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2 夢??

 あれ?どこ行っちゃったんだろう。


 他にやることもないので、ピンクの彼女を探す。少し早歩きで、元来た道を戻っていく。


 横道かな?


 覗き込んだ道で、彼女が店に入っていくのを見つけた。


 あれ?


 さっきまでのローブ姿と服装が違った気がする。


 別人?


 ちらりと見えただけだけれど、髪の色といい長さといい、同じ人だと思う。

 店の前まで来てみた。店の名前の前についているナイフとフォークの印から、レストランだということはわかる。立派な門に、重厚な扉。植木もよく手入れされていて、落ち着いた雰囲気だ。外にメニューや値段が貼り出してあるような店ではないらしい。


 高級そうだな。さすがに入ったら不味いかな。


 やることがなくなってしまったので、何となく、彼女が出て来るのを待ちながら、周りをブラブラする。




 それにしても、暇だなぁ。やることがない。何度もポケットに手を伸ばし、スマホがないことに気づく。


 そういえば、ここってどこだろう?


 俺は、夜中までゲームをしていて、行き詰まったことは覚えている。その後この世界に来たんだから、寝落ちして、夢の中ってことか?あまりにリアルだから夢だなんて思わなかったが、そう考えるのが一番自然なんじゃないだろうか。


 夢の中でも暇なことって、あるんだなぁ。


 待てよ。夢の中なら、お金のことなど気にせずに店に入ればいいんじゃないか。自分の夢なら、何とかなるだろ。


 ピンクの彼女の入っていった店に向かって歩き出す。足を動かしているつもりなのだが、あまり進んでいない気がする。よく下を見ながら足を動かしてみると、足はあまり上がっていないし次に下ろすところがほぼ変わっていない。


 あれ?なんでだ?


 自分の夢の中なのに思いどおりにならないなんて。一括りに夢っていったって、怖い夢を見ることだって、思いどおりにならない夢を見ることだってあるんだし、そうゆうことかな。

 習慣だろうか。道の真ん中で立ち往生しているのは交通の妨げだと思い、動けないながらモソモソと道の端に寄っていく。

 ちょうど武器屋のショーウィンドーの前まで来てしゃがみこんでしまった。


 ガチャ!


 武器屋のドアが開いて、店主が出てくる。

「おい!あんちゃん。大丈夫か!?」

「あ、大丈夫です。」

 ついつい、いつもの調子で、即答していた。少し転んだとか足を踏み外したとか、恥ずかしくて痛いのも誤魔化して、大丈夫と言ってしまう。

 体調が悪いわけでもなんでもないのに、動けなくなってしゃがみこむって、変じゃないか?しゃべれないほど体調が悪ければ、大丈夫なんて即答しなかったのに、あ~!!何で助けを求めなかったんだ!?


 歩けなくなって、しゃがみこんで、次は、寝転がるのか?

 もしや、夢が覚める前兆だったりして!?最後にピンクの彼女に声をかけて、あのカッコいいイヌにモフモフしてみたかったな~。




「ねぇ、あなた。手を出して。」

 へ?

「ほら、はやく!」

 ノソノソと手を出す。前ナラエのように両手を小さく付き出したら、グイっとひねって手に平が上になるようにされた。そこに、温かいものがのせられる。

 うっすらと目を開くと少し不格好なおむすびだった。

「ほら、はやく食べて。」

 洗ってもいない手の上に直置きされているんだけど…。

 綺麗そうな上の方を一口食べると、今まで飲まず食わずだったことを思い出す。

「全部食べて。」

「でも、手…洗ってないし…。」

 くれたのに食べられなくて申し訳ない。潔癖ではないが、一般的な日本人くらいはキレイ好きな自覚がある。

「菌とか関係ないから大丈夫。」

 関係ないってどういうこと?と思ったが、地面を触ったはずの自分の手は、全く汚れていなかった。砂っぽさもない。

「早く食べて。」

 自覚はなかったが、話すのも困難なくらい体力がなくなっていたらしい。反論もできないし、はやく食べてと急かされるので、仕方がなく手に触れていない部分を口にする。二口三口と食べ進めて、おにぎりは半分以上食べたところで消えてしまった。

