表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
九、【スイート・コラプス】
60/134

第60話


「緊張したー!」


 気の抜けた声とともにくったりと椅子にもたれかかる沢里。それをぼんやりと眺める私。


 自分の声と合わせたらどうなるか。沢里の出来のよさも相まって、早く確認したい気持ちが溢れてくる。


 パソコン上で合わせるよりも実際に今歌えばいい話だ。それは分かっている。作り手である以上、せめてサビのハモリだけでも確認したくなってしまうのは事実だった。


 不思議なことに、沢里は私に一歩踏み出させる力を持っている。


 沢里とならできるかもしれないと思わせてしまう。それが危険な賭けだったとしても。


「…………サビ合わせてみる?」


 なんの隔てもなくぽろりと零れ落ちた言葉に私自身驚いた。


 沢里を見るとキュピーンと音が出そうなほどに大きな目を輝かせている。


「やる! やります!!」


 喰い気味に迫られ引くに引けなくなってしまった。単なるひとり言だと言い訳もできない。私は今まさしく自分の意思で提案したのだ。作り手としての欲を自制できずに。


 ぎゅっと眉間を揉む。柾輝くんにコーラスを頼んでいた時はなんの疑いもなく送られてくる音源を使わせてもらっていた。互いに声をよく知っていたというのもあるが、沢里の声だってもう把握はしているはずだ。


 なぜこんなにも気持ちがはやるのか。自分自身のことが分からなくなってしまう。


 沢里の歌と勢いに引きずられている。そうとしか思えなかった。


 機嫌よくハミングする沢里を盗み見て、覚悟を決める。最悪なにかあっても、ここは自分の部屋だ。


「……じゃあ、やろうか」


 私はゆっくり細く息を吐き、鍵盤に指を乗せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