恐怖のあまり叫び声も出ない様子だ。
片手で女の口元を覆ったまま、もう片手で女の身体をまさぐった。
タンクトップの上から胸を揉むと、柔らかい感触がダイレクトに伝わってきた。
「はぁっはぁ、ノーブラかよ。お前痴女か、こんな格好しやがって。こうされたかったんだろ」
息を荒らげ、女を辱める言葉を吐くとそのことにますます興奮した。
「エロい格好しやがって。夜中に一人で出歩いて、犯されたって文句言えないよなあ。こんな格好してる方が悪いんだぞ」
タンクトップの下に手を滑り込ませ、もう片手でショートパンツを引きずり下ろそうとしたとき、女の肘鉄が飛んできた。
「ぐおっ」
片腹を押さえてうずくまる男に、振り返った女は呆れたような目を向けた。
改めて正面から見ると、細目の妖しい雰囲気のある女だった。
走って逃げ出すかと思いきや、女は男に向かってきた。
予期せぬことの連続に男は身動きができなかった。
すらりと細い手が伸びてきても、ただ見とれるばかりだった。
えっと思ったときには首がスパッと切られ、血が噴き出していた。
女の手に握られているのは刃渡りの長いナイフだった。
男の喉を切り裂いたそれは、続けて男の眼球に突き立てられた。
断末魔を上げる暇もなく、全身を何百回と滅多刺しにされた男はびくびくと痙攣しながら息絶えた。
血塗れの肉塊と化した男に、女は淡々とした声で言った。
「無防備で剥き出しの、そんな格好をしているから悪いのよ。殺りたくなっても仕方ないわよね?」