1.絶対零度 -side A-
相変わらずのゆるゆる設定です…。
……やってしまった…。俺の人生、終わった……。
俺の成人祝いの夜会でエリーに思いを告げるつもりだったのだが暴走してしまい、いきなりの婚約宣言…。なんとか夜会を乗り切り、現在、絶対零度の雰囲気の中、俺は床に正座させられている。
「アレクシス様、あれはないですわ!宴もたけなわの頃、バルコニーにそっと誘い、片膝をついて一輪の薔薇を差し出し、淡い月の光の中でプロポーズ、彼女は嬉しさのあまり涙を流しながら受け入れ、かすかに聞こえてくる音楽に合わせてしっかり寄り添い2人だけでダンスをする予定だったのに!」
……義姉上のはただの妄想だが、俺の計画もそれにかなり近いものだったんだよ…。
「エリーもかわいそうに。あんなに大勢の前で宣言したからには、明日には王都中に広まっているわよ。本人に気持ちを告げる前にいきなり婚約を宣言するなんて、なんておバカな息子なのかしら(怒)」
……返す言葉もないが、あんなにかわいくエリーを着飾らせた母上にも責任はあると思う。おかげで頭の中が真っ白になって、途中をすべて飛ばしてしまったじゃないか!
「まあ、エリーは昨日付でうちを退職していて、今夜の夜会は子爵令嬢としての出席だったのは不幸中の幸いかな?でも、あの状況じゃ子爵家からは断れないし、婚約を解消するにしてもしばらく時間をおかないといけないだろうから、エリーにとっては婚期が遅れる上に傷がついて踏んだり蹴ったりだよね。」
兄上、これ以上俺の傷をえぐらないで下さい…(泣)。
父上は何も仰らなかったが、おもしろがっている顔をしていたのを母上に見咎められて、扇でパシッと叩かれていた。
夜会が終わった後、エリーはうちの馬車で子爵家に送らせた。きっとものすごく混乱しているだろう。明日の朝すぐに子爵家に行って、謝罪と説明と今度こそ俺の気持ちをきちんと告げなければ!
エリーに嫌われてしまったかもしれないと思いながら、俺は足のしびれと家族からの冷たい視線といつ終わるとも知れない口撃に耐え続けた…。
翌日、朝一番に先触れを出し、子爵家を訪問した。
まずはウォレス子爵に今回の件を説明し、謝罪した。子爵はエリーに何も聞いていなかったようで突然の話に混乱していたが、とりあえずエリーと話をさせてもらえることになった。
さすがに未婚女性の部屋ではまずいので、庭を散歩することにする。
「…エリー、昨夜はすまなかった。エリーのあまりのかわいらしさに頭の中が真っ白になって、途中を飛ばしてしまったんだ。順番が逆になってしまったが、どうか俺と結婚してくれないだろうか?」
「アレクシス様、本気だったんですか?」
「??? …え?」
もしかして、全然気づいていなかったのか?あれだけ気持ちを伝えてきたつもりだったのに…。まわりもみんな知っているぞ。わかっていないのはエリーだけだ。
「公爵家の皆様には誠心誠意お仕えしてきたつもりだったので、てっきり日頃の勤務態度に対してのごほうびかと思っていまして…。」
他にも身分差があることや年上だということを理由に挙げたり、申し訳なさそうにしながらもしかるべき時の婚約解消までの流れをあっさり言い出された俺は、気持ちが伝わっていなかったことに加えて男として全く意識されていなかったことを知ってショックを受け、寝不足も相まって何も考えることができず、放心状態で帰宅した。
ついてきていた従者が母上と義姉上にすべてを報告したせいで、俺はまた正座させられ絶対零度に耐える羽目になった…。
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