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密かに侯爵家乗っ取りを企む伯爵令嬢は、公爵令息と政略結婚する羽目になる  作者: 綴喜
スキャンダルより前から婚約パーティーまで
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恋とは必要のないもの

ライルの独白日記です。

続きは書いております。

 私には恋など必要ないと思っていた。


 何せ王女殿下の白い結婚相手に選ばれたから。

 王女殿下も可哀想にと思いながら対面すると、彼女は母上のサファイアを欲しがる悪童だった。

 白い結婚で良かったと思った。ウィンダム公爵家に血を残さない方がマシだ。

 婚約者としての義理を果たすため、毎月の手紙に誕生日プレゼント、公式なエスコートをしてはいるが会えば会うほど嫌いになる。もちろん表面には出さないが嫌悪は増すばかりで、良いところが見つからない。

 あちらも同じなのか、あからさまに嫌な顔をされる。正直笑うなと言われて助かった。無理やり笑うのは苦痛だった。

 王家からの薬も言われるままに飲んだ。男女の欲を無くす薬らしいが王女殿下を見ても沸き立たないので効果のほどは分からない。


 そんな時に偶然読んだ学生新聞。年上の友、オスカーたちの従姉妹がインタビューに答えていると騒ぐので仕方なしに読まされた。

 ガツンと頭を殴られた気がした。

 貴族の結婚は領民のため。血の繋がりを強くするためならば愛せなくても結婚する。

 何度も教師や親から言われた言葉だというのに、自分よりも若い令嬢の方が理解している。

 衝撃だった。

 オスカーの邸で偶然見た本人の姿は薄ぼんやりとしか覚えていないが、美しかったと思う。


 王女殿下に対して、嫁に迎える努力をしようと思った。結婚するまでの分はしょうがない。結婚後、彼女が不幸にならないようにしようと思った。

 だから侍女のサラを王女殿下の部屋付きにして欲しいと王太子に頼んだ。見張る気だったのではない。彼女の好みを知ろうと思ったからだ。


 その結果がジェイクとかいう男との恋の発覚だというのは皮肉だろうか。おまけにジェイクは自分が衝撃を受けた令嬢の婚約者。相手に赤いドレスしか贈らず、髪型すら強要しているというクズ男だった。

もちろん王家も把握し、側近であるオスカーとローガンも知るところとなった。

 このまま淡い恋で終わればそのまま結婚。でなければ解消、城で暗い顔の陛下に言われて、解消へ動きますと答えた自分に父上は頷いた。

 サラにふざけた小説を片付けさせ、少しでも穏やかな内容の物を用意させる。別の人物も送り込み、使用人たちを使って王女殿下の考えを破棄ではなく解消に促した。


 〇月✕日

 もう1人の被害者たるシェラード伯爵家ローズ嬢に接触する。

 何故ならあの方と解消するならば次の婚約者を見つけなくては困る。婚約していても、笑顔を見せずとも群がる女は多かった。胸を押し付けられ、スカートを捲られたりとアピールは過激だ。迷惑な行為は要らない。早く決めた方が楽である。

 ローズ嬢は書面上優秀であり、オスカーたちの従姉妹と血筋も問題ない。インタビューをもう一度読んでみたが、領民思いなのが分かる。私に惚れて迫ってきても、一人なら相手が出来るだろう。あの方よりはマシである。

 と思っていたのに、全く靡かれなかった。むしろ言葉も考え方も独特で、笑い上戸の自分がツボにはまりすぎていた。

 ジェイクの浮気を教えても動じず、侍女もおかしい。

 これはいい女性を見つけたと、両親に報告した。彼女の母と友人である母が特に喜んだ。

 外国に留学している弟にも跡継ぎについて詫びの手紙を書いた。更に喜ばれた。絶対にウィンダム公爵に相応しい男児を作らなければならないというプレッシャーがあったようだ。

 王家の薬は飲まなくなった。必要ないからだ。幸い即効性で体に滞留するタイプでは無く、今後後継を儲けられる可能性は通常と同等であるらしい。結婚すれば永久に効果のある薬だったそうだから、ここで相手が変わって幸運だったのかもしれない。


 △月✕日

 ローズに呼び出しを受ける。あの方が手紙を投げつけたらしい。待ち合わせの日程を送れば、こちらにもジェイクが来た。公爵の息子に投げるのは勇気が必要だったのだろう。すごい顔で笑いそうになった。


 △月〇日

 ローズが手紙を新聞に公表した。抜かりない判断に拍手を送りたいくらいだが、私たちの噂を流されたことで彼女の気持ちはきっと傷ついただろう。

 スキャンダルのおかげで消えていくだろうが、こちらの手の者を使ってガセネタであることを流しておく。


 △月△日

 公表してから学園を休んでいるローズを見舞う。恐らく王家の発表までは休まねばならないだろう。

 私の言葉に涙を流す姿に抱きしめたいと思った。しかし侍女のユーリが煩い。その上シェラード伯爵家の使用人たちの視線も煩い。ハンカチを差し出すことで精一杯だった。後で「よく踏みとどまれました」とハリーに褒められた。薬が切れて欲が出てきたようだ。


