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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
十、【ア・フュー・モア・タイム】
73/134

第73話

「ちょっと!?」


「ゴミ出し行くんだろ? 持つから案内して。俺まだゴミ出し場の場所知らないんだよな。場所が分からないって言うと、誰かが代わってくれてさ」


「ヒトの話を――」


「聞いてる」


 能天気な話をつづける沢里だったが、不意にその目が真剣なものに変わる。そして集積所までもう少しというところで沢里は足を止めた。


「リンカが絡まれるのは俺のせいなんだからかばって当然だ」


「それを望んでないって言ってるの」


「それはなんでだ?」


「だから、私が沢里に釣り合わないから! 沢里が私をかばうと余計に反感買うし、沢里だって悪く思われるかもしれないじゃん!」


 一から十まで説明しないと分からないなんて鈍い男だ。それでも沢里はわけが分からないという表情で見降ろしてくる。


 そんな顔をしたって私だってこんなことを言いたくて言っているのではない。


 ただもう私の知らないところで私を守ろうとするのを止めたいし、今日の昼のように表立ってもしてほしくないのだ。


「そ、それが分からないならもう動画に出さないから!」


 分かってもらえないのならもはや最終手段である。新曲が上手くいったことは確かに沢里の力を借りたからで、もちろん感謝している。


 これは心にもないただの脅かしだ。文脈から私の嫌がり具合が伝わればいいと思っての言葉でしかない。


 これで少しは私の言うことに耳を傾けてくれるだろうと思っていた。


 その大きく見開かれた両目から、ぼろりと涙が零れ落ちるまでは。


「え!?!?!?」


 今度は私の目玉が飛び出る番だった。驚きすぎて声も出ない。あの沢里が泣いている。本人もなにが起こったか分からないような表情で、自分の目から流れる涙を不思議そうに指で拭っていた。


「さささ、沢里!?!?!?」


「あー……悪ぃ」


 思考回路が壊れてしまったかのようになにも言葉が浮かんでこない。ただ沢里がぐっと上を向くのを見守るしかできなかった。一拍後、微かな声がその場にぽつりと落ちる。


「やっぱり俺じゃあだめなのか」


「あ、い、いや、ちがくて、その……ご、ごめ」


 ぽすりと音を立てて、ゴミ袋が集積所に投げ入れられる。


 とんでもないことをしてしまった。


 沢里が「悪かった」と言って素早く静かにその場を去るのを、罪悪感で震える私の足は追いかけることができなかった。


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