第21話
「ステータスに興味があるって、沢里もそうでしょう。あの先輩たちとなにが違うの?」
「え?」
その時初めて沢里の笑顔以外の表情を見た。虚を突かれたような、不思議な表情で私を見返してくる。
かみ合わない会話ばかりしていた中で、私の言葉がようやく届いた。そんな気がする。
「私のこと【linK】としてしか見てないあなたとなにが違うの? じゃあ聞くけど五十嵐凛夏に興味がある? ないよね。それと同じじゃない」
「それは……」
沢里は難しい顔で押し黙ってしまう。その目は真っ直ぐに私を見ているのに、どこか遠くを見ているようにも感じさせた。
彼は【linK】にしか興味がない。それは大いに結構だ。私も本当の私は【linK】だと思っている。
ただ、だからこそ。昨日会ったばかりの存在にさえ、【linK】ではない私をないがしろにされている事実がぽっかりと浮かびあがってしまう。
自分のしていることを棚に上げて、自分だけ困っているような顔をされるともやもやしてしまうのだ。
「――まあ私は別にそれでもいいけど。ごめん、それじゃあ」
よく考えたら親が有名だと人には分からない苦労もあるだろう。謝ったのは少し言い過ぎたと思ったからだ。ダシに使われたことを考えれば許してほしいところではある。
日が暮れかけていることに気付き、私はそそくさと踵を返した。透流さんを待たせてしまったらまた母がぎゃーぎゃーとうるさい。
歯切れが悪いさようならになってしまうが、どうせまた明日顔を合わせる。
そう考えていた矢先、肩に重みがかかる。それが沢里の手だと認識した瞬間にぐるんと勢いよく体を振り向かせられた。ポニーテールが視界の端で弧を描いたと思ったら、目に前には沢里の顔。
「ひえっ!」
「リンカ――五十嵐凛夏。確かに俺はお前のこと全然知らない。お前の中の【linK】しか見てなかった。そうだよな……それじゃあ違うよな。でも俺はお前を諦めない。【linK】かどうかは関係なく、まずは……友達からお願いします!」
「と、ともだち?」
傍から見れば勘違いされそうな、とんでもない台詞を真正面から受け止める。無茶苦茶だ。そして強引だ。
けれどもしかしたら私は、無意識のうちにこの言葉を待っていたのかもしれない。
柾輝くんは【linK】も凛夏もどっちも私だと言った。その意味はまだ分からないままだけれど。
遠くで波音が鳴る。気付いた時にはもう、私は黙って頷いていた。




