第54話
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「ごちそうさまでした!」
「すまないね夕飯前に付き合ってもらっちゃって。おうちの人に怒られないかな」
「うち放任なんで問題ないっす! めしもまだ食えますし」
「沢里、今日はありがとう。本当に」
「気にすんなって。じゃあリンカ、また明日」
人生で一番おいしかった串カツを食べた後、自転車で颯爽と駆けていく沢里を見送り義父と家に帰る。
玄関で母が待ち構えているのが気配で分かり、思わず義父の背中に隠れる。
「ただいま帰ったよ」
「凛夏! ……って、あなたも一緒だったの? おかえりなさい」
「ああ、少し飲んで帰るって連絡した後にたまたま会ってね。一緒に串カツ食べてきたんだ。ね、凛夏ちゃん」
「う、うん……」
戸を開けると思ったとおり仁王立ちの母が鬼の形相で怒鳴りつけてきたが、義父の顔を見て一瞬トーンダウンする。おずおずと顔を出してただいまを言うと、母は私の頭からつま先までじっとりと睨み付けて言った。
「お父さんと一緒だったからいいものを。連絡くらいしなさい! 夕飯作ってあったんだからね」
「ごめんなさい」
「透流はいるかな? 呼んできてもらえるかい」
「え? ええ。部屋にいるけど」
義父の言葉に母は首を傾げている。どうやら私たちになにが起こったか知らないらしい。心もとなくなって玄関に突っ立っていると、義父に背中を押される。
しばらくリビングで待っていると階段を下りる音が響いてきて、気の重さで心臓が潰れそうになった。
義父はソファで野球中継を観ていて、テレビからわっと歓声が上がったと同時にガチャリとリビングの扉が開く。
「父さん、呼んだ?」
そこには眼鏡を外した透流さんの姿があった。義父に話しかけた後、ダイニング席につく私に気付いて目を丸くする。
「凛夏ちゃんが話したいことがあるそうだよ」
「ああ……そう」
「あの、透流さん。さっきは殴ってごめんなさい!」
間延びさせても仕方がない。私は思い切って頭を下げた。沢里に涙を止めてもらい、義父に謝るお膳立てをしてもらったのだ。逃げるわけにはいかない。




