任務
どうも初めての人ははじめまして。天使からの人はこんにちは。黒歴史の人はまた会いましたね。
この作品は失踪しない様に努力します。というか、割と自分で書いてみたい作品ですし、、、、
それと、読者の皆様に、作品を読む前に私から前書きで言いたい事が幾らかがあります。
ですが、結構長くなりますので、カッタルイ人や直ぐに見たい人は飛ばすのもいいですが、可能であれば一瞥してから作品を読んで下さい。
この作品、タイトルにαテスト版というだけあり、実は書いてみたい作品の前日譚的な立ち位置にあります。
理由としては書きたい作品が、(作者の)物語の把握とシッカリとした骨組みが必要で、作者はバカなのでイキナリ書くと矛盾と問題点の山となる為、作品を書く前に物語の把握とその骨組みを組み立てる為の物語をここで書く事にしました。
次に、物語のテンポの為、少し展開を早めに流します。
そのせいで、作者の中では理解出来るけど、読者には理解が足りないというポイントがあれば、レビュー欄等で書いて貰って、それを作者がキチンと責任を持って全てお答えします。
物語の今後に関わる様な鋭い質問は少しはぐらかせて貰いますが。
では最後に、この作品を楽しく読んで頂いたら作者として有り難い限りです。
――――「バアアァァアン!!!!」
紅蓮の閃光が視界を焼く。
爆音が体を揺らし、耳が遠のく。
鉄の体は揺らめく炎を躊躇う事なく突き抜け、武器を構え発砲する。
「ズダダダダッ」
連続して撃たれる弾丸、しかし当たらないと信じ、武装を変える。
開けた視界、炎を通り抜けた先に、敵がいた。
魂の籠もらないレンズでこちらを睨む――“機械”がいた。
無骨な迷彩色の装甲を纏う6メートル強の、二脚で地面に立つ人形機械がレンズに自分を捉える。
機械は銃を構えて射撃する。
「ズダダダダッ」
こちらを狙っただろう弾丸は、確かにこちらを向いて正確に撃たれていた。
だが、「ズシャァ!」
弾丸は、急なドリフトによってかわされた。
機械は当然こちらに再度狙いをつけて発射しようとするが――それは、投げられたこちらの銃によって阻止された。
自らの武装を、時間稼ぎに相手に投げ付けた。
無為な行為、数秒稼げるかどうかの。
しかし、その数秒こそが欲しかった。
「――ボウゥンン!」
エンジンが唸り声を上げた。
切り替えた武装が震える。
機械に、全速力をもって突っ込む。
震える刃が、銃を持つ腕を切り落とした。
鋼鉄を、コードを、電子回路を切り裂き、落とす。
敵もまた刃を取り出すが、拳をレンズに振り被った。
――「終わりだ」
そう言って、男はコックピットに刃を突き立てた。
操縦桿越しに、鉄と人を貫く感触を感じて、男は息を吐く。
無味無臭のコックピットが、やたらと自分の口臭を匂わせた。
◆
――――――――装甲騎兵ボトムズ。
そういう作品を、皆は知っているだろうか?
よく知るグレートマジンガー、ダンガイオー等のロボット物とは違う、少しリアル志向なロボット作品だ。
上記の作品と違い、ロボットは頑強で強力ではなく、脆く弱い。そこが良い作品だ。
機体性能は火力は榴弾砲未満、装甲は戦車以下、移動速は民間用車にすら劣る。
おかしいと思うか?
しかし、普通に考えればそうだろう。
人間のあの筋肉で大砲を持てるか?人間のその体で重たい装甲が装備可能か?人間の足で自転車より早く走れるか?
