マチルダの謝罪と告白
先日はご迷惑をおかけしました。せっかくの婚約発表の場をお騒がせしました、ウィール男爵家のマチルダでございます。ローズ様は覚えていらっしゃいませんか?あなたの後ろで王太子にワインをかけた女でございます。
ウィンダム公爵令息からデイジー様のお話を聞きました。恐らく私のせいにございます。
私はデイジー様の兄のイーサン様と婚約しておりました。父と侯爵が学友で、政略と言えるほどにお互いに旨みのある婚約ではありませんでした。侯爵様も夫人も幼かったデイジー様も皆様良くしていただけましたが、イーサン様とは顔合わせの時から年増の地味女と言われておりました。イーサン様の侍従曰く年下でブロンドの美しい令嬢に思いを寄せていらっしゃったようですが、その方はご友人と婚約されたそうです。イーサン様は高位の令嬢と結婚して見返そうと思ったのに二つ年上で男爵位の私との婚約が決まり怒り狂ったそうです。
デイジー様は懐いてくださって、「お姉様」と呼んでいただいておりました。あの絵本の元はデイジー様に私が創作で描いたものです。名前も服もエリーゼ王女殿下とウィンダム公爵令息をイメージしました。仲が良くないのは有名でしたから、幸せになるといいなと願いを込めて描きましたの。
イーサン様が落馬された日はそれぞれ別の馬で侯爵領の草原を遠乗りしておりました。もちろん従者を連れていました。休憩中の私の態度が気に入らなかったようで、暴言を吐いた後婚約破棄してやるとイーサン様はおっしゃいました。私ももう疲れていましたので、了承して先に侯爵様とお父様の元へと帰りました。私はこれ以上の婚約継続は難しく、結婚生活など仮面でも無理ではないかと訴えました。二人とも私たちが不仲な事は分かっていましたから、しょうがないと承諾していただきました。イーサン様の帰りをテラスで待っていると、従者が走り込んできてイーサン様が落馬したことを知らされました。すぐに向かいましたが既に事切れていて、従者曰く私が縋りつかずに去ったことを怒って馬にあたったのだそうです。それで暴走して落ちたと。私が酷いことを言われたのを従者が証言してくれて、ホランド侯爵様からも夫人からも特に咎められませんでした。謝られたくらいです。
結婚相手を探していると顔合わせでは乗り気なのに、断られる事が三回ありました。三回目のお相手がお手紙で理由を教えてくださいました。そこにはホランド侯爵から圧力があって断るほかないと書かれていました。悪い冗談だと思いましたが、『デイジーが恋しがっている。イーサンの従者と結婚して傍にいてやってくれないか?』とホランド侯爵から手紙が来た時に真実だと悟りました。それからは商家に話をしても縁談は全て潰されて、療養という体で暫く男爵領に引きこもり身を隠していたのです。何度か父の元に手紙が来たようですが、断っていただいています。従者とはイーサン様の葬儀で会ったのが最後ですが、どこがとは言えませんが何だか怖くて。修道院に行こうかと真剣に悩んでいた時に、父から気晴らしに王主催の夜会に出るように言われて、あの場にいたのです。
あの時、確かに私はワインをかけようと思っておりました。ローズ様にではなく、エリーゼ王女殿下とサミュエル侯爵子息に。こんなに素晴らしい婚約者がいるのに、恋に目が眩んで結婚を破談にするなんて。怒りにまみれすぎてたどり着けませんでしたが、王太子には感謝しております。ローズ様のドレスにかけてしまっていたら、お詫びに死ぬしかありませんでした。
今は事情を知った王太子妃にメイドとして雇われております。真面目に働けば良い縁もいただけるとおっしゃっていただけて、夜会に出たことを感謝していますわ。
絵本の中で魔女がカミラというのは、あの侯爵令嬢のカミラ様からですわ。以前からウィンダム公爵令息に懸想しているのは有名でしたし、下位貴族に対しての当たりがきつくて。年齢関係なく偉ぶった令嬢でしたから。
きっとワインをかけたのは私が夜会で起こした騒ぎのせいでしょうね。物語を話す時にデイジー様はお姫様と騎士が幸せになって良かったとしかおっしゃっていませんでした。決して魔女を倒すことに喜びを持つような方ではございません。
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事前にライル様と打ち合わせをされていたのか、マチルダ様は要点を話すと謝罪を繰り返し私に伝え、すぐに帰ってしまった。
「どう思う?ローズ。」
短いので、続きは今日中投稿します。




