第96話
「返信くらいしてよ」
怒っているつもりが存外気弱な声になってしまった。私はスマホから口を少し離して小さくため息をつく。ゴホゴホと咳き込む音の後に、しゃがれた声が続く。
「だから悪かったって言ってるだろ」
「体調崩してたならそう言ってくれればよかったのに! 余計な心配したんだからね!」
ようやく柾輝くんと連絡がついたと思ったら、盛大に風邪を引いていたらしい。しかも一度治って無茶をしたらすぐにぶり返したとか。鼻声の「あーうるせー」が聞こえてきて、私は気を揉みながらも柾輝くんの声が聞けたことに安堵していた。
「ファミレスではごめんね。透流さ……新しいお兄さんにはちゃんと柾輝くんのこと説明したから」
「別に気にしてねー」
「ちゃんと謝らせて。私、あの時お母さんのことが頭によぎっちゃって、柾輝くんが兄だって言えなかったから……」
「分かってる。連絡しなかったのはマジでこっちも忙しかったんだよ。ライブもあるわイベントもあるわ」
「そうだったんだ」
ライブ。その単語にそわっとしてしまう。なにを隠そう柾輝くんに電話したのはそのことを話すためだった。
「柾輝くん、あのね。いきなりなんだけど、私ライブに出ることになったの」
「は?」
「【linK】としてステージに立つことにした」
柾輝くんはそれを聞いてしばらく黙った後、小さく「そうか」とだけ呟く。




