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三題噺⑨異世界サバイバル

作者: 嘆木鳩

気が付くと、俺は山の中にいた。

なぜこんなところにいるのか、自分でもわからない。俺は確か、仕事終わりの帰り道で、横断歩道を渡っていたはずだが…。

何か光るものが近づいてきたというのはなんとなく覚えているのだが、そこから先が思い出せない。

これはあれか、いわゆる異世界転生とかいうやつだろうか。

友人に勧められたり、CMで目に入ったりするからジャンル自体は知っているが、正直、そういった作品は読んだことがない。こういった場合、主人公はどうすればいいのだろうか。

とりあえず歩いた方がいいのだろうか。周りは見たことも無い草木ばかりで、一度動いたら絶対に迷子になる自信がある。

そういえば転生ものでは、前世の記憶を頼りに活躍するというのがあると友人から聞いたことがある。山に迷った時の対処法も前世の記憶とやらを頼ってみよう。といっても、山に登る週間なんてない俺が持ってる知識なんて、テレビで見た程度の知識しかないが、とりあえず思い出してみよう。


山で遭難したときの対処①

「地図を利用する。」

一番最初に思いつきオーソドックスな回答だが、今回は無理だ。そんな地図を持っているわけがない。

一応地図アプリとかもあったはずだが、スマホは使えなかった。仮に使えたとしても、知らない山の地図を出すなんて不可能だ。コンパスとかも無いから現在位置を調べることもできない。この案は却下だ。


山で遭難したときの対処②

「来た道を引き返す」

これもオーソドックスな方法だが、当然ながら不可能だ。気が付いたらそこにいたなんて状態で、来た道も何もあるわけがない。当然却下だ。


山で遭難したときの対処③

「沢を下ってはならない」

確かテレビでは、沢は下ってはいけないといっていた。下っていくということは山のふもとに繋がっていると思いがちだが、実際は崖や多岐に突き当たることが多いのだとか。仮に今から動いて沢に出くわしたとしても、下っていくことの無いように注意しなければならない。


山で遭難したときの対処④

「ピークや尾根に上がる」

下るとは逆に、登っていく方がいいともテレビで言っていた気がする。山に登っていけばいくほど視界が開けて現在位置が確認しやすくなるし、よく登山される山なら、ピークや尾根が登山道に繋がってる可能性があるからだ。異世界で登山なんてされるかどうかは謎だが。


とりあえず思いつく限り挙げてみたが、四つ目くらいしか実行できそうなものがない。とりあえず、山を登ってみることにしよう。視界が開けた場所につけば、そこで焚火か何かしてのろしにするのもいいかもしれない。そんなことを思いながら、俺は山を登り始めた。

1時間足らずですでに公開し始めた。当然だ。山は普通、何らかの準備をして上るものだ。仕事帰りのスーツで登るような場所じゃない。水分補給するにもお茶がわずかに水筒に残ってる程度。正直かなり厳しい状況だ。

だが幸いなことに、すぐに視界の言い開けた場所に出ることが出来た。ここで、のろしを出せば、誰かに気付いてもらえるかもしれない。俺は、周りに落ちている枝木をかき集め、これまた幸いにもポケットに入ったままだったライターに火をともす。黙々と煙が立ち上っていく。火が強くなりすぎて山火事になったりしないだろうかと少し不安になりながら火を見つめていると。

後ろからガサゴソッと音が聞こえてきた。

俺は、期待に胸を膨らませた。この煙を見て誰かが来てくれたのか、それとも別の登山者が来てくれたのか。いずれにしても、何か進展はあるはずだ。そう思って、勢いよく振り向いた。

そこには、自分の倍近い、イモムシのような何かがいた。緑色の皮膚をしたといつは、いくつかの父子に分かれており、節が都に無数の足のようなものがうじゃうじゃ動いている。その府市は連動して動いており、うねうねとこちらに近づいてくる。おそらく顔に当たる部分にはトンボの目のように複眼になっており、そのすべてが俺をとらえているようだ。その目の下には縦に裂けた線が入っていて、そこが避けて口になることが容易に想像できた。

