第13話
「リンカ!」
「ぎゃーーー!?」
見間違いであってほしい。聞き違いであってほしい。しかし私の望みはどたばたと笑顔で駆け寄ってくる大男に打ち砕かれる。
朝の校門なんて一番生徒が集まる場所だ。そこにいるだけで目を惹く沢里が、こともあろうに一直線に私の元へ向かってくる。にこにこにこにこ手を振って。
周りの生徒たちの視線が全身に突き刺さるのを感じ、心臓が激しく鳴りだした。
今すぐに逃げ出そうと構えるが、目の前に陣取る沢里のディフェンス力には敵いそうもない。私は諦めてがっくりと肩を落とす。
「おはようリンカ」
「ねえふざけてるの? 名前呼ばないでよ!」
「【linK】とは言ってない!」
「結局同じだからそれ!」
どうやら私を待ち構えていたらしい。校門から教室まで付いてくる沢里はなぜだか嬉しそうにしている。
「本名も凛夏っていうんだろ。じゃあリンカって呼んでも問題ないよな?」
「問題は……」
そしてどこかから私の名前をインプットしたらしく、リンカリンカと何度も呼んでくる。恐らく私を【linK】と認識したから、その方が呼びやすいのだろう。
そして私も苗字で呼ばれるのは、実は苦手だ。
「問題は?」
「……ない、けど」
友人は皆私のことを名前で呼ぶ。新しい苗字に未だに慣れない私にとってはありがたいことだった。黙ったまま俯く私の顔を沢里はとびきりの笑顔で覗き込んでくる。
「俺、昨日の話諦めてないから。改めてよろしくな、リンカ」
なんてなれなれしい男なんだ。そして距離が近い。
私は沢里からぱっと離れ、そのまま教室に駆け込んだ。
ああ、今日は穏やかに過ごしたかったのに。




