第34話
そして、悪いことは続くものだ。
「ねえあなたが五十嵐さんだよね?」
「美奈に名前聞いたんだ。沢里くんといつも一緒にいる子誰って聞いたら教えてくれたよ」
「ちょっとうちらと話そうよ」
静かな中庭で土井ちゃんとお弁当を広げていると、三人分の声が頭上から降ってくる。見るとどこかで会ったことがある気がする三人の先輩がじっと私を見ていた。
ぼんやりとする頭ではどこで会ったか思い出せない。同じクラスの美奈の知り合いだろうか。そんなことを考えているうちに土井ちゃんがキリッとした表情で答える。
「あの、なんの用でしょう? 今日この子体調悪いんで無理です」
「少しでいいから」
「具合悪いなら支えてあげる」
「ていうかあんたには関係ないから」
たたみかけるように言う先輩たちに腕を掴まれた私はそのまま中庭の木陰に引きずり込まれてしまった。
「でさ、沢里くんと付き合ってるの?」
クヌギの木に押し付けられるように三人に迫られる。そこで私はようやく思い出した。目の前の彼女たちは、沢里が逃げるために私をダシに使った時の先輩だ。
「美奈に聞いたんだけど、なんか沢里くんに気に入られてるくせに邪険に扱ってるって話じゃん。調子のってるよね」
「別にそんなんじゃ……」
美奈。同じクラスの派手な顔が脳裏に浮かぶ。沢里にお近づきになりたいと言っていたが、要は私を快く思っていなかったらしい。
「そうじゃないならさ、今日うちら放課後遊びに行くんだけど、沢里くん誘ってきてよ」
「あの、本当に仲良くないし気に入られてもいないんで」
「嘘つくなよ!」
名前も知らない先輩の一人に強く肩を押される。その勢いで背後の木に背中を打ち付け、私はたまらずむせてしゃがみこんだ。
「うっ」
「あんだけ見せつけといてなにが仲よくないって? 生意気ー」
トドメと言わんばかりに別の先輩の手がしゃがんだ背を突き飛ばし、私の体はあっけなく地面に転がった。
今日の私は絶不調だ。泣きすぎて頭が痛いし、寝不足で頭もぼんやりする。それに加えて謎の言いがかりをつけられ地面に転がされては、もう立ち上がる気力は残っていなかった。




