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涙の魔法使い 〜その悲しき運命を超えた先に〜  作者: 夕凛
「バイアスの弾薬」編 第一章 『身分』
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〜ユーリの弟子〜

 自分の弟子を三人とも集め、一人一人自己紹介(主に、名前と年齢、使える魔法等)をしてもらった。

 弟子は男子一人と、女子二人。男子の方は、名をエトワールと言って年齢は十六歳。

 女子の方は、この前エアスの助力の際に助けたマスティカとロイーヤ。

 年齢は二人とも十五歳だそうだ。


 三人の力量を測るため、一対一の模擬戦をすることにし、当然、僕には戦術を縛るという制限をつけ、彼らに僕の戦術を選ばせた。


「自分の得意なものを選んでね」


 すると三人はそれぞれ、剣術を二人が、魔術と剣術を一人が選択した。模擬戦なので、剣は木刀である。


「じゃあまず、エトワールくんから行こうか。ルールは、最初に相手の身体へ少しでもダメージを与えた方が勝ちとする。これでいいかい?」


「はい!」


 手始めに、数度剣を交えてみる。

 エトワールの剣術はなかなかのもので、魔法も他の者より負けじと劣らないといった感じだ。

 とてもバランスが取れている。

 魔法は闇系魔法でブラックホールのようなものを作り出して周りのものを吸い込んだり、相手を何処かへ飛ばしたりできるらしい。その他にも、黒紫色の(いかずち)を放ったり、またそれを剣にまとわせたりして戦っていた。


黒紫(こくし)雷滝(かみなり)!」


 この技が放たれた途端、空から雷が滝のように降ってきた。

 僕がそれらを避けている最中にエトワールが全速で斬りかかってきたので、その一太刀をあしらって背中に一撃を入れ終わらせた。


「ハァ...ハァ...ハァ......師匠は、何というか、怖いものなしですね。それだけ強くて羨ましいっす」


 先程の魔法は体力消費が著しく激しいらしく、既に息がきれている様子だった。


「よく言われるよ。そういった言葉は。僕は確かに強いかもしれない。自分でも分かってる。でも、それでも怖いものはある。」


「師匠でも...怖いもの......っすか......?」


 エトワールとの会話が気になったのか、マスティカとロイーヤも聞きにくる。


「生きていれば、人は誰だって傷つける。どうあがいても、他人を傷つけてしまうんだ。関わりがなくても、無自覚でも、傷つけたくなくても傷つけてしまうことは、ざらにある。例えば僕なんかは、必死に努力しても報われない人達を傷つけてる。ただ、そこに居るだけで。この言葉さえ、煽りと捉えられる事だってある。自分はこれから何を傷つけて、傷付けたものに対してどんな影響を与えていってしまうのだろうか。そんなことを考えてるとね、少し怖いよ。考えすぎだとも言われるけど、実際そうだ。誰かを守るために他人を傷付けたり、殺したりしなくてはならない時だってある。それでも、傷付けたり殺したりした自分を恨んだり、哀れんだり、悔やんだりすることは間違っていると僕は思う。君たちも、覚えておくといい。無関係な人でも同じことだ。これから関係を築く事になるかもしれないからね。人との関係を築くってことは、自分もその人も傷つき、傷つける覚悟をしなくてはならない。人との関係を深くするなら、その傷を、より深くしてしまうことを覚悟しなくてはならない」


「自分も...他人も...傷付ける覚悟......ですか......?」


「僕が読んだ本に書いてあった言葉だ。この言葉を知ったときは、僕も結構考えさせられたよ」


 そう告げると、思ったより三人とも深く考えているようで邪魔するのも良くないと思い、しばらくそっとしておいた。無理もない。いきなりあんなことを言ってしまったのだから。まぁ、いい機会だったと思えばいいか。

 するとそこへ、エアスがひょこっと現れた。どうしたのかと聞くと、自分も弟子にしてほしいとのことだ。弟子の選抜をした時は、任務があってどうしても頼めなかったらしい。僕はそこにいる三人に話した先の言葉をエアスにも伝えた。やはり同じような反応だった。

 五分程たった後、三人にエアスを紹介しその後マスティカとロイーヤの模擬戦を行ってから、その日の稽古はお終いにした。


「今日は任務もないのに、朝から色々あって疲れた...」


 そうぼやきながら一度部屋に戻り、少し暇をいれてから次の任務の内容を聞きにフレナの部屋を訪ねた。


「出立は明後日の早朝、五時半頃だ。ここより、九十kmほど北東へ進んだ所へ進んだ所に、貴族共の軍が集結しているらしい。その勢力の偵察、あわよくば速やかな物資の破壊、敵兵力の削減が望ましいとのことだ」