――不可能だ。
パワーではない、構造で負けているのだ。
人間の性能を二倍の向上しようと不可能な問題だ。構造で優れている相手にパワーで上回れるなら、そのパワーで構造に優れるのを造ればいい。
つまり……ロボットが主兵器になるのは不可能だ。
だが、主兵器である必要はない。
20ミリ以上の火器、10ミリ前後の装甲。
然るべき相手に、然るべき所に投入すれば、その瞬間火力は――他の兵器を許さない。
故に、『装甲騎兵』。
◆
西暦2224年。8月10日。
夏も暑い日、男は呼ばれた。
「いやぁ、今日は熱いね。今年は猛暑だよ、猛暑。そうとは思わんかね、『エビ・シュタイン』特務少佐。まったく、環境主義者もこの暑さに頭がヤられてあんな事を言ってるのかね?エアコンがないとやってられんよ、デスクワークも」
目の前にてデスクに座る42という歳不相応に若い男は、皮肉っぽく笑って軍帽を正す。
片やエビ・シュタインと呼ばれた男はシワが深い浅黒い肌に、真っ白な短く刈り上げた髪と、目の前の男と比べてかなり老けている。
輝く特殊な徽章、それを呼ばれた男は困った様に見詰める。
(……困った。予想がつかない)
「無駄話しはそこまでにして、述べて下さい。『アレクサンドル』大佐」
アレクサンドル、そう呼ばれた男は笑いを潜め、重々しげに語りだす。
「合衆国が火星開発を初めて早124年が経った。まぁ、入植してからは40年程……おや、丁度私が生まれた年じゃないか」
小さな星を下地に、矢印の様なマークを付けた徽章。
多少デザインは遷移しているが、見間違う筈ない。元ビジネスマン上がりの大統領が設立した『宇宙軍』。
その徽章が、陸軍である自分に向いている事が、またもフザケた男の口よりも雄弁に語る。
(宇宙軍、火星、宇宙開発……あぁ、そういう事か)
呼ばれただけでは分からなかったが、今ようやく分かった。
「つまり――火星に“何か”があるのですな?」
「その通り。“何か”、だ」
となれば、男に命ぜられる任務は明快、相手がどこの国の何かであれ、命令があれば可能な限り遂行するまでだ。
「アレクサンドル大佐、任務は破壊ですか?それとも、奪取ですか?」
覚悟を決めて一言、しかし――
「いや、どこぞの国の何かじゃあないんだ」
意外な答え。
だが、そうしたのならば、“何か”とは、何だ?
「エビ・シュタイン少佐。今から話す事も、君の任務も、極秘の“国家機密”だ」
「存じております」
「その上で、非常にありえない事を話すとしても?」
「――命令を」
ふん。軽く息を吐き、男は告げた。
「『火星人』が発見された」
(火星……人?)
「いや、火星人ではないな。エイリアンだ」
古過ぎる、ジョークにしたって過去のもの過ぎる話しだ。
「過去に“大型”生物の痕跡があったと発表は何度かあった。だが、依然として生物自体が見付かった事はない。入植してもな」
痕跡は確実にある。だから見付かるまで根気よく待とう。
誰もが半ば忘れ、別の事に手を伸ばす中、それは現れた。
そう――まるで大地から湧いた様に。
「いや、湧いたな、大地から」
何かを待つ様に、何かが来るべくして来た様に。
「エビ・シュタイン特務少佐、君の任務ミッションは、装甲騎兵『PB』部隊を率いてエイリアンの調査だ」
火星でエイリアンの調査。
このご時世で笑えないジョークの様な任務。
だが――「了解。必ずやその任、最上に成し遂げてみせます」
国が、国家があると言えば、あるのだ。
(それが、私の、特務の――)
任務だ。
「いい返事だ。では、また会う時はお目覚めの時で」
アレキサンドルの微笑みと共に、後ろに人の気配を感じる。
ぐるりと太い腕が回り、白い布が口元に覆い被さる。
スッと呼吸一つで目が閉じられる。
「良い結果を期待をしているよ」
その声を最後に、彼の意識は沼の様に沈んだ。
◆
ふわりと意識が覚醒する。
随分と体が軽い、つまり――もう“事後”なのか。
眠ってたベッドから身を乗り出し、周囲を確認する。
ここは寝室の様な部屋で、シュタインはその部屋のベッドで寝かされていた。
テーブルの上に直筆の紙が数枚置かれてた。
その紙の一番上を手に取って読む。
『やぁ、おはよう。いきなり眠らせたが、あんまり怒らないでくれたまえ。君も了承した時から想像はしてた事だろ?』
随分と腹立たしい挨拶で始まった文章だが、まぁ予想はしてた。