「あれ?」

 直におにぎりに触っていた、手の平部分にベタつきさえない。

「え?」

 何度か手を握ったり開いたりした。

「ステータス表示って念じてみて。」

 今まで頭もボーッとしていてろくに前も見ていなかったから、あまり気にしていなかったけど、顔を上げて見てみれば、自分と同じくらいの年の女の子がしゃがみこんでいた。肩につくかどうかの長さの黒髪が風に揺れている。整った顔立ちだが少し猫目できつそうに見えた。真面目そうな印象の彼女は、ボーッとする俺にイラついているようだ。

「ステータス表示よ。」

 おにぎりをくれたのは間違いなく彼女だろうし、感謝して従うべきなんだろうけど、少しきつめに言われると素直に従う気になれない。

 自分の夢の中で、人に指示されるなんておかしくないか…。普通にめんどくさいし。

「夢の中なのに…」

 …うるさいな。


 最後の文句は、口から出てしまう寸前で飲み込んだ。

 文句は口にしなかったはずなのに、目の前の彼女は、悲しそうに目線を下に向けた。


 言っちゃってないよね?おにぎりをくれた恩人を故意に傷つけるつもりはない。直前でやめてよかったかも…。


「夢ではないと思う…。」

 長い睫をふせて地面をにらみ、唇を噛み締めるようにしている姿は、なぜか、すごく悲しそうに見えた。

「じゃあ、ここ、どこ?」

 はっと目を見張ったあと、嫌そうな顔で、目線が彷徨う。仕方がなさそうに開いた口からはとんでもない地名が飛び出した。

「…東京だって。」

 いや、いくら何でも、田舎者の俺にだってわかる。日本にこんな変なイヌをつれていて、堂々と武器を売っている店なんてないだろ。模造刀とかならあるかもだけど、武器専門店なんて考えられない。

「いやいやいや、それはないっしょ。」

 軽い調子で否定すると、「元気になったのなら、住人に聞いてみれば?」と言われた。近くを通る人に手当たり次第聞いてみても、「東京。」という答えが多かった。なかにはざっくり「日本。」と答えた人もいる。ここが東京のはずがないと訴えても、訝しそうな顔をする人ばかりだ。リアクション大きめに訴えていたら、段々不審者のように距離をとられるようになっyた。誰も理解してくれないなんて、凹んできた。

「そろそろ諦めてくれない?次いっていい?いつまでもそれやっていると、また体力なくなっちゃうから。」

 まだ納得できていないけれど、通行人からちょっと距離をとられるようになってしまったし、聞き捨てならないことも聞こえたので、黒髪ボブの女の子の前に戻る。

「また体力がなくなるってどうゆうこと?」

 呆れたように大きくため息をつく。

「だから、ステータス表示って念じてみてってば。」

 東京の衝撃で忘れていた。

「ステータス表示…」

 小さく呟くと、視界に透けている表示画面が浮かび上がった。


 おぉ!ゲームの世界っぽい!!よくある作り話みたく、転生したとか!?だから、ここが東京で、カッコいい犬がいて、武器屋が存在するのか!!

 ちょっと楽しくなってきたぞ!


「こりゃ、ゲームだ!!すごいぞ。」

 女の子の俺を見る目が冷たくなった気がするが、そんなことは気にしない。ゲームの世界で暮らすなんて、望んだってできない。やめなさいって言う人もいないし、学校で中断されることもない。楽しみべきだろ!?


 えっと、なになに?レベルは1。


 すぐ下のバーが少し緑に変化している。


 経験値ってことか?経験値を稼ぐようなことやってないけどなぁ。


 それから、体力のバーがちょっとしか残っていなくて赤く点滅している。


 体力がなくなるってこう言うことか!


 その下に、空腹~満腹のバーがあり、体力ほどではないが少なくなっていて、オレンジ色になっていた。

「すごいなぁ!」

 ステータス表示には、かなり細かく、防御や素早さなどもあるが、何に影響を及ぼしているかわからないものもある。

 俺の様子を観察していたのか、タイミングよく声をかけてくる

「右上にお金の欄があるけど少しは持っているの?」

 お金!?どこにかいてあるか探して、ガッカリする。

「0ゴールド…。」

「やっぱり。ついてきて。残りの体力で移動しなきゃならないんだから、つべこべ言わないで。」

 ん~。言われていることは正しいんだろうけど、何かイラッとする。ムスッとしたのが伝わったのか、軽くにらまれた。


 …はいはい、ついていきますよ。

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