 まてまて。ということは、この任務が成功するか否かでこの反乱軍の行く末が決まるということじゃないか。とんでもない任務を仰せつかったものだ。

 こちらも万全の対策をしなくては。


「一つ質問をよろしいですか?」


「何だ?」


「偵察地へはどうやって行き、どのくらいかかる予定なのでしょうか?」


「徒歩だ。途中で森を抜けるからな。時間は早くて五、六時間てとこだろう」


 冗談じゃない。そんなことをしていては見つかってしまう可能性が高すぎる。いくら二人しかいないとはいえ、歩いてノコノコと敵陣に向かう奴があるものか、と心の中で突っ込む。


「そうですか。なら、一つ提案なんですが、僕の魔法を使って空から行くのはどうでしょう。三十分もあれば、ついてしまうと思いますが」


 そう言うと、フレナはフフフと笑って「是非使わせてもらおう」と言ってきたので、移動手段が確定した。空なら森の中を飛んでいけばそうそう見つかることもないだろう。

 そして大体の任務内容を把握た後、二人で作戦の打ち合わせを済ませた。

 翌日、弟子たちに任務の事を伝えると「自分たちで鍛えて待ってます」と言って皆僕の留守を快く承諾してくれた。

 さて、今日はどんな稽古をしたものだろうか。とりあえず、エアスとエトワールに二人で模擬戦をしてもらった。その間に、マスティカとロイーヤに二対一の剣術訓練をすることにした。使用するのは当然木刀。「二人で自由に攻撃してきて構わないよ」と言った。

 彼女たちは普段からとても仲が良かったので、その仲の良さは強い武器になると考えたからだ。少しでもコンビネーション力を高めておきたいと思った。


「シエット流、暗殺術・剣式!無音(むおん)の残像」


 マスティカが消え、辺りにマスティカの残像がいくつも見えた。その直後、ロイーヤも仕掛けてきた。


「シエット流、暗殺術・蝶式!音無(おとなし)の太刀」


 こ刀を振った音が聞こえず、後ろからの攻撃も、気が付くのに時間がかかる。正面から一太刀しか振ってないように見えても、実際は複数の方向からほぼ同時に振り下ろされている、なんてことがあり得る厄介なことだ。なる程、面白い。暗殺にはうってつけという訳だ。逆にマスティカの方は、剣が振り下ろされる方向が分からない。残像が複数見える程物凄いスピードで動いているのにも関わらず、音がしない。故に、どこからその剣が振り下ろされるか、予測不可能である。

 これは、暗殺の際、暗殺対象に気付かれたときの(すべ)だろう。残像であっても姿が見えることから、そうとわかる。


「おっと...危ない危ない......頬を(かす)めるところだったよ」


 二人は悔しそうだ。


「そうだね...課題はコンビネーションかな。僕から言わせればまだまだだね。今の事を例に挙げるなら、二人で同じところを狙ってしまっている。故に僕に逃げ道を与えてしまっていたりする」


 今の彼女たちに最も必要なアドバイスだ。一点狙いをすれば、自ずと敵に悟られる。ましては二人で狙ったとなれば尚更だ。

 僕とユリウスならこうはなるまい。

 性格も違うから狙いを定める場所も違うだろうが、それでも被りそうになってしまうときはある。

 お互いに眠いときとか。

 そんなときは、瞬時にどちらかが狙いを反らす。

 それが出来れば、彼女たちの技はもっと光るだろう。

 ところで、エアスとエトワールの方はどうなっているだろうか。

 彼らのところへ目をやる。


弾薬剣技(ソードオブバレッツ)舞姫(まいひめ)』!!」


 エアスが放ったその魔法は、剣の太刀筋が光り、それが斬撃を放つものらしい。剣を振る速度がかなり求められる魔法だ。だが、エアスはそれを完璧に使いこなしていた。数回斬撃を放ち、それに続く形で距離を詰め、エアス自身が斬りかかる。こう攻められては、エトワールではかなわないだろう。中距離での戦いをメインとする彼の魔法で防ぐには限界がある。


「強いっすね、エアスさん」


 二人は模擬戦を終わらせると、マスティカ、ロイーヤと一緒に、「改めて宜しくお願いします」と言って来たので「こちらこそ宜しく」と返した。

 そんなにかしこまらなくても良いのに...

 するとロイーヤが


「次の任務頑張って下さい。あまり心配はしてませんけど」


 と言った。

 最後の一言が余計だ。

 皮肉か。彼女達自身、先程の暗殺術を使って

 僕らは出会って一日も経たないうちに、随分と打ち解けていた。

 弟子を取るというのも案外良いかもしれないな。




 翌日、僕は弟子たちに見送られ、任務に向かった。


〜最近、思った事〜



抱き枕って高いね…


特にカバー……

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