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男爵とガーデンパーティー

 王家主催のガーデンパーティーはジェイクが思っていたよりも豪華だった。

 まず中庭になど滞在中に訪れることは無かったのだから、サミュエル領かシェラード領のパーティーとしか比較出来ていない。色とりどりの花が溢れ、あちこちにテーブルが置かれて食事も豊富だ。学園の同期だろうか見覚えのある自分と同世代の貴族たちに目移りしていると、最奥にアーク第二王子とコレット王子妃の姿を見つけた。相変わらずのもじゃもじゃとした髪が特徴的な義兄と、その隣に並ぶコレット王子妃は母になったためか露出の少ないペールピンクのドレスを着こなしている。間に挟まれている勝気そうな少年が息子なのであろう。目的地が定まると、ズンズンと一直線に進んでいく。途中からは人が避けるようになり、ジェイクの気持ちは大きくなった。

「お久しぶりです。義兄上様。エリーゼの夫ジェイクにございます。」

 勢い良く初めて『義兄』と呼んだが、アーク第二王子は特に抵抗も無い様子でジェイクに話しかけた。

「あぁ久しぶりだな。元気そうで何よりだ。エリーゼ、その子がルイだな。」

 アーク殿下はすぐに後ろにいるエリーゼに声をかけて立ち上がり、膝をついてルイに微笑んだ。するとエリーゼに軽く背中を押されたルイはアーク殿下の前でしっかりと礼をして微笑むと、ハキハキと話し始めた。

「アーク殿下、エリーゼの息子ルイにございます。お会いできてこうえいです。」

 そこはウォール男爵の息子と言うべきだが、五歳にしては上出来だろう。わしゃわしゃとアーク殿下に頭を撫でられると、嬉しそうに笑っている。

「アーク様、ルイが縮みますわ。そろそろ止めてあげてくださいませ。」

 コレット王子妃も椅子から立ち上がると、エリーゼの傍に立った。

「とても良い子に育ったようね。」

「お母様仕込みですわ。私もそうしてもらえていれば、もう少しマシだったかもしれないと羨ましいくらいよ。」

 対等に話す妻の姿に王女の貫禄を感じたジェイクは主催の懐に入ることが出来たと実感して、口を開いた。声を出そうとすると、後ろがザワつき人の気配に振り返る。そこに現れたのはジェイクのかつての婚約者と妻の元婚約者だった次期ウィンダム公爵夫妻だった。

「おや、誰かと思えばロード男爵。久しく顔を見ていないから、病にでも倒れたかと噂が流れていましたよ。」

 ジェイクが婚約披露パーティーでしか見た事の無かったアルカイックスマイルを浮かべた夫ライルは嫌味であろう言葉をスラスラと発しながら、妻のローズの肩に手をやり自分に引き寄せた。

「あなた、子供の前でそういう言い方をしてはいけません。エリーゼ様、お久しぶりです。」

 腰まである艶やかな黒髪を緩く巻き、深い青の首を覆うドレスに身を包んだローズは六年前よりも年齢のせいか子供を産んだからか、あの頃には無かった色気が漏れている。ジェイクは妻の声さえ聞こえぬくらいにローズの横顔を一心に見つめていると、足元に何かがぶつかった。

「もうしわけございません。うっかりぶつかってしまいました。」

 まっすぐな黒髪を肩まで伸ばした幼女はぱっちりとした目でジェイクを見つめ、深々と頭を下げて謝罪する。ふわふわとした水色のドレスは製糸業が盛んだったサミュエル領生まれのジェイクの目から見ても大変上質で、上位貴族の着るべき生地である。

「そちらこそ、大丈夫だったかい?」

 よく分からない懐かしさを不思議に思いながら声をかけると、ふっと幼女は宙に浮いた。

「しっかり前を見るように言っただろう、マーガレット。さぁ、アーク殿下たちに挨拶をしておいで。」

 後ろから抱き抱えたのはライルで、幼女をよくよく見ると子供の時のローズに瓜二つだった。

「申し訳ない、ロード男爵。娘が自分で歩きたいと言うので、混雑することが分かっていたのに歩かせてしまった。」

 抱き上げられた幼女はぷいっとそっぽを向き、アーク殿下の息子に手を振っている。ルイは頬を赤くしてマーガレットと呼ばれたライルの娘を見つめている。

「いえ、何ともありません。ご令嬢は仲がよろしいようですね。既に婚約されているのですか?」

 王子の息子の婚約者に怪我でもさせていたらとドキドキしながら問いかけると、ライルはハハハと笑った。

「まさか。アーク殿下と私、コレット王子妃とローズは従兄弟ですから、これ以上血を濃くはしませんよ。娘は隣国に嫁ぐことが最近決まったところです。」

「それはめでたい。しかし、寂しいのではないですか?」

「それに耐えることが貴族ですから。」

 そこまで話したライルはマーガレットをアーク殿下たちの前に下ろし、後ろに下がった。

「アークでんか。ごしょうたいいただき、ありがとうございます。」

 幼女はその歳にしては見事なカーテシーを披露し、周りからは感嘆の声が漏れた。


 そこでジェイクは閃いた。


 ルイの手を引っ張って、歓談を始めたウィンダム公爵家族とアーク殿下家族の輪に強引に飛び込んで膝をつき、高らかに声を上げた。

「義兄上、お願いがございます。どうか息子のルイをマーガレット嬢の婚約者にしてください。私たち親が分けてしまった縁を子供で結ばせてください。」

読んでいただき、ありがとうございます。

次回は来週の予定です。

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