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4 仕事!

 2000ゴールドあれば、1日困らないんだったら、ギリギリ2000ゴールド稼いで、あとは遊んでられないかな。

 我ながら最低な考えだと思う。

 でも、働いたことないし、働かなきゃならないなんて考えたこともない。それに働くのなんて遠い将来の話だと思っていて、それまで親に養ってもらう気満々だ。親に反抗して自立したいと思ったこともないわけではないが、どう考えても面倒で、今のままの方がいいに決まっている。


 はぁ、それが、自分で働かなきゃならないなんて…。


 そんなことを考えながら、3階に降りる。




 エレベーターの扉が空いたとたん、そこは喧騒の中だった

。鎧を着た大男が、何やら端末を操作しているようだ。大勢で端末を覗き込んで、「こっちはどう、あっちがどう。」と大きな声で揉めているグループもある。

 条件のいい仕事があったのだろうか。端末に向かって、肉食動物が獲物を見つけたときのような、ギラギラした目を向けている。真剣な様子で端末を睨むように見ていたグループのうち、1つからは喜びの声が上がり、それ以外からはため息や舌打ちが聞こえてきた。好条件の仕事に就けたグループは早速出掛けるようだ。


 ひょえ~!!あんな強そうな人がしている仕事なんて、俺にできるわけないだろ!?無理!無理!無理!!


 仕事を探す人は入ってくるし、仕事を決めた人は出ていくし、エレベーターの前にいると邪魔になる。場所だけ少し移動し、呆然とその光景を見ていた。




「兄ちゃん、そんな格好だけど、勧誘待ち?レベルいくつ?強ければ、一緒にどう?」

 鎧を身に付けた大柄の男が話しかけてきた。戦士といった感じだ。


 うえ~??何をどう勘違いされたらそうなるんだ!?


「俺、全然強くないんです。ところで、勧誘ってなにっすか?」

 わからないことがあったら、聞いておかないと色々困る。本当は面倒なことは避けて、一人でいられれば一番なのだが、お金のない俺は、そういうわけにいかないだろ。

「一人じゃ無理そうな依頼や急いでいるときなんかに、複数でグループを作るんだ。条件が合えばな。…勧誘待ちじゃないなら、兄ちゃん、どうしてこんなところでボーッとしてるんだい?」

 真剣な表情で、ただ疑問に思たことを聞いてくれたようだった。


 俺の行動は変だったってことかな…。


「初めて来たんですけど、みんな強そうで俺なんかにできる仕事があるのかって、心配になっちゃって。」

 「ほうほう。」と頷きながら聞いてくれて、聞き終わると人懐っこい笑顔で言った。

「そりゃ、大丈夫だって。条件をちゃんと入力して探すんだ。ここにいるとまた勧誘されるぞ。早く探せって。」

 端末の方に行くように促される。

「あの、また、強くなったら誘ってもらえますか?リョウって言います。」

 アカリのときには名乗って連絡先が登録されたはず。

 少しの間だけ目を丸くしたが、すぐに人懐っこい笑顔に戻った。

「俺は、マックだ。頑張れよ。」

 手を軽く挙げて見送ってくれた。




 空いている端末の前まで行き、『プレイヤー表示』をすると、マックの名前があった。少しだけ嬉しくなり、鼻歌を歌いながら、仕事の一覧を表示した。

 何の条件も絞らなかったら本当に色々な依頼や仕事がでてきた。依頼料金が高いものに目が釘付けになる。


[玉ねぎ50個 至急(30分) 5000ゴールド]

[護衛 時給5000ゴールド]

[ドラゴンの鱗 依頼開始から6時間 100万ゴールド]

[運搬 アメリカまで 1万ゴールド(交通費別)]

        ・

        ・

        ・


 玉ねぎはどっかで採集できるのだろうか。買って届けるとしたら、仕入値を考えたらそんなに儲からないのか。ドラゴンの鱗なんて普通に手に入るのか!?しかも6時間で出発して、狩って戻ってくるなんてどんな凄腕剣士だ?


