第31話
「だめだ」
「え!?」
「言っただろ、お前の背中を押すって。優しく押すとでも思ったか? お前が前に進むために、俺はもうお前の動画には協力しない」
「なななな」
「俺じゃない、別の奴に頼め」
話の流れからして柾輝くんの言う別の奴は一人しかいない。気紛れに声を合わせた、私に一歩を踏み出させた彼のこと。
背中を押すどころか突き放されるとは思わずぽかんと口を開けたまま放心する。
「どうしてそんなこと言うの?」
これまでの【linK】の音楽は柾輝くんなしでは成り立たなかった。たくさん相談して、アドバイスをもらって、私は勝手に二人で作っている気持ちになっていた。なのに、柾輝くんはもう【linK】のことはどうでもよくなってしまったのか。じんわりと視界がにじむ。
「凛夏、俺はな」
「――凛夏ちゃん? こんな時間になにしてるんだ」
神妙な柾輝くんの声に被さるように、背後から聞き慣れた声がした。
驚いて振り向き見上げると、なぜかそこには怪訝な顔をした透流さんが立っているではないか。
私の体はピシリと硬直する。心の中では幽霊を見たかのように「で、出たーーー!!」と泣き叫んでいるが、当の透流さんの目線は私ではなく柾輝くんに注がれていた。
「……失礼ですがあなたは?」
「そういうあんたはなんだよ」
場の空気が一気に重くなる。私を挟んでにらみ合う二人に混乱が極まる。