これを見てようやく実感した。ここは、異世界なのだ。俺の常識が通用する場所ではなかった。火をつけていれば獣は寄ってこないという認識は甘かった。こんな巨大な虫がいるなんて想像していなかった。知識だけでどうにかなるなんて、傲慢も甚だしかったんだ。

恐怖で動くことが出来ない。蛇に睨まれた蛙というのはこういう気持ちだったのだろうか。そんなことを考えている間にも、怪物は自分に近づいてくる。やがてそいつは俺の目の前でその巨大な口を開けて…。

その時、怪物が突然炎上し始めた。その熱気に固まっていた体が反射的にのけぞり、怪物との距離が離れる。狼煙に使っていた火が燃え移ったのだろうかと思ったが、どうやら違うようだとすぐわかった。

なぜならその直後、剣を持った男が飛び出し、その怪物を切り付けたからだ。

怪物は苦しそうにその身をくゆらせ、剣を持った男の方に突撃する。だが、男に激突する前に、何かにはじかれてしまう。よくみると、俺の半分ほどの身長の男が、たてとぉ使って怪物の突進を跳ね返したようだった。それでもなおおばれ狂う怪物に、剣を持った男が再び切りかかる。ザンッ!という効果音とともに、その怪物の体は真っ二つに切り裂かれた。怪物は力なくその場に倒れ、動かなくなってしまう。

惚けて動けなくなってくる俺に、別の柔和な男が近づいてきた。俺に手をかざすと、ン以下の光に包み込まれる。すると、嘘のように痛みが引いてくるのを感じた。

森の奥から、一人の女の子が出てくる。どうやら、彼女が怪物に火を放ったようだ。

ゲームにあまり詳しくない俺にもわかる。勇者に戦士、僧侶に魔法使い。いわÝる、勇者のパーティが、俺の目の前に現れたのだ。

勇者たちは固まって何か話している。俺のことをチラチラ見ていることから、俺についての処遇を話し合っているのだろうか。だが、言語が違っていて何もわからない。ただ、何やらもめていることはなんとなくわかった。

魔法使いの女の子が勇者に何か言っているが、勇者がそれをいさめている(ように俺には見える)。僧侶と戦士も勇者世音字意見のようで、魔法使いを説得している(ように俺には見える)。やがて魔法使いは仕方ないというそぶりで、俺の方に近づいてきた。

何をされるのかとびくびくしていたが、彼女は俺に向かって、何かを唱えた。

「聞こえるかい?」

次の瞬間、勇者の声が耳に入ってきた。これまで全く理解できなかった言語が、理解できるようになったのだ。何が何だか分からないという風になっていると、勇者が察したように続ける。

「彼女は、君に『異文化の言語がわかる魔法』をかけたんだ。戦闘にはあまり役に立たないけど、こういった時にはとても役に立つ魔法だよ。」

立てるかい?と、勇者は俺に手を差し伸べてくる。とりあえずその手をつかみ立ち上がるが、あまりの状況に脳の処理が追いつかず、お礼を言うことすらできなかった。

「ねぇ。ほんとに助けてよかったの?」

魔法使いの女の子がそう言ってくる。

「こんな魔物ばかりの森に煙をたくなんて、近くの村の人間だったら絶対にやらないでしょ。見たことない服をしているし、魔物の擬態かもしれない。いっそのこと今ここでヤっちゃった方がいいんじゃない?」

俺に聞こえてもかまはないというように、彼女は続ける。

とんでもない、このまま殺されたのではたまったものではない。

その思いから、俺は堰を切ったようにこれまでのいきさつを話し始めた。

そう思い、俺はこれまでのいきさつを勇者に話した。







異世界モノの王道ファンタジーを書こうと思っていたら、なぜかサバイバルモノになってることに気が付きました。

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