 一覧の上から良さそうなものばかりみていたら、だいぶ時間がたっているようだった。制服であろうスーツをビシッと着た、このフロアの担当だと思われる男性が直ぐ近くに立っている。

「使い方を説明しましょう。」

 いや、使い方がわからなかったわけじゃないんだけど…。上から確認するのが面白くて、ついつい時間がたっていただけなんだが…。

 無下にすることもできずに、お願いする雰囲気になってしまった。

「検索条件を押してまして、まずは地域を選びましょう。希望の地域はございますか?」

 パッと表示された地域一覧を見ると、アメリカ、アジア、ヨーロッパと、世界規模の依頼一覧だったらしい。


 規模がでかすぎ…。東京でヨーロッパの依頼を受けて、行けるのか!?


「近くで…。」

「では、現在地を選択いたします。」

 左上に東京と小さく表示された。

「レベルや職種などの指定はございますか?」


 お!これはかっこいい仕事を選べるってことだよな!?


「レベルは1で、護衛とか冒険とかやりたいです!!」

 こちらを一瞬見た気がするが、気のせいだったのだろう。すぐに検索条件を追加していく。レベルを1に設定し、希望職種にレ点を打っていく。

 表示された仕事は、[0件 検索条件を変えてやり直してください。]だった。

 次は、職種をよーく見て選ぶ。[採集][討伐]にもレ点をつける。

 [0件 検索条件を変えてやり直してください。]


 どうすりゃいいんだ!


「差し出がましいことを申し上げますが、職種は全ての方がよろしいかと。」

「じゃ、じゃあ、それで。」


 おっ!めっちゃいっぱい!100件以上ある!?


[ヨモギ 500ゴールド/100g]

[皿洗い 時給900ゴールド]

[鹿の角 5000ゴールド/100g]

[皿洗い 時給1500ゴールド]

[袋詰め 時給900ゴールド]

[運搬 アメリカまで 1万ゴールド(交通費別)]

        ・

        ・

        ・

        ・

 鹿の角って高くないか??どうやって手にいれるんだ??

「あの、鹿の角って俺でもできるんですか?」

 一度目を見開いたあと、満面の笑顔になる。

「鹿の角をお持ちでしたか。それなら届けるだけでございます。」

 持ってる訳じゃない!!

「鹿の角って手に入れられるんですか?」

 「おぅ…。」っと、額に手を当てた。

「狩りに行くか販売しているものを買うかですが、町の外にでるには少なくともレベル10は必要です。購入するとなると、利益はでないかと。」

 はぁ~??もう仕事を選ぶだけで疲れてきた。

 ちょっとやけくそだ。

「俺にできるものって何ですか?」

「では、少々確認させてください。特殊なスキルはございますか?」

 あるわけないだろ。首をふる。

「そちらの服装で仕事されるということでよろしいでしょうか。」

 武装できるかって聞かれてるのか?鎧とか持ってない。

「そうです。」

「ここから近いものですと、こちらがおすすめです。」

 指差したのは、[皿洗い 時給900ゴールド]だった。選択すると、詳しい説明がでてきた。

 [大衆食堂 とりまる]でとにかく皿洗いすればいいらしい。体力の関係で4時間くらいを勧められたのでギリギリ1日過ごせる3時間にした。食事を持っていって回復しながら仕事してもいいらしい。




 仕事選びだけでドッと疲れた気がする。ステータスを確認すると、少し減っていたが、感じているほど疲れてはいないようだ。気疲れってことか…。

 [大衆食堂 とりまる]は、本当に近かった。おすすめは間違っていない。


 時給安いけど…。もっと、バーンってたくさん稼ぎたかったな。カッコいい職種がよかったな。


 とりまるに入ると、パブリックオフィスで登録があってから待っていたらしく、仲の良さそうな夫婦に迎え入れられた。「洗っていない皿がすごくて、ありがたいわ~。」っと、大歓迎だ。これだけニコニコと歓迎されると、笑顔が伝染したようで、何だか頑張ってみようと思えるから不思議だ。


 営業をしながら仕込みをしている店主夫婦に簡単な説明をしてもらい、洗い場を担当する。


 ゴシゴシゴシゴシ…。


 皿洗い、初めてかも…。

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