情報を持ち逃げされないよう、任務を受ける事に対し了承を得れば眠らせ、連れて来させる筈だ。
(この体の軽さ、もう“宇宙船内”だな)
『我々も時間がないんだ。火星のエイリアン騒ぎ、民間の地球との回線を切って民間からは情報が漏れない様にしているが、向こうでは火星のエイリアン騒ぎは地球に知らされている。そういう事になっている。だから彼等には直ぐに兵士が来ると吹いてるし、国としても問題の早期解決が望まれている』
あぁ、だからこその特務である自分が存在する。命令とあらばどこへでも向かい。
そして――
『改めて、エビ・シュタイン特務少佐。君の任務は、第一に「仮称第061PB小隊」を率いてエイリアンと戦闘し、そのデータの収集。それからエイリアンの死体、または手に入るのならば生体や卵の捕獲。そして、火星の技術で製作したPBと兵器がどこまで通用し、どの戦術を取るのが有効かの報告。以上が君に合衆国が命じた任務だ』
手紙は以上だ。
シュタインは次に手紙と同じく直筆で書かれた資料を手に取る。
内容は小隊のメンバーに始まり、任務に同伴する技術士官が一人。それから宇宙船内の間取りと、火星と宇宙船内での注意事項が幾らかだ。
それら事項に目を通し、シュタインは自室の外へと出る。
(とりあえず少し宇宙船を周るか)
自動ドアを潜り、窓一つない殺風景なロビーへと繋がる廊下を渡る。
宇宙船内は火星を想定した重力に設定されており、少し慣れない。大体地球の三分の一程だ。
水中の中にいる様な不思議な感覚で戸惑っていると、声が聞こえた。
――「ふあぁ。……よく寝たぁ」
小さな女が、女の子と呼べそうな小さな女が、自動ドアから偶然飛び出す。
癖の強い金髪が光って跳ねる。
怪しい輝きを蓄えた紫の瞳が揺れる。
濡れた桜色の唇が大きく開いて、閉じた。
「あっ!」
視線が合う。
カァーと、女の顔が赤く染まる。
それはもう赤く赤く――あぁ、顔を抑えたよ。
女が顔を抑えて数秒、突然バッと抑えてた手を開いて捲し立てる。
「あぁ、いやぁお見苦しい所を見せてしまいました。どうも、『ヴァレンタイン・スミス』技術少尉です。よろしくお願いします!」
軍帽をとっさに取り出し、ビシッと敬礼。ついでにごまかすような笑顔を浮かべる。
先程は横顔でハッキリとは見えなかったが、女は非常に整った顔立ちをしていた。
非常に愛嬌があり、ごまかすような笑顔が、その愛嬌を引き立ててた。
正直美少女と呼べる様な子だ。
「あぁ、よろしくヴァレンタイン・スミス技術少尉。先程のあくびは……見なかった事にするよ」
「ははは、そこは本当によろしくお願いします」
申し訳なさそうに苦笑を浮かべ、そして一瞬で赤面した。
「……やっぱり忘れて下さい!」
見なかった事では足りないのか。忘れてくれと懇願される。
「そっ、それじゃ!」
逃げる様に――というか実際逃げる形でシュタインから離れ、宇宙船の奥へと向かった。
「うわーん!恥ずかしい所見られたよ~!」
恥を上塗りしながら……あぁ、いや、私は聞かなかった。そういう事にしておく。
あれ?でも忘れた事にして欲しいんだっけか?
「……やれやれ」
軍帽を深く被り、ため息をつく。
そのままシュタインは歩を進めて――またヴァレンタインに出会った。
「――――――……」
「――――――……」
私はロビーへと向かった。そして宇宙船は広くない。
起きて間もない人間、やる事もなく、特に目的もないのなら、行く所は同じだ。
「やぁ、ヴァレンタイン少尉。また会ったね」
随分と顔色がコロコロ変わる娘だ。今度は青色に変わったぞ。
「あぁ、そうでした。こんな狭い宇宙船、適当に歩いて行く着く先なんてここ位ですよね~」
「逃げるのなら、反対方向か、自分の部屋に逃げるべきだったな」
「ぬーそっちに逃げればよかったです」
頬を膨らませて不貞腐れる。そんな挙動が一々子供らしい。
そうして暫し無言の時間が流れる。
親と娘程歳が離れた二人、話せる事がなく静かに押し黙る。
別に、何かを話す必要がある訳ではない。しかし、これからの任務を円滑に遂行するならば、メンバーとの信頼、信用が重要となる。
無論自分だって話の引き出しがない訳ではない。年下の兵士とも話せるネタの10や20は常備している。とはいえ、流石にこの年代の娘っ子と話す機会が滅多にないもので、困った事にネタを自分は持ち合わせていない。とりあえず、出身地の話題でも振ってみるか?
