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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
十六、【アフター・ザ・ステージ】
121/134

第121話

「実は、美奈が【linK】の曲聴いてるのを偶然知ってね。これはもうライブに連れて行かなきゃと思ってチケット渡したのよ。もちろん正体は知らせないままでね。いやー二人の正体を知った時の美奈の顔見せてあげたかったー! あっはっは実に愉快!!」


「ど、土井ちゃんたら……」


「発想がもはや仕掛け人」


 高笑いする土井ちゃんを横目に、押し黙る美奈に向き直る。


 美奈には散々悩まされたとはいえ、今の状況は少しかわいそうだ。お気に入りのアーティストの正体が嫌っているクラスメイトだったなんて。なんと言えばいいか悩んでいると、美奈がぽつりとなにか呟いた。


「……、」


「え?」


「ライブ、よかった。色々ごめん!!」


 聞き返すと美奈は突然叫び、持っていた紙袋を押し付けてきた。


 私は目を白黒させながら、不器用に謝られたのだと理解する。


「【linK】に渡したくて作ってきたんだって」


「え……」


 袋の中には可愛らしい一体のクマのぬいぐるみが寝かされていた。そしてそのクマは【linK】のロゴが刺繍されたTシャツを着ている。


 私と沢里は目玉が転がり落ちる寸前まで目を見開いた。


「えっ。こ、これ、美奈が作ったの? クマも? 手作り??」


 美奈は顔を真っ赤にしてしゃがみこんでしまった。


 その様子にようやく本当なのだと理解して、私もしゃがんで美奈の目線に合わせる。


「私がもらっていいの? 沢里じゃなくて?」


「うん……」


「ありがとう」


 ファンからの心のこもった贈り物を、私はぎゅっと胸に抱く。それを見て美奈はぱっと駆け出してしまった。


 慌ててその背中に「また学校で!」と叫ぶ。


 美奈はくるりとこちらを振り向いて


「あなたたち、お似合いだと思う!!」


 そう言い残して行ってしまった。土井ちゃんも「またね!」と言って美奈を追いかける。


 嵐のような二人組になんだかおかしくなって沢里とくすくす笑った。


 次に美奈と学校で会ったらどんな顔をされるだろう。


 少なくとも私はきっと、笑っておはようを言えると思う。


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