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きっと、夢のはなし

 カツン、カツンと処刑台への階段を上る音が響く。

 静寂の中、一人の女だけが歩いていた。

 金色の髪をなびかせ、青色の瞳で己が行く場所を見つめて。罪人であるにも関わらずそのたたずまいは堂々としていた。

 女は名をクリスティーナ・モーグと言う。貴族であるにも関わらず、数多の重罪を犯し、悪逆令嬢とも呼ばれた愚か者である。


「では、これより罪状を告げる」


 登りきると同時に、罪状の読み上げが始まった。これが終わると同時に、彼女の首は刎ねられるのであろう。最も、読み上げられる罪や、自分自身の首など女にとってはどうでもいい。女は罪を数えてから犯したのだから。いまや、女の思うことはただ一つ。月の光のような銀の髪を持った、あの美しい少女を自分のものにできなかったこと程度だ。すべて、そのために行ったというのに。最も、このようになってしまえば、もはやどうあがいても手は届かないのだが。

 故に、女の視線はここにいる想定外の存在に向けられる。親友であった王女マリーだ。いや、もう王女ではなく、女王になる。女の罪がもたらしたものだ。証拠に、手には剣が握られている。女王と女は互いに視線を合わせ、読み上げが終わるまで逸らさなかった。女王は憎悪をもって、女は内心興味のみで見つめあっていた。

 

 どれほどの時間がたっただろうか、ようやく読み上げが終わった。役目を終えた人間が一礼し、去っていった。そして、処刑場には、女と王女が残された。

 ここで女は、間抜けにも、処刑人がマリーであることに気づいたのだった。それでも、女は顔色一つ変えなかった。

 ほんの少し、静かな時が流れた。クリス、と女の愛称が風に乗って消えた。


「あなたの罪は、私が裁きます」


 淡々と、しかし確かな憎しみを込めて、王女は告げた。剣を握り直し、一閃。瞬きする間すらなく、見事に悪逆令嬢の首が飛んだ。

 しかし、最期の瞬間、いままでの無表情が嘘だったように、女は笑っていたのだった。

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