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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
六、【Just The Two of Us】
38/134

第38話


 ▽


 ピアノは鍵盤を押せば音が鳴る素晴らしい楽器だ。多少指が痛くても、音が出せなくなるわけではない。


 今日も練習室で一人、作曲を進める。作っては直しを繰り返しているため当初配信した時とはかなり雰囲気が変わってしまったが、それも【linK】動画あるあるだ。


 ポップス寄りの曲調を一新し、ジャジーに仕上げる。そのためにはジャズのリズムと低音がほしいところだ。


 昼間あんなことがあったばかりだというのに、私はどうしようもなく根っからの音楽好きらしい。曲作りに集中している間は余計なことを考えなくて済むというのもあるが。


 じんじんと痛む指を休ませながら、五線譜に新しい音を書き込んでいく。


 なにかに夢中になると周りが見えなくなるのは自分でも悪い癖だと思う。


 けれど誰だって、ふと顔を上げたら『部屋の窓から人の目が覗き込んでいた』なんて状況になったら、飛び跳ねて当然ではないだろうか。


 五線譜から顔を上げたらホラー映画さながらに目と目が合った。練習室のドアの小窓から。こちらを覗き込む目と。


「ぎゃーーー!!」


 思わず狭い部屋の中でびょんと飛びのき、ピアノの影に隠れた。音楽の世界から一気に目が覚め、心臓が飛び出しそうになるのを抑える。


「驚かせてごめん。声かけるタイミングに迷って……」


 無遠慮に部屋に入ってきたのは目が合った相手――沢里だ。一体いつから見ていたのか、問おうとしても驚きすぎて言葉が出ない。


「や、やめてよ……ああびっくりした」


「ごめんな」


 もしも犬の耳があったらぺたりと垂れている。そんな幻覚が見えるほどに沢里はしょげていた。


「いやそこまでは責めていない」と言いかけたが、ふと向けられる視線を辿り思い直す。


 沢里が私の手を見ながら謝っていたからだ。


 

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