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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
十、【ア・フュー・モア・タイム】
78/134

第78話

「釣り合おうと必死なのは俺の方だよ。知ってるか、最初にピアノ弾けって言われた時、めちゃくちゃ手震えてた。上手くできなくてリンカに失望されたらどうしようって。だからリンカが、自分が釣り合わないから離れようとするのはおかしい。俺のことがもういらなくなったら、リンカがちゃんと言ってくれ。俺が釣り合ってないって言ってくれよ。そうしたらまだ諦めが――」


 そこまで言って沢里は一度息を吸った。


「つかない! 全っ然つかない! 諦められない。もっと頑張るから、コーラス続けさせてくれ! 【linK】の世界に俺も入れてくれよ!」


 沢里の真剣さが痛いほど伝わってくる。【linK】を特別に思ってくれていること、もっと歌いたいと思ってくれていること。その覚悟がスマホ越しにひしひしと感じられた。


 私にその思いに応える覚悟があるか。こんなにも考えてくれている沢里と、体面を気にせずやっていく自信を持てるか。


「沢里はなにも悪くない」


 沢里の気持ちに応えたい。理由はそれだけでいい。例え誰かに文句を言われても、沢里がいてくれるならいい。


「私に覚悟が足りてなかった。私がぱっとしないから人気者の沢里とつるむのはおかしいって、心のどこかでずっと思ってた。釣り合う釣り合わない関係なく、曲のためには沢里の力が必要なのに。アンチと真っ向勝負する勇気が私にはなかった……。沢里がこんなにも望んでくれているのに。私は――」


「私ももう、外野になに言われても沢里のこと諦めない。だからお願い、私のために歌って」


 沢里を泣かせてしまった重罪は、歌で償う。私にはそれしかできないし、なによりきっと沢里がそれを望んでくれると信じている。


「~~~っ最初からそうしてる!」


 焦ったような怒っているような珍しい声で沢里は言った。私はそれもそうだと納得する。沢里は最初からずっと【linK】の熱狂的なファンであり、私の絶対的な味方なのだ。


「うん……そうだね」


「今日だっていろいろ話があったのに。まあ土井には敵わないよな。パンケーキうまかったか?」


「全然。ずっと沢里のこと考えてたから。味なんて覚えてないや」


 そう言うと沢里は黙ってしまった。続く沈黙に充電が切れてしまったかと思いスマホ画面を確認するがまだ余裕がある。もしもしと呼びかけると盛大なため息が聞こえてきた。


 そのまま「話ってなんだったの」と問うと、沢里は思い出したように話し始める。


「そうだ、うちの親父に息もれのこと聞いてみたんだよ。そしたら一度家に連れて来いって。だから週末あいてる?」


「え?」


 ひとつ事が済むとまたひとつ選択肢が現れる。まるで私たち二人、生き急いでいるようではないか。


 沢里は私を救うが、同時に翻弄することも得意なようで少し困る。

 

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