第74話
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ふんわりとした生地に、厚切りのバナナ。生クリームには瑞々しいラズベリーとブルーベリーが半分埋まって、可愛らしさを演出している。
おしゃれな平皿に盛りつけられたパンケーキを前にして、土井ちゃんが化け物でも見るかのような目でこちらを見ていることに気が付いた。
「凛夏それお手拭き!」
「え?」
「なにを食べようとしてるのあんたは」
どうやら私がナイフとフォークで切ろうとしていたのはパンケーキではなくお手拭きだったようだ。
土井ちゃんが慌てて私の手を止めるのを黙って見つめていると、語気荒く捲し立てられる。
「一体私が図書室に行った数分でなにがあったのさ!?」
「ええと、」
「パンケーキはこっち! はい食べて!」
「もぐもぐ」
「食べた? で、なにがあったの!」
「沢里をなかせてしまいました」
「はい!?!?!?」
唖然とする土井ちゃんを見つめながら口に放り込まれた甘いバナナを二、三度咀嚼する。大好きな駅ナカのパンケーキのはずなのに、いつもよりおいしくない気がする。むしろ噛むのが億劫なほどだ。
沢里の涙で頭がいっぱいになってしまっている。
私はなんとかバナナを飲みこみ、土井ちゃんに話せる部分だけを説明することにした。
「美奈に、沢里と釣り合っていないって言われて」
「うん」
「沢里が私のために先輩たちを怒ってくれて」
「うん」
「沢里と釣り合ってないのは本当のことだし、これ以上沢里に迷惑かけたくなくて」
「うんうん」
「もうかばわないでって言って」
「はいはい」
「それができないならもう動――ええと、仲よくできないって言ったの」
「それだ!」
パンケーキを口に運びながら相槌を打っていた土井ちゃんは、私の最後の一言に名探偵ばりに指を差した。




