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君の隣で歌いたい  作者: 三ツ沢ひらく
十六、【アフター・ザ・ステージ】
118/134

118話

 出番が終わってからの私たちは純粋にライブを楽しんでいた。たくさんのグループの様々な音楽に触れ、創作意欲がかき立てられる。いますぐに作曲したい気分ともっと生歌を聴いていたい気持ちでうずうずしながら、あっという間に過ぎていくライブの時間を心から堪能した。


 全ステージが終わり、出演者が舞台裏に集結する。これからMVPの発表があり、呼ばれたらステージに上がることになっているからだ。


「サマソニ最後の時間がやってきました! いよいよMVPを発表します。今回のMVPは――――【モルフォ】!!」


 ライブの後半に圧巻のステージを魅せた【モルフォ】がMVPをとった。そう、柾輝くんたちの激しいサウンドと会場の盛り上がりは今日一番だったのだ。私は自分のことのように嬉しくなってしまって、ステージに上がる柾輝くんに絶え間ない拍手を送る。


「はー! すごいなMasakiさんたち……悔しいけどかっけーわ」


「うんうん、かっこいいね!」


 拍手をし過ぎて手が痛くなった頃に沢里がしみじみと言った。私も激しく同意する。


 沢里はそんな私の肩にちょんちょんと触れ、こっそりと囁いた。


「なー……リンカって、Masakiさんのことどう思ってるんだ」


 なぜか遠慮がちに尋ねてくるが、そんなの答えは決まっている。


「柾輝くんはずっとずっと、私の自慢のお兄ちゃんだよ」


「え?」


「え? なに? そう言うこと聞いたんじゃないの?」


「お、お兄ちゃん!?!?!?」


 私の答えに沢里は突然驚いた声を出し飛び上がった。舞台裏だというのに大きな声を出すから他の出演者の注目を浴びてしまって、私は焦って沢里の口を両手で塞いだ。


「ちょ、うるさいって!」


「だってリンカの兄貴はたしかトオルって人じゃ」


「あれ、言わなかったっけ? 透流さんは今のおとうさんの連れ子で、柾輝くんは血が繋がってる実の兄だよ」


 沢里には家のことや過去のことをなんでも話していたつもりだったが、その分なにを話していないか自分でも分からなくなっている。その驚きようを見る限り、私は柾輝くんとの血縁関係を話していなかったようだ。


 沢里は数拍黙り込んだ後、へなへなと膝を折ってしまった。


「な、な、なんだよもー!! あーー! 俺すげー恥ずかしいじゃん!」


 赤い顔を腕で覆う沢里。


 やはり【linK】のコーラスの件で柾輝くんと張り合っていたのだろう。


 本番前の唐突な支える宣言もきっとそのせいだ。


 実の兄だと知って少しは分かってくれただろうか、張り合う必要がないことに。


「大丈夫、私の相棒は沢里だけだよ」


「~~っ! まあ今はそれでいいけど!」


 私の本心から出た言葉はとりあえず受け取ってもらえたようなので、ステージ上で続く受賞の様子を引き続き眺める。


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