第15話
先ほど聞いたばかりのその台詞に、私はげっそりとしながら首を振る。
「えー嘘。だっていきなり仲良さそうじゃん」
「でも凛夏は全然知らないんだって」
「ふーん?」
土井ちゃんがフォローしてくれるが、美奈は腑に落ちないらしい。たまご焼きを飲みこむのに必死な私をじっと見つめてくる。
「なんだ、友達なら取り持ってもらおうと思ったのに」
「え……もう好きになったの? 早くない?」
「実はね、別高の子に聞いたんだけど」
美奈はその派手な顔を私たちに寄せて、声を潜めて言った。
「沢里くん、有名人の息子なんだって。イケメンだし、お近づきになりたいじゃん?」
それは果たして「好きになったの?」という問いかけに対する答えになるのだろうか。
複雑な顔をしているであろう私のポニーテールをつついて美奈は去って行った。
「なにしに来たんだろ」
「さあ、でも美奈の言うことが本当だったら……」
ミニトマトを頬張る私を、土井ちゃんがじっと見つめる。首を傾げると土井ちゃんは呆れたようにため息を吐いた。
「凛夏、ちょっと大変かもね」
「なにが?」
「美奈みたいなミーハーに、目を付けられるかもってこと。なんか派手な先輩たちとつるんでるらしいし。気を付けてよね」
「ミーハー?」
それを言うなら当の沢里だって【linK】に対してかなりミーハーではないだろうか。
ファンだのなんだの言って、今思えば思い切り手も握られていた。
有名人だか芸能人だかの息子だと言うがソースもはっきりとしていない情報を鵜呑みにする気にもなれない。雰囲気だけで判断されて噂が一人歩きしている可能性だってある。
「あんまり気にしないでおくよ」
「そだね。あ、そういえば【linK】の新曲まだかなー」
そう、そんなことよりも新曲を完成させなければ。土井ちゃんをはじめ多くの人が【linK】の新曲を楽しみにしてくれている。
「多分、まだかかるんじゃないかな」
本人が余計なことを考えているから。




