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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
十一、【ステイ・ウィズ・ユー】
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第81話

 スタジオのソファに座り、沢里が誰かに電話をする姿を見つめる。


 憎たらしいほどにスタイルがいい。カジュアルな服装なのにやたらと目を惹くのはそのせいだ。背が高いからスポーツも得意そうだが、本人曰く「中の中」なのだそう。


 単なる推測ではあるが、指を痛める危険があるからあまり好まないのかもしれない。私の割れた爪を見た時の反応が過剰だったのも、沢里の中では耐え難い出来事だったからではないだろうか。


 そうだとしたら沢里の世界は音楽を中心に回っている。

 

 親の英才教育と立派な自家スタジオ、柔らかな声に器用な指。


 気付くと私はごくりと喉を鳴らしていた。うかうかしていられない。きっと沢里は私なんてあっという間に越えて行ってしまう。今はまだ世の中が沢里を見つけていないだけなのだ。


『リンカが他の人と楽しく歌っている姿を見たくない』


 そう言った沢里の気持ちが少し分かった気がした。


「親父もうすぐ来るって」


「は、はい」


 沢里の言葉に私はピンと背筋を伸ばす。緊張がぶり返してくるのを感じ、私は縋るように沢里を見る。


「ね、ねえ結局沢里のお父さんって――」


 誰なの? と問おうとしたその時、重い扉が開き一人の人物がスタジオに足を踏み入れた。


 白髪混じりの髪を後ろに撫でつけ、頭にサングラスを引っかけたド派手なアロハシャツ姿の男性が、ビシッと二本指を顔の横に構えて沢里に歩み寄る。


「ういーっす」


「親父! ちゃんとした格好しろって言っただろ!!」


「おいーっす」


「聞けよ!!」


 奇抜なデザインのシャツに映えるダンディで彫りの深い顔立ち。沢里によく似たすらっとしたスタイル。


 私はそんな男性を見て、思わず口元に手をやった。


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