3.とりあえず(?)の婚約 -side A-
母上と義姉上にこってり絞られた俺は、翌日、精神的にぐったり疲れたまま騎士団で訓練の準備をしていた。そこへ同期の奴らがやってきた。
「よー、アレクシス。お前、いきなり婚約したんだって?」
同期入団とはいっても年齢はみんな同じではなく、中には婚約者がいる者や既婚者もいる。俺はいろいろと聞いてみることにした。
「そりゃ、贈り物をしてひたすらご機嫌取りだな。」
「一緒にいろいろなところに出かけたりするのもいいぞ。」
「男なら押し倒…ぐほっ」 (引きずられて強制退場)
まあ、贈り物はいいかもしれない。今までにも休暇のたびにちょっとしたものは贈っていたが、何か婚約者らしいものを選んでみよう。
そして、俺は同期(既婚者)の「相手に気を使わせるような高価すぎるものはやめておけ」という非常に現実的な助言に従い、街でエリーに似合いそうな小さな銀細工の髪飾りを買った。
「え、これを私に?」
「街で見つけたんだけど、エリーに似合いそうだと思って。」
「ありがとうございます。嬉しいです。」
休みの日に子爵家に行って髪飾りを贈ると、エリーは気に入ってくれたようだ。喜んでいるその様子もかわいい。俺は心の中で雄叫びを上げ、助言してくれた同期に感謝しつつエリーが気に入るものを選ぶことができた自分をほめた。
よし、この勢いで突っ走れ!
「エリー、好きだ。」
エリーのびっくりした顔もかわいいな。
「俺に時間をくれ。1年たってもエリーの気持ちが変わらなかったら、そのときは潔くあきらめる。だから、それまでは婚約者として受け入れてもらえないだろうか?」
あれからいろいろと考えた。俺はエリーと一緒に幸せになりたいんだ。だから、このままあきらめたくない。1年だけ時間をもらい、その間にエリーの気持ちが俺に向くように全力を尽くす!
ちなみに、当たって砕けた場合は騎士団総員で残念会を開いてくれるらしい…。しかし、すでに『残念会』が計画されているというのはどういうことなんだ?うまくいくように祈ってくれよ!
「もちろん、もしも、万が一、いや絶対にあってほしくないが、婚約解消ということになってもエリーには傷がつかないようにするし、その後の保障もするから!」
「…わかりました。もし1年たっても気持ちが変わらなかったらごめんなさい。ずるいかもしれないけど、先に謝っておきます。」
都合の悪い部分は無視して、エリーが(とりあえず)婚約を受け入れてくれたことを喜ぶ。「アレクシス様にはもっとすてきなご令嬢がお似合いなのに」というエリーの言葉も(俺の中では)なかったことにする!
俺は満面の笑みで、さっそく次の休みにまたエリーを訪問する約束を取り付けた。
それからは、ちょっとした装飾品や、王都の若い女性の間で流行しているという雑貨を街で見つけてはエリーに贈り、休みの日には観劇に行ったり少し遠出をしたりと、順調に婚約者としての交流を続けていった。しかし、半年がすぎても、俺に対するエリーの態度はまだ婚約者というより、せいぜい弟のような身内に対するようなものに感じられ、俺は少々焦っていた。
……あの事故が起きたのは、そんなときだった。
お読みいただき、ありがとうございました。