 ✕月〇日

  久しぶりの夜会に出席した。どうしても顔だけは出さなければならず憂鬱だ。ローズに贈る靴について考えていると、侯爵令嬢のカミラが目の前にいた。思わせぶりなことをした覚えなどないのに、自分に気があると思っている一番煩わしい女だ。ねっとりとした口調で手を取り、自分の胸元に押し付けられたので咄嗟に手を払った。ハンカチで手を拭き、給仕に捨てるように頼んで退出した。

  欲が出てもカミラ嬢では駄目なようだ。そうハリーに話すと呆れた目をされた。


 ✕月✕日

 ローズとダンスの練習をしようと講師を頼んだが、一人だけで講習を受けることになった。

 学園でも厳しいと有名だった方だが、ローズは文句が無いので不必要だと言われた。リフトを提案され、軽く練習。ローズを持ち上げることに楽しみな自分がいる。


 ✕月△日

 やっと婚約にたどり着いた。

 ローズには青いドレスがとても似合う。初めて教会で会った時も青だった。青は運命の色だ。贈った靴も我ながら良く似合う。

 サインだけでは物足りないと思ったので、プロポーズを両親と王家の前ですると動揺していた。可愛い。ついでとばかりに頬に口付けて、自分に惚れさせようと思っているとローズが自らから口付けてきた。途端に血が湧き上がったように感じてしゃがみこんだ。と、ローズが倒れる気配がして受け止めた。軽いし柔らかい。カミラ嬢に触られた時とは違う。もっと触りたい。邪な思いがばれたのか、すぐにコレットに引き離された。ユーリとコレットに冷たい目をされた。そのまま女性陣はコレットの部屋へ男性陣はそのまま待機となる。ローズの父親のシェラード伯爵の様子がおかしく観察していると、呆然とした様子で窓辺に向かわれる。慌てて椅子を片手に手を引くと、伯爵と目が合い涙を流された。ハリーが部屋を飛び出していき、すぐにシェラード夫人を連れ帰ってきた。夫人曰く、「来年に見るはずの場面をうっかり娘がやらかしたので、覚悟が間に合わなかっただけです。」とのことだった。

 シェラード伯爵は別室へと誘導される途中に立ち止まり、王太子に言った。目は暗く光が見えない。

「娘が嫁ぐからと思っておりましたが、少し隣を小さくしましょう。よろしいですね、王太子?」と。

 王太子は手本のような笑顔で返事をしていた。

「代わりにシェラード伯爵が大きくなるなら、問題ないかな。」と。

 小柄な優男で特徴がないと思っていたが、義父となるシェラード伯爵はそんな男だろうか。よくよく考えれば伯爵が王太子に意見を出来るとは思えない。しかも今のはサミュエル侯爵家を潰すないし、爵位を落とさせるような言い草だ。

 シェラード伯爵が退出すると、王太子は深く息を吐いて呟いていた。

「引退したら、こちらに来てくれないかなぁ。他のよりもよっぽど戦力になるんだけど。」と。


 ローズが夜会に出ないと騒いでいると伝達に来たのはユーリである。コレット曰く「ご褒美を先に頂いたんだから、責任を取りなさい。」だそうだ。義両親に良いところを見せるチャンスだと、部屋に入ればベッドで顔を隠している可愛いローズがいた。

 声をかければピクリと反応するローズ。私が言ったことを実行する姿は可愛いが、ベッドはいけない。欲が出そうになる。綺麗なドレス姿のローズを世間に発表しなければ、義父や義母に怒られる。ベッドの持ち主であるコレットにもだ。

 ローズの可愛い手を握って会話をすれば、素直になるところが可愛い。乱れた髪は欲が復活しそうなので、整えるために直ってくれと撫で続けた。

 

 パーティーは今までの中で一番楽しかった。


 緊張で震えるローズ。私に顔が見えないように結い直したせいで、私が見ているのに気付かない。手が震える様は抱きしめたくなるほど庇護欲を掻き立てた。緊張している割に挨拶は堂々としていて、ウィンダム公爵夫人に相応しい女性だと微笑みが増してしまった。

 ダンスが始まればローズの緊張は解けたらしく、リードに従って踊ってくれた。ドレスよりもローズが輝いている。

社交だってあの方よりもずっと出来がいい。相手の名前を瞬時に言える。言葉遣いも、案内する内容も素晴らしい。話しながら繋いだ手を握ると、微かに握り返してくれる。ローズに嫉妬する令嬢が来ると苦笑いするのが耐え難い。手を引いて会話に加わり、牽制をするついでにローズの腰に腕を回してやった。細くて折れそうな腰にどんなドレスが似合うだろうと考えていると、後ろで水音と女性の悲鳴が聞こえて慌ててローズを庇った。

 しかし防いだのは王太子だ。使える君主でありがたい。令嬢がローズにワインをかけようとしたらしいが許せない。が、それは王太子やオスカーがどうにかするらしい。騒ぎを理由に休憩室に入れた。立ちっぱなしのローズの足が心配だったので助かった。