「失礼します!」
この場の気不味さを打ち晴らす様な、若い声男の声がロビーに響いた。
「本日を以てエビ・シュタイン特務少佐指揮下『仮称第061PB小隊』に所属となりました!『アルフレッド・J・パットン』伍長です!」
気の良い声に続き、敬礼からの自己紹介。
天然パーマがかかった赤い髪に、垂れ目気味の碧い瞳。
軍服はピチット正し、いかにも真面目そうな若い兵士だ。
「よろしく。私がシュタインだ。アルフレッド伍長」
「やぁ、よろしく。わたしはヴァレンタイン・スミス技術少尉だよ」
じーー。
「どうした?アルフレッド伍長。何を見てる?私のヒゲの位置がおかしかったりするのか?」
「あっ、いえ。俺が言えた事じゃないんですが……なんで子供が居るんですか?」
「よし、表に行こうじゃないか若造」
「待て、外は宇宙だぞ」
しかも表に行く方法も考えているのか?
「わたしは、ヴァレンタイン・スミス“技術少尉”と、言ってるだろう。断じて子供ではないのだ!むしろレディと呼ぶべきだろ」
――そうだな。
「シュタイン特務少佐、もしやお子さんだったりしません?」
「この任務で子連れとは。一体どんな鋼の心臓があれば可能か、この未熟な特務少佐に教えて貰えるか?アルフレッド・J・パットン伍長殿」
「あっ、いや、そういう事ではなくて……」
「まぁ、確かに親と子程離れてはいるが、私にこんなかわいい娘は生まれんよ」
「シュタイン少佐、口が上手ですね。ちょっと、距離取ろうかな」
おや、本当の事を言っただけなのに嫌われてしまった。
「というか、伍長!いくつだ!言ってみたまえ」
「はぁ、24だけど、それが何か?」
ニヤリと、ヴァレンタインは口角を釣り上げて胸に手を当て――全力で多分本人が考えて大人っぽいポーズをとった。
「伍長、わたしは25だ。分かるかね、この意味」
「隊長の娘に勘違いされる程度の年齢って事?」
「シュタイン少佐、窓開けて下さい」
「落ち着け、開けたら船内の酸素が逃げるだろ」
「俺を捨てる事を否定して下さい隊長!」
それはさて置き、そう前置いて自信タップリにヴァレンタインは語り出す。
「わたしはアルフレッド伍長、君よりもお姉ちゃん、という訳だ」
やぁ――「“ガキ”」
(それを口に出す時点で少尉もガキなんだよなぁ……)
憤慨するだろう伍長をどう宥めようかと考えてたが、意外に伍長は口を開かない。
それどころか、少し難しそうな顔をしている。
「どうした伍長?」
「……いえ、なんでもありません」
何かを言い淀んで、閉口する。
――あぁ、そういう事か。
「そうだな、こんな“どうでもいい”話しは一旦終わりにしようか」
本当に不毛な会話を投げ飛ばし、シュタインは告げる。
「伍長、特務でもない君だ。この任務に参加出来た所以、そっちは聞かないどいでやるが、代わりに選抜された方の所以を『アレ』で聞かせてくれるか?」
流石に宇宙船にもあるだろうと、言ってみた割に心配して。
「了解です隊長。“どうでもいい”話しよりも100倍饒舌に語ってやりますよ」
大きい声で返事を一つ、大きく目を開いて答えた。
「おっ、『アレ』ですね?じゃあ、わたしはオペレーターやりましょう」
その為に来ましたからと、ヴァレンタインは笑う。
「えっと、あったあったぞ、『ナイトシミュレーター』。これで一戦やり合おうじゃないか」
――補足
『PBポール・バニヤン』
PBはアメリカ合衆国が開発した人形のロボで、主に特務用、局地用の兵器として開発された。
人形という構造上、能力は専門的に特化した兵器には及ばず、如何せん中途半端感、器用貧乏が特徴の兵器。
だが、その器用貧乏も、活躍が可能な瞬間に投じれば瞬間火力は専門兵器を超えれる。
故に、作中内ではその様を評して装甲騎兵と呼ばれている。
名前は、アメリカに古くから伝わる木こりの巨人から取られた。
『宇宙軍』
宇宙軍、と銘打ってはいるが、実際は殆ど火星開拓プロジェクトの進行機関。
実は今現在アメリカに本当にある軍で、トランプ大統領が設立した。
『直筆の紙』
極秘任務に際し、資料が必要となるが、過剰なスパイによる情報漏洩の防止の為、任務に携わる者が直筆で資料を書く事になっている。
徹底して存在を残さない為に、紙は食べれる紙で、読後は胃の中に放り込んで証拠を隠滅させるまでがセット。