第52話
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義父に連れられ着いたのはこぢんまりとした串カツ屋だった。義父は母の凝った手料理とワインを好んでいる印象が強かったため、慣れたように串カツをオーダーするその様子に戸惑いを隠せない。
「お母さんのおしゃれな料理も好きだけど、たまに食べたくなるんだよな」
そう言って生ビールに喉を鳴らす義父に、ぽかんと口を開ける私。
「リンカ、これうまいぞ!」
「うぐっ」
適応力の高い沢里はすでに串をおいしそうに頬張っており、私の開いている口につくね串を突っ込んでくる。
なぜ義父と沢里と一緒に串料理を食しているのか。言われたとおりにつくねを咀嚼すると、じわっと染み出す肉汁が口いっぱいに広がり、思わず目を細めた。
「おいしい」
空腹を自覚した途端、きゅうとお腹が鳴った。「腹減ってたのか」なんてからかう沢里の腕を抓り、大皿に盛られた串にかぶりつく。
そんな私たちをいつものにこにこ顔で見ていた義父は、ふと沢里のギターに目をやった。
「バンドやってるの?」
「いえ、ギターは練習してるだけっす。弾くのが好きなんで。」
「そうなんだねえ。いや実は、僕好きなバンドがいてね、仕事帰りにライブに行ったりするんだ」
「え!?」
義父の意外な趣味に思わず串を取り落す。家で音楽を聴いている姿は見たことがない。なのに仕事帰りにライブに行くなんてかなり熱狂的ではないか。そんな素振りは全く見られなかったのに。そう思ってからふと気付く。
――いや、私が知ろうとしなかったのだ。義父の趣味のことなど、気にも留めていなかった。
衝撃を受ける私をよそに義父は続ける。
「幼馴染の息子がやってるバンドでね……もうすぐメジャーデビューかなんて言われてる。向こうは僕と父親の関係なんて知らないだろうけど、結構古参ファンだから顔は覚えていてくれてるみたいで」
「へえ、嬉しいですよねそういうの」
沢里の相槌に義父はにこにこ頷く。




