第99話
再テストになんとか合格し、私たちは再び特訓漬けの毎日に戻った。
こうして放課後の全ての時間を費やしても、まだまだ時間が足りずに焦りが生まれる。
沢里の声に合わせて、あと少しのところまできてはいるのに。
ライブでも歌う【linK】の新曲は、SNSで公開したものを少しアレンジした。
前半は沢里のコーラスに私がメロディーをのせる。そして後半は立場を逆にして、私がコーラス、沢里にメロディーを歌ってもらうことにした。
最後のサビは壮大にユニゾンで決めたいのだが、問題は私がまだ最後のサビを歌いきれないことだ。
最悪の場合、最後は沢里だけで歌ってもらうことになるかもしれない。けれどそれではsawaさんに言われた「二人で一曲歌い切る」ことにはならない。もう少しのところで行き詰ってしまった。
酸素が足りずに肩を上下させる私の姿に、沢里が問いかける。
「なあ、なにか不安に思ってることはないか?」
「はあ、はあ、そりゃあ当日のことを考えるとめちゃくちゃ不安だよ」
「そうじゃなくってさ、ライブに出るにあたってもやもやしてること。そういうの解消したらもっと心が軽くなって、歌いやすくなるんじゃないか?」
そう言われて私は納得する。私の息もれはどうやら精神的な部分が大きく影響しているらしい。やるべきことを後回しにして、心が晴れていないことが歌に表れているのではないか。
不安の原因には心当たりがある。
私は大切なことからまた逃げている。
「まずは気になってることを片付けて、もう後は歌うだけって状態まで持っていこうぜ!」
「分かった。ごめん、そしたら今日の特訓はここまでで!」
「おう!」
沢里に頭を下げてから、私は練習室を後にしてすぐに土井ちゃんに電話をする。この時間土井ちゃんはもう家にいるはずだ。数コール後に明るい声が聞こえてきた。




