第12話
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カーテンの隙間から差し込む朝日で目を覚ました。数拍遅れて鳴り響いたアラームを止めて、気分の重さにため息を吐く。
昨日は散々な一日だった。
あの後沢里から逃げるように自分の教室に戻るとホームルームはとっくに終わっていて。教室に残っていたクラスメイトたちからの、「転校生と知り合いなの?」「どういう関係?」なんて質問を全力で否定しながら帰路に着いた。
土井ちゃんから心配するメッセージが届いたが、当然全てを説明することはできなかった。
それに加えて昨晩は新曲の作成を進めるはずだったのに胸がざわざわしてそれどころではなくなってしまったのが痛い。
おそるおそる柾輝くんに「転校生に【linK】だってばれた」とメッセージを送ったが、返信はない。そういえばライブが立て込んでいると言っていた。唯一の理解者の手も借りられない状況だ。
一晩たってもまだ心に衝撃が残っている。
『あんたは【linK】だ、間違いない!』
『一緒に歌いたい』
脳内で繰り返される声を消したくて頭をぶんぶん振っていると、トントンと控えめなノックが部屋に響いた。
「凛夏ちゃん、おはよう。起きてる?」
「はい、おはようございます。透流さん」
ドア越しの透流さんに慌ててあいさつをする。そのままドアノブに手をかけるが、自分のパジャマ姿を思い出し思いとどまった。
「今日学校が終わったら連絡くれる? 勉強しよう」
「あ、はい……分かりました」
「うん、それじゃあ」
「今はそれどころじゃないんだよ!! 空気読め空気!!」と叫びまわりたい気持ちをぐっと抑え、身支度に取りかかった。
のたのたと姿見の前でパジャマから制服に着替える。地元では地味可愛いと言われている紺のセーラー服に、白いスカーフ。人によっては校則違反ぎりぎりまで丈をアレンジしたりもしているが、私は膝丈が一番しっくりくる。
【linK】の時は髪をおろしているが、学校生活を送るならポニーテールが楽だ。
そんなどこにでもいる女子高校生の姿にこだわる理由は、単に目立ちたくないからの一言に尽きる。
誰も【linK】と凛夏を紐づけられないように。
しかし昨日はあの転校生のせいでかなり注目を浴びてしまった。今日は波もたたない沼で静かに息を潜めるように過ごそう。多少周りに言われるかもしれないけれど、黙ってやり過ごそう。
そんな決意とともに登校した私を待っていたのは、校門前で仁王立ちする今一番見たくない顔だった。




