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第一階層~第三階層

億河サウラは半年前に突如彗星の用に現れ、瞬く間に100万人登録を突破したVtuberだ。

耳障りの良い声とちょくちょく漏れるエキセントリックな発言、それでいてあふれ出る天使オーラで数多のファンを魅了している。かくいう俺も俺も魅了されている一人だ。


その彼女が本日夕方配信をするのである。


アーカイブで見ればいいじゃないか? 


馬鹿野郎、根本的に無理な時間ならともかくリアタイ可能な時間にリアタイしないとかありえないだろ!


スマホで見ればいい?


自宅のディスプレイの大画面で見るのが良いんだろ! 後表だとノイズ入るし!


というわけで自宅まで全力疾走してきたのである。ここまで10分未満、学校から俺の自宅までの距離は割と近い。


──家の入口までの距離はだけどな。


俺の帰宅はここからが長いのである。


別に、住んでいるのが大豪邸で正門くぐってから屋敷迄数kmありまーすとかそんな話ではない。というか俺がそんな大豪邸に住むお坊ちゃんなら、急ぎなのに走って帰って来てない。


じゃあ何故かといえば、俺の家がダンジョンの最下層になるからだ。


はいここで説明しよう。


今から12年前の事、ある日突然世界中の様々な場所に突如ダンジョンが出現した。


当然、日本にも数百のダンジョンが発生した。有名なのが都営大江戸線のホームが入り口となった東京大迷宮。階層数がゆうに3桁を超えるという飛んでもない広さのダンジョンだ。


さすがにその規模のダンジョンは他には大阪梅田の迷宮くらいしかないが、小規模なものはそれこそ様々な場所に出現した。某神社の境内や幽霊トンネルの途中、学校の体育館とか果ては民家の軒先にまで。


──そう、ウチの家の敷地内にも出現したのである。


しかも何故かウチの敷地内に現れたダンジョンは、ウチの家を取り込む形で出現した。


割と特殊なケースではあるのだが、こういう既存の施設を取り込むケースは他にもあるらしい。


ん、なんでそんなことになったのかって? 知らねえよ、専門家に聞いてくれ。


とにかくだ、ダンジョンに取り込まれた俺の自宅はこのダンジョンの最下層にある。


さすがに東京大迷宮みたいなふざけた広さはないけど、それでも全11階層。しかもこれはどのダンジョンでも共通なんだが、ダンジョンは各階層にフロアマスターと呼ばれる存在がおり、それを倒さないことには先に進むことができない。


ようするに俺は今から家に買ってサウラ嬢の配信を見るために、10階層の攻略をしなければならないのだ(11階層目は俺の自宅)。


時計に目をやれば、配信開始までの残り時間はすでに30分を切っていた。最早一刻の猶予もない。


「【インベントリ】」


スキルによる格納空間から俺は愛用の武器を取り出すと、いつも通りに自宅ダンジョンへと突入する。


●第一階層


第一階層はそこかしこに池のある階層で、水棲のモンスターが多い。

そんな中を俺は剣を抜かずに一気に進み、階層の最奥にある小さな湖の中に伸びた橋の上をどたどたと音を立てて駆け抜けて行く。


すると、湖の中からマグロに手足が生えたような外見の人(?)物が浮かび上がってきて声を掛けてきた。


「おや、坊ちゃんお帰りなさい」

「ヌーメさんただいま! ちょっと通りますよ……」

「どうぞどうぞ」


彼は第一階層の主である魚人のヌーメさん。かれこれ12年来の付き合いになる相手だ。いやこのダンジョンの住人概ね12年来の付き合いだけど。


彼は特にこちらに襲い掛かってくる様子はないので、俺は手を振りながらその横を走り抜ける。


ヌーメさん、基本俺にくっそ甘くていつもここ素通りさせてくれるんだよね。マジありがたい。彼の眷属の他の住民も襲ってこないから猶更だ。正直クソ急いでいる今の精神状態だと「愛してる! 抱いて!」と口走りそうだがヌーメさん生臭いので止めて置く。ほんといい人なんだけどね……


●第二階層


第二階層のボス、ゴブリンニンジャのホブヤマさんは取り込み中だった。分身術を使って、複数人の人間と交戦中である。相手は大学生くらいの男性3人組だ。それを彼は軽くあしらっている。


一応ダンジョンは自由に侵入可能なので、俺以外の人間がいてもおかしくない。ただこのダンジョン最下層まで行っても俺の家しかないんだけど、もしかして新聞の勧誘か何か?


いや、なんか外見チャラいし彼女達が目的だろうな。でも明らかにホブヤマさんが圧倒してるし、特に心配はいらないか。


「おや、ぼっちゃん、お帰りなさいませ」

「今忙しそうだし、邪魔すると悪いからこのまま行くね!」

「はい、どうぞ」


そのままバトッている横を駆け抜けていくと、チャラ男三人組の一人が声を上げた。


「おいちょっと待てよ、なんであいつはフリーパスなんだよ!」


家に帰るだけだからだよ。


と言いたいところだが、ホブヤマさんが通してくれる理由は別。


「ぼっちゃんはすでにこの階層は攻略済みだからだ! ほら貴様らはどうした、ここはまだ二階層だぞ! 分身量さらに倍」

「あばばばばばばばばばば」


そう、当然の事だが俺はすでにこの階層は攻略済み。というかこのダンジョンが攻略済みだ。だって攻略しないと家に帰れないし。


ホブヤマさんは物わかりのいい人なので、基本的に急いでいる時にはそのまま通してくれる。思わず「愛してる、抱いて!」と言いそうになるが、分身状態のホブヤマさんに抱かれると滅茶苦茶にされてしまいそうなので余計なことはいわない。


──さて、ここから先が問題だ。この先の階層のフロアボスたちはヌーメさんやホブヤマさん程物わかりがよくなく、きっちりフロアボスの役目を果たしにくるからな。


●第三階層


「ぼっちゃん、ここから先へはいかせ」

「【アイアンフィスト】からの【タイタンフィート】!」

「ぷぎゅるっ!?」


突然正面に飛び出してきた第三階層のフロアボス、スライムのトーチさんが視界に入った瞬間に俺は足の攻撃力を増加するスキルと踏みつけダメージを強化するスキルを発動させて彼を踏みつける。


無惨、踏まれたトーチさんは爆裂四散!


ゼリーのようなもので構築された彼の体は周囲にバラバラに飛び散った。


──が、その破片がもぞもぞと動き一カ所にゆっくりと集まって行った。数分もすれば元の状態に戻るだろう、そういう種族の人なので。


とりあえずそれを待つ理由は俺にはないので、第四階層へと向かう。


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