 休憩室にはカミラ嬢が覗きに来たらしい。だからローズの手を取ってみせた。それにはさすがのカミラ嬢もショックだったようで逃げたが、後で聞いたところ衛兵に捕まったらしい。混乱してお父上が手引きした道で戻らなかったのが原因だが自業自得だ。

帰りの馬車がローズと同じで夢のようであった。

頬をユーリにマッサージされたが、目の前にローズがいて励ましてくれる。痛みなど我慢できた。しかしローズを送ったあとにハリーたちが笑ったのは解せない。


======

「父上、カミラ嬢とはお話に出てくるあの魔女カミラですか?」

嫡男のジャックは手記から目を離してライルに問いかける。

「そうだな。あのカミラだ。姫を陰謀によって婚約破棄させ、婚約者の騎士を奪おうとした魔女のモデルだと言われている。」

 父であるライルは書類から目を離さずにスラスラと答えた。

「けれど父上は母上と結婚したではありませんか?」

「私は騎士ではないからな。」

「しかもこの手記。途中からローズローズって、どれだけ母上が好きなんですか。」

「毎日愛してると言っても足りないくらいだ。」

 ジャックが抗議しようが、ライルの頬は赤くなるどころか眉一つ動かない。

「諦めなさい、ジャック。お父様の頭の中はお母様と私たち家族と領民のことしか無いわ。むしろカミラの名前が出ただけ褒めないといけないくらいよ。」

 ライルに絶賛反抗期中の姉マーガレットがジャックの頭を撫でる。姉は容姿はローズに似ているのに、性格はライル寄りである。

「マーガレット、私も撫でなさい。」

 父が頭を差し出すが、反抗期の娘は撫でてくれない。

「お母様がお友達とお茶会だからと不貞腐れていては困ります。ジャックにはその手記は早いです。」

 長女のマーガレットは12歳。ジャックは10歳だ。

「ジャックが事実と架空の物語ではどれくらい違うか知りたいと言ったから読ませただけだ。」

 マーガレットは目を驚いて見開き、ジャックを疑うように見つめた。

「まさか魔女だとでも思っているんじゃないでしょうね。ただの悪女よ。」

 

 侯爵令嬢のカミラは分家の娘ターニャが王女殿下の侍女になったことを利用して他の男と運命の出会いをするように謀った。王女はジェイクにすぐに恋をしたが、他にも候補もいたらしい。相手にジェイクを選んだのは、会ったことはないがコレットがよく話題に出すローズに王女が悪感情を抱くと思ったこと。ジェイクの今までのローズに対しての態度で、派手に婚約破棄をしてくれると思ったからである。

 破棄されて傷心になったライルをカミラが落とすつもりだったが、そうは上手くいかなかった。王女が陛下に婚約の解消を相談したことによりカミラの企みは崩れた。侯爵令嬢のカミラよりも上の公爵令嬢や他国の貴族にライルが奪われる可能性もあった。だからターニャが王女を焚き付けて手紙を投げつけて円満に解決しないように目論んだらしい。

 ターニャはカミラを頼り、貴族の籍を抜けること。国から出ていくことを罰として修道院を回避した。以前から声がかかっていたマルク商会に嫁げば、隣国ではあるが優雅に暮らせるに違いないと思ったからだ。

 周りにはマルク商会の次男から言い寄られていると嘯いたが、実際は会長である父の妻になってくれと手紙が繰り返し届いていただけっただ。大陸の大商人の妻に夢見ながら国を出ようとすると、国境で一悶着起きた。ターニャが平民になっていると次男が気づいたのだ。

 王女のどの侍女でもいいから第五夫人にしたい。それがマルク商会の会長の望みだった。王女の侍女といえば、もちろん貴族に決まっている。ようやく引っかかった女は、いつの間にか貴族籍を捨てていたなんてとても言えない。次男は隣国に渡り、国境警備から見えなくなったところでターニャを捨てた。


「何故ターニャの情報を知っているの?」

 ジャックに本当のカミラの話をしていたライルにマーガレットが首を傾げる。

「数年後に農民の嫁として帰ってきたターニャが婚約者だった男に話したからだ。話した途端に追い出されたらしいがしょうがないだろうな。」

 ライルが深くため息を吐いた。

「婚約発表の夜会で王城への不法侵入をした罪で捕まったカミラは洗いざらい話して、きつい修道院に入れられた。生涯出ることは無いだろう。絵本はその前に出版されていて、風貌がそっくりだから話題になった。」

「ヒロインにヒーロー、悪女までそっくりですもの。それに婚約解消まで予言書みたいですわ。」

「本人は大変迷惑だがな。周りは関係ないのさ。」

 あの頃迷惑したことを思い出し、それに対して妻のローズのした行動についライルは笑い始めた。途端に子供たちは呆れた目をする。

「きっとお母様のことでも思い出したのでしょう?続きは今度ね、ジャック。」


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続きは少しづつ投稿します。

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