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プロローグ

 小学生の時から広さの変わらない教室の机を窮屈に感じながら、窓の外に広がる、どこまでも続くような青空を見る。小さい頃は、この青空を見ると外に駆け出していきたい衝動に駆られたが、今では帰り道の暑さを想像して嫌気がさす。近くの海水浴場なら涼しくていいかもとチラリと思ったが、クーラーのなかには叶わないと考え直す。

 担任の、長期休暇の心得を聞き流しながら、白い曇が流れていくのを頬杖をついて眺めていた。

「おい!杉崎!!杉崎陵!!聞いてるか!?」


 お!なんか、呼ばれている!?しかもフルネーム!?


 クラスのほとんどの視線が俺に集中していた。クラスのアイドル宮本さんも斜め後ろを振り返るようにこちらを見ていた。

「すんませーん。聞いていませんでした!」

元気よく答えると、皆がクスクスと笑った。宮本さんもコロコロと鈴のなるような声で笑っているはず。聞こえないけど。

「2学期が始まる前に、夏期補講があるから忘れないように!」


 はぁ~?夏期補講?担任がわざわざ名指ししてくれたせいで、"知りませんでした"では乗りきれなくなってしまったではないか。あぁ、めんどくさい。"忘れてました"でなんとかならないかなぁ。




 退屈な時間に耐え、灼熱のアスファルトと照りつける太陽に耐え、自分の部屋のこもった熱風に迎えられた。すかさずエアコンのスイッチをいれ、流れるようにパソコンのスイッチをいれる。背負って帰ってきたリュックサックを床に放り出すと、教科書類が床に当たる固い音がして夏休み課題が出ていたことを思い出す。


 うわ。嫌なことを思い出してしまった。あぁ、めんどくさいめんどくさい。


 夏休みは長いんだ。今日くらい遊びまくったってバチは当たらないと課題については頭から閉め出す。ポテトチップスの袋とコーラのペットボトルを掴むと、部屋着に着替え、パソコンの前に向かう。


 よぅ~し!!今日は好きなだけゲームができる!!


 俺の好きなゲームはRPGだ。ストーリーを進めるのがたまらない。


 夏休み中に今まで放置していたやり混み要素をコンプリートしなければ!!


 パソコンに向かっていると、黒猫のレモンが、画面の前に陣取る。


 俺がゲームに夢中になっているとくるんだよな。


 画面や俺の顔にペチペチとゆっくり動かす尻尾が当たる。


 うん。邪魔。


 抱き上げて膝にのせる。優しく撫でると機嫌の良いゴロゴロが聞こえてきた。


 撫でてるとゲーム、できないのに。


 しばらく撫でてからゲームを再開すると、目線を感じる。名前の由来となったレモンキャンディのような瞳でこちらを見上げている。


 わかったわかった。撫でればいいんでしょ。


 またしばらく撫でて、そろそろいいんじゃないかとレモンを膝から下ろす。


 よし!続き。


 そう進められないうちに、レモンが画面の前に立ち、尻尾でペチペチ…。


 レモンの甘えん坊め…。




 レモンとの攻防が何度めかに入ったところで、母親の帰ってきた音がする。レモンは俺の膝からシュタっとおりて、スタスタと部屋から出て、リビングにおりていってしまった。


 レモンめ!さんざんゲームの邪魔をしておいて、おやつくれる人が帰ってきたとたん、これだもんな。


 こうすんなりいなくなられると寂しさと悔しさを感じながら、ゲームを再開する。


 俺だって、腹減ってるんだ。夕飯何かなぁ。




 満腹だし、単純作業の繰り返しになってきたし、なんだか眠くなってきたような…。


 あれれれ?なにか見落とした!?


 進まなくなってしまった。画面内に広がるオープンワールドのなかを右往左往。


 はぁ?何でだ?


 今日は急いでいるわけでもないし、攻略サイトを見るのも、なんだか負けたようで悔しい。


 急いでいるわけでもないし、今日は自力で!!絶対なにか見落としたんだ。もう一度戻ってやり直せば!!


 もう一度ひとつ前の町に戻って、広い草原に出る。痕跡をたどりながら進めていく。


 あぁ、さっきも見た光景で、なんの状況も変わらなくて。


 コクン。首が重力に逆らえずに、カクンと落ちる。


 ヤバい…。眠い。せっかくの休みなんだからもうちょっと。


 コクン。左手が滑り落ちる。


 いやいや、寝てる場合じゃないし。


 なんとか肘をついて頭を支える。あぁ、ちょっと頭が重い。机に寄りかかるようにして支える。


 あ、ね、ねむ………





 気がつくと、周りが明るい。

 え!?ビル?なんだか都会っぽい。

 

 ここどこ!